第2話 紅芋の手作り羊羹
あるご家族と親交がある。
重い病気で入退院を繰り返すお婆ちゃん。今回はもう退院することはないと思っていた。
でも……奇跡なのか、神様の計らいなのか、
退院して、孫のひな祭りを祝う料理を作る程回復した。
「これ、お婆ちゃんが、是非食べてほしいって、渡してくれって、だからどうぞ」
娘さんが私に渡した袋の中には、プラスチックの容器が二つ。
帰宅してから蓋を開けると、中には稲荷ずしと、から揚げ。
稲荷ずしは油揚げが表のものと裏のものがある。裏になっている中身は混ぜご飯だった。
もう一つの容器には紅芋で作られた手作りの羊羹。
なんでも今は紅芋が手に入りにくいとか。
芋の甘さを活かした薄い甘さ。上品なその味から、たった一人の孫娘を思うやさしい気持ちを感じる。
『何で大切な料理を、お婆ちゃんはわざわざ私にくれたのかな?』
今は住まいが違うから、娘さんご夫婦とお孫さんに会う事はあるが、お婆ちゃんの顔はしばらく見ていなかった。
……あれから1ヵ月。お婆ちゃんは安らかに亡くなった。
そんなに会話をしたことがあるわけではない。あいさつ程度。
紅芋の手作り羊羹を食べてやっと気づいた。
お婆ちゃんから愛情を貰っていたことに。
色々な方から少しずつ愛情を貰って生きている事に、改めて気づかされた。
生きているのではなく、生かされている……。
だから……
ありがとう。そんな気持ちになった。
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