第3話 不良は五七五で悶々とする②

 週末――いつになく早い時間に起床したオレは、洗面所でいつもの倍時間をかけて身支度を整えると、リビングキッチンに舞い戻った。


 寝室にしている和室からは、休みの日はオレ以上にねぼすけな姉の可愛らしいいびきが聞こえてくる。今日は温め直せるものにしようと決めて、冷蔵庫にあるものであり合せの朝食を作る。


 ご飯。卵焼き。温野菜のサラダ。大根の味噌汁。うん、まあこんなもんだろ。


 黙々と胃袋を満たしてから、天気予報を確かめるためにテレビをつけてみる。音量を絞りつつチャンネルを次々変えるが、生憎とタどこもやっていない。


 とりあえず歯でも磨いてくるかなと思ったところで「今日のあなたの運勢は? 星座占い・グッドラックの時間でーす」と底抜けに明るい声がして、占いコーナーが始まった。


 普段運勢とかまるで興味ないんだけど、こういうのってつい気になって見ちまうんだよな。


「――乙女座のあなたは外出に注意。思いもがけない再会に浮かれていると、棒状のものに躓いて思わぬ怪我をすることがあります。続いて天秤座ですが――」


 見るんじゃなかった。


 オレはうんざりした気分でテレビのスイッチを消した。


 歯磨きを終えて、まだ眠りこけている姉のために朝食についての簡単な書き置きを残して部屋を出る。


 幸い外はみごとなほとの快晴だった。ボードゲーム会自体は屋内でやるのだが、ゲームを持ち込むことを考えれば雨が降らない方が良い。何より自転車を使えるのが助かる。


 オレは共有の駐輪場から自分の自転車を出すと、街へと向かった。


 気持ちの良い風が頬を撫でていく。おもわず思わず自転車のペダルを漕ぐ足に力が込もる。平日は徒歩なので(学校から1.5キロメートル以内に住んでいる者は自転車通学禁止なのだ)ついついテンションが上がってしまうのは仕方ないことだろう。


 大通りの交差点で赤信号に捕まったので、一旦自転車を降りる。と、斜向かいにあるパチンコ店の電飾がいつもと違うことに気づいた。数日前から点滅していた『パ』の部分だけ、電飾が取り外されているのだ。つまり、チン──。


 くっだらねぇ。


 オレは信号が青に変わるとすぐに地面から足を離して、自転車を発進させた。

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