魔法少女☆対峙、悪の結社ビジターナイツ
居合わせた日本国民が大熱狂する中、夜空に巨大なスクリーンが映し出された。
それがたった今相手をした敵のものであることは容易に理解できる。
周囲が一斉に音を潜めた。
夜空に空中で静止するプリティエリアンは、傍らにラビを従えたまま、誰よりも間近でスクリーンを見上げ、様子を窺っていた。
「ふっふっふっ……」
地の底から響くような重い笑い声と共に、スクリーンが暗転した。
薄暗い闇に浮かび上がるのは、玉座に腰かけるマント姿のシルエット。
表情は隠れて見えないが、その尊大な雰囲気から、敵の元締めらしきことは推察できる。
「お初にお目にかかる、地球の諸君。私は、悪の結社ビジターナイツが総帥、ダーククラウザー。そしてここに控えるは、我が結社が四天王、インペリアルナイツの面々である」
総帥とやらの脇に、計4つのシルエットが追加される。いずれも人型をしていた。
(自分で悪って言っちゃった! しかもなんかネーミングがベタベタだぞ? なに、今どき四天王って!? ぷー)
などと、内情を知っているアキラは、神妙な表情を崩さず、胸中で思いっ切りツッコんでいた。
これぞ営業スキルのひとつ、顔と心は分離させろの技である。
得意先に、共感の欠片もない変な趣味を誇らしげにひけらかされても、どう見ても可愛くない孫や子供写真を自慢されても、決して顔に出さずに相手に合わせる、大事なスキルなのだ!
「我が結社は、先ほど地球各国の主要軍事施設の100に総攻撃をかけ、その99を沈黙させたことをここに報告しよう」
地上でスクリーンを見上げる人々がいっせいにどよめく。
これには、さすがのアキラも声を失った。
この時点で、すでに決着はついたとも言える。
「ただし、99の数が示す通り、唯一我らを退けた者たち――いや、たった一人の者がいる。それが貴様だ、魔法少女プリティエリアンとやら!」
スクリーンの中の黒マントが持ち上げられ、名指しの上、指差される。
(くっそ。いくら営業スキル持ちでも、笑いを我慢するのが辛い! すごい真面目に魔法少女とか言っちゃってるよ!)
思わずアキラがぷるぷると震えてしまったのを、恐れかあるいは武者震いとでも勘違いしたのか、地上のギャラリーからいっせいに歓声や励ましの声が上がる。
「我ら悪の結社ビジターナイツが地球征服の野望を阻めるのは、貴様だけのようだ。魔法少女プリティエリアン! ならば、我らはまずは貴様を倒し、その後にゆっくりと地球を制圧するとしよう。貴様さえいなければ、地球の低文明の戦力では、相手にもならんのは証明済だ。これは余興だよ、魔法少女。貴様が健在である内は、各国に手を出さないことを、このダーククラウザーの総帥の名に誓おう。だが! 貴様が倒れたときが、地球の最期と知れ!」
すごい饒舌な説明口調だったが、当のアキラ以外、気づいた者はいなかったようだ。
「やってみるがいいさ、悪の結社ビジターナイツ! プリティエリアンは正義の魔法少女! 決して悪に挫けたりはしないから!」
(ええー!)
なぜかラビが前に出て、売られた喧嘩を大々的に買っていた。
「何者だ、貴様は?」
(しかも双方向通信だったー!)
「僕は正義の使者、魔法少女プリティエリアンのサポートキャラのラビさ!」
報道ヘリからテレビ中継もされている中、堂々とラビが自分を売り込む。
通常なら
ラビの雄弁はなおも続く。
「ただし、せいぜい気をつけることだね、ビジターナイツ! 魔法少女プリティエリアンのマジカルシールドはどんな遠距離攻撃も無効化し、マジカルアタックはどんな大軍勢でも一撃さ! 見てたんだろう、ビジターナイツ? 正義に勝てる悪はないことを思い知るべきだね!」
(
アキラは手元のマジカルステッキを眺めて思う。
理解を超えた科学は魔法と変わらないという。というか、惑星を削りそうな物騒な魔法なんてあってたまるか。
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