第7話

序章 第6幕

「海外に居た時に色々な事に遭遇したって言ってたけど、私初めて聞いた」

佐藤はご機嫌斜めな顔で四条に問いかける。

「まぁ、聞かれなかったし、それに話すような事じゃ無いかなぁと」

曖昧な笑顔を浮かべながら四条は佐藤に答えるが、佐藤は納得しないようで

「聞かれなくても、大事な事なんだし話してくれても良いはず。次からちゃんと話して」

「分かったよ。今度からはちゃんと話すよ」

佐藤は一回頷くと

「次は、この世界見て回りたいって、本気?」

今度は心配そうな顔で四条に問う。

「本気だよ。神崎達がある程度力をつけたらだけど」

「そうじゃなくて」

佐藤は四条に詰めると、四条は優しく隣に抱き寄せた

「大丈夫だよ。俺強いから」

そう言って佐藤の頭を撫でる。

佐藤は心地好さそうにしながらも、言葉を返す。

「なら私が付いて行っても大丈夫?」

「元から誘おうかと思ってたよ」

「ならもういいや」

そう言うと佐藤は四条の肩に頭を置いて、完全に身体を預ける形をとる。

「なら今度は俺の質問いいかな?」

「ん」

佐藤は全力で力を抜いており、完全にリラックスしていた。四条はそんな佐藤を肩越しに感じながらも言葉を続ける。

「俺達が付き合ってるってもう隠さなくていいの?呼び方いつものになってるしさ」

佐藤はおもむろに、自身の頭を四条の膝につける。佐藤は眠そうに言葉を返す。

「もうあの2人しか居ないから、隠す必要が、、、ない」

言葉を返した後、我慢が出来なくなったのか、気持ち良さそうに寝始める。

「そっか。分かったよ、お休み」

四条は佐藤の寝顔を見ながら、優しく頭を撫でる。



ユーフラテス国王城噴水広場、そこに神崎とスフィアは居た。

「適当に歩くもんじゃねぇな」

「あら帰り道忘れてしまったの?」

神崎とスフィアは近くにあったベンチへと腰掛ける。噴水広場の周りには木が複数生えており、噴水からの水と相まって、安らぎを与える空間になっている。しかしながら、神崎とスフィア以外この場所には居ない。

「あぁ完全に忘れた。スフィアは覚えてるか?」

「当たり前ですわ」

神崎は上を見上げるとそこには、圧倒的なまでに澄み渡っていた。偶然にも雲一つない。

「なら良いか。それにしても空綺麗だなぁ。

四条が世界見て回りたいってのもなんとなく分かるなぁ」

「ですわねぇ」

神崎とスフィアは2人揃って空を見上げる。

「はぁぁ、やだぁ。勇者とか嫌だぁ」

神崎は思いっきり溜息をつく。

スフィアは神崎の横顔を見つめる。

「やはり重いと感じますの?」

「当たり前だろ。ぶっちゃけ色々と言ったのは良いけど、やっぱり勇者は四条の方が似合うんだよな」

「そうですわねぇ。四条君の方がお似合いだと思いますわ」

神崎はスフィアの方へと顔を向けた。

神崎とスフィアはお互いを見つめ合う形になる。

「ですが、私はどっちらが勇者になっていようが、あまり関係はありませんでしたわ」

「関係ないって」

「関係ありませんわ。どちらにしても、私は神崎についていきますもの」

スフィアは神崎を真っ直ぐに見つめて宣言する。神崎は少し顔を赤くして、スフィアから目を離すようにまた、空を見上げる。

「そうかよ……分かったからこっち見んな」

スフィアは神崎を見て微笑むばかりで、見るのをやめない。神崎は立ち上がった。

「帰る。帰って寝る!……んで、明日色々と頑張ってみるから、もうこっち見んなって大丈夫だから!」

そう言うと神崎は歩き出す。スフィアは神崎の隣に寄り添うように歩き出す。

「帰り道覚えていないのでしょう?」

「あ、任せた」

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