第5話

序章 第4幕

「では皆様、この世界を救ってくださいますか?」

ユリエは不安と期待の眼差しを向けて、神崎達に聞く。

「お、俺に聞かれてもな」

四条の袖が引っ張られ、四条は引っ張られた方を見ると佐藤が不安そうに四条を見ていた。そんな佐藤を見ると四条は正面に回り、佐藤の頭を安心させる様に優しく撫でる。

佐藤は恥ずかしいのか、嬉しいのか、赤く染まった頬を緩めながらも、四条から距離を置こうとはしない。

四条は佐藤の頭から手を離して、ユリエの方へと体の向きを変える。

「取り敢えず、ユリエ王女様そのお話は考えさせてください。俺達は召喚されたばかりで、この世界の事はまるで知りません。なので考える時間を頂けたらと」

四条はそう言い、ユリエに向かって頭を下げる。

ユリエはそんな四条を見て、慌てる様に言葉を紡ぐ。

「頭を下げないで下さいませ!確かに四条様の言う通りでございます!そ、それではお部屋にご案内します。と言ってと本来なら勇者様、お一人での召喚を予想していたので、部屋は狭いのですが、、、今日だけですので、我慢下さいませ」

そう言ってユリエは後ろに控えていた騎士達に命じ、四条達四人を部屋へと案内させた。

部屋への道のりは、四人を驚かせるには十分なものだった。絢爛豪華かな装飾が施された廊下、そのどれもが素人目に見ても高級な物だと分かる。神崎は周りのものに触れない様に歩き、スフィアは四条と一緒に色々と見に行き、佐藤は大人しく後ろを付いて行った。

部屋に案内され、中に入るとそこには4つのベットが急いで用意されたのか部屋を若干圧迫しながら置いてあった。

「では勇者様方、私たちはこれにて」

そう一言告げ騎士達は、部屋の扉を閉め去っていく。

「はぁぁ緊張したぁぁ」

神崎はそう言うと左側手前のベットに倒れ込むに飛び込んだ。

「うわっ何これすげぇ気持ちいい」

「神崎隣座りますわね」

スフィアは神崎の横に腰掛け、四条は右側手前のベットに腰を落ち着け、佐藤は右側奥のベットに腰をかけた。

「いやいやスフィアさんや、何で俺のベットに腰掛けてるんですか?出てけと?」

「後で私の好きにして良いと、言ってましたわよね?」

「ソウデスネ」

「えへへ」

神崎はスフィアの笑顔を見て、抵抗する事を諦めたのか、自身の身体を起こしベットに腰掛ける形になっても何も言わなかった。

「さて、これからどうするんだ?つうか四条お前なんかすげぇ落ち着いてるよな!?まぁそのおかげで俺らも落ち着けたんだけどさ」

神崎は四条に対して、気になっていた事を聞いた。四条は少し考える様にした後に答え始める。

「んーーまぁこの際だからはっきり言うけど、俺転校してくる前は海外に居たって事は覚えてる?」

「覚えてる」

答えたのは佐藤だけだが、他2人も頷く事で覚えていると四条に伝える。

「まぁその海外に居た時に色々な事に巻き込まれてね。例えば、魔術を使う人達に追いかけ回されたり、伝承上の生物とされている生き物にあったりとか」

神崎、スフィア、佐藤は声を上げて驚く。

「待て待て、凄い当たり前の様に言ってるけど魔術って」

「海外には私も居ましたが、そんな事に巻き込まれた事ありませんわよ?」

「伝承上の生き物?ペガサスとか?」

四条は三人を落ち着かせてから、再び話しを始める。

「その話はまた今度話すとして、まぁ向こうで色々と経験してたから皆んなほど驚かなかったのはそう言う事。まぁ流石に異世界に転移っていうのは初めての経験だけどね」

神崎達に三人はその話を聞き終わると、特に疑いもなく四条の話を飲み込んだ。

「まぁ驚きはしたけど、お前が嘘言う様な性格じゃ無い事は短い付き合いだけど、知ってるし」

「そうですわね、それよりも四条君後で色々とお話し聞かせてくださいね」

「分かったよ、まぁそんなに面白い話でもないけどね」

四条はスフィアにそう答えると、スフィアは嬉しそうに笑った。

四条は神崎へと言葉を向ける。

「さてと、話を戻そう。これからどうしていくのかだね」

四条に言葉を向けられた神崎はやや嫌そうに言葉を返す。

「どうするって言ったて、どうすんだよ。

てか勇者って俺が勇者ってどう考えてもおかしいってやっぱ!」

神崎は自分が勇者と言う事に疑問を抱いているのか四条に詰め寄る。

「だって俺別に頭とか良くねぇし運動出来るってもお前よりは出来ねぇ。なのに俺って」

四条は神崎に元の位置に戻る様に促す。

神崎は渋々それに従う様にベットの上に腰掛けた。

「俺は神崎が勇者ってのはある意味当たり前だと思ってるよ。俺は勇者って柄じゃないしね」

「柄じゃないってお前良く言うぜ。勉強できて教えるの上手くて運動も出来る。性格も、、、まぁ多少難が無くは無いけど、表向きは良い奴だし。そんな奴の何処が柄じゃ無いって?」

四条は軽く笑いながら神崎に言う。

「その性格に難がある所だと思うけどな。良く分かってるね」

スフィアは神崎の背中を軽く叩いた。

神崎はスフィアの方を驚きながら見るが、そこには笑顔のスフィアがいるだけだった。

「まぁ何となく言いたい事は分かるけど、、、アレだろリーダーとして話進めろって事だろ」

「その通りだわ。少なくとも私達の中には、神崎が勇者である事を不思議がる人は居ないわ。自身を持って私達を纏めなさいな」

神崎はスフィア、佐藤、四条の順に顔を見ると、一度考えるように顔を伏せた。

そして決意が固まったのか、勢いよく顔を上げた。

「良し!分かったもう迷わねぇ。でもアレな俺はやっぱり四条の方が勇者向いてると信じてるからな!」

神崎はもう一度三人の顔を順に見て、言葉を紡ぐ。

「んじゃこれからの事について話し合うとするか!」

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