june 8

「先輩。このTシャツ、洗ってきます」


着ていたディープパープルのTシャツを折り畳みながら、酒井は言った。


「いいよ。あまり着てなかったし」

「そうはいきません。汗かいてたし、転んだ時に濡れちゃったし… 今度来る時に持ってきます」

「そう?」

「じゃあ、今日はもう帰ります」


Tシャツをすばやく鞄に仕舞うと、ろくにぼくの顔も見ずに、酒井は頭を下げて部屋を出ていった。



 そんなハプニングのあった夜。

ぼくはなかなか寝つけなかった。


あられもない酒井の太ももやお尻、そして、一瞬垣間見えた、ふっくらと盛り上がって微妙なひだの交錯した、パンツの股間。

それらが目の奥に焼きつき、頭がクラクラするくらいに強烈でかぐわしい彼女の汗の匂いといっしょくたになって、ぼくの下半身をたかめる。

さっきの光景を思い浮かべながら、右手は自然と自分のあそこをまさぐり、いつの間にかパンツをずらしていた。

固くなったモノを握りしめ、酒井のパンツの中身を想像しながらこすっていく。

下半身が痺れる様に熱くなり、手の上下運動が妄想のヒートアップとともに速くなっていく。


………床で滑った酒井はぼくと目を合わせ、座り込んだまま意味深に微笑み返す。

お尻を浮かしてゆっくりと目の前でパンツを太ももまでずり下げると、大きく脚を広げる。脚の間の奥まった場所には、黒々としたヘア。その奥に隠された、秘密の割れ目。

そこを二本の指で広げた彼女は、微かに唇を緩め、うっとりと誘う様に、ぼくを見つめる。

あそこからしたたるしずくは、ねっとりと糸を引き、強烈なフェロモンの香りを漂わせている。たまらずぼくは彼女に覆いかぶさり、熱く昂った自分のものを、割れ目の奥へと埋めていく。

ふたりの汗が交わり、ぼくの動きに合わせて酒井は腰を振り、可愛いよがり声をあげる。

Tシャツをめくると、ボールの様な大きなおっぱいがはじけ出し、腰の動きに合わせてぶつかりあって、たわわに揺れている。

『はぁはぁ』と呼吸が速くなっていき、次第に快感が高まって、背中がのけぞる………


「うっ」


大きな快感のピークが訪れ、真っ白な液をほとばしらせて、ぼくの妄想は終わった。




 シンと静まり返った殺風景な病室。

荒い吐息の余韻と、ドクドク鳴る心臓の音しか聞こえない。

終わった後に必ず訪れる、後悔と嫌悪感。


どうして酒井なんかで妄想してしまったんだろう。

昼間のハプニングが刺激的だったから?

今どき、エッチな画像やムービーは、インターネットにいくらでも転がっていて、パンちらくらいじゃ興奮しない筈なのに…

リアルの女の子のからだは、やっぱり強烈だった。

だいいち、画像じゃ匂いまではわからない。

むせ返る様な酒井の匂いは、脳みその奥深くを鷲掴みにする様に、ぼくの淫らな欲望を刺激的してきたんだ。


ぼくには萩野あさみさんという、初恋の人がいる。

彼女にかける愛がぼくのすべてなのだ。

とは言っても、男の本能を完全に抑える事はできない。

テニスをしていた頃は、からだを動かす事で少しは発散できてたけど、こうしてなにもする事もなく一日中ベッドに転がっていると、ムラムラはどんどん溜まっていくばかりで、溢れ出す先を求めてからだの中で荒れ狂ってくる。


それは生理的欲求で、仕方ない事。

酒井は今回たまたま、そんなぼくの性欲のはけ口になってしまったってだけだ。

だけどもう、こんな妄想はやめとこう。

オナニーなんて一瞬の快楽で、なにも生み出さない。


そんな決心も、マグマが溜まる様に次のムラムラが臨界点に達すれば、あえなく破れ去るのは、いつもの事だった。


つづく

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