第12話南国リゾート殺神事件
ユリカ:黒峰組の裁判が終わって間も無く寄せられた殺神事件の一報。摩耶さんが羅刹様の謁見の準備を進めている間に地元警察の捜査経過内容の確認と被疑者の面会をするため朝珠検事は1人シーラント諸島連合国に向かうのでした。
魔界時間13:00 シーラント諸島連合国 南東部ロイヤルズ島
ユリカ:ロイヤルズ島、そこは超高級リゾートアイランドで天界の神様達が『魔界の楽園』というくらい綺麗な所でね、多くの天界セレブが別荘を構えているんだよ〜。
『ロイヤルズ島警察署』
シーサイド警部:これはこれは、遠路遥々ご苦労様であります朝珠検事!
結衣:早速だけど、事件の詳しい説明をお願い出来るかしら?
シーサイド警部:はっ!事件は今から1週間前に発生しました。被害者は天雷電力グループ本社の元営業部長ジャック・クライン氏。事件の第1発見者は別荘の管理人で天使族のキリア・ニコライ氏です。
結衣:被疑者も天雷電力グループ本社の社員とあるけど。
シーサイド警部:はい、被疑者の名は天雷電力グループ本社勤務の営業2課課長ドナルド・グローヴ。種族は被害者同様雷神族です。
結衣:という事は元上司と元部下かしら?
シーサイド警部:はい、直属の上司と部下の関係だったそうです。
結衣:何故クライン氏は会社を辞めたの?定年?
シーサイド:その通りです。定年後の余生をこのロイヤルズ島でと移住してきたそうで。グローヴの別荘とは隣同士だったそうです。
結衣:何故クライン氏を殺したの?動機は?
シーサイド警部:それが、取り調べで何度も問い詰めても黙秘を続けていてなかなか喋ってくれないのですよ。
結衣:分かったわ。グローヴさんには後で私が事情を聞くとして、先ずは現場を見せてくれるかしら?
シーサイド警部:はっ!ではご案内します!
20分後 殺害現場 クライン家別荘 応接室
結衣:ここに倒れていたわけね?
シーサイド警部:はい、司法解剖の結果死因は鈍器による撲殺。頭蓋骨が陥没している事からそう見ております。
結衣:グローヴさんが犯人という決め手はその凶器である鈍器が見つかったからなのね。
シーサイド警部:はい。
結衣:司法解剖の結果見せてもらえるかしら?
USBメモリーを渡すシーサイド警部
シーサイド警部:これが司法解剖結果をまとめたものになります。
司法解剖結果に目を通してある違和感を感じる結衣
結衣:ん?
シーサイド警部:どうされました?
結衣:クライン氏は本当にこれで殺されたのかしら?
シーサイド警部:と、言いますと?
結衣:この鈍器の素材なんだけど。
シーサイド警部:鈍器の素材・・・ですか?
結衣:神様ってさ、鈍器で撲殺するならこの素材はダークマターでしょ?
シーサイド警部:そうですね、それ以外のものだと神殺しなど出来ませんからね。
結衣:でも凶器に使われたこの像は『純金製』って書いてあるわ。私が言ってる意味・・・分かるわよね?
シーサイド警部:・・・あ!この凶器では殺害出来ない!
結衣:頭蓋骨陥没こそするけど殺害するには至らず、2日で再生するから命に別状はない筈よ。それで頭蓋骨が陥没したままって事は・・・
シーサイド警部:これは死後殴られた痕って事になりますな!
結衣:そう、つまり死因は別にあるって事よ。被疑者のメモリースフィアは押収してあるかしら?
シーサイド警部:はっ!
結衣:内容は確認した?
シーサイド警部:はい、ですが・・・
結衣:ですが?
シーサイド警部:私が口で説明するより実際見ていただいた方が良いでしょう・・・おい!
警官:はっ!
シーサイド警部:被疑者のメモリースフィアを朝珠検事にお見せしろ。
警部:はっ!朝珠検事、これが被疑者のメモリースフィアであります!
メモリースフィアの内容を確認する結衣
結衣:ん?えらく真っ暗ね。クライン氏らしき
シーサイド警部:はっ。
結衣:もう一度現場を洗い直してちょうだい。現場100回、必ず何か出てくる筈よ。私は被疑者のグローヴさんに話を聞いてみるわ。
シーサイド警部:承知しました!
45分後 留置所
結衣:初めまして、貴方の裁判を担当する地獄界検事局の朝珠結衣です。貴方が事件の被疑者ドナルド・グローヴさんですね?
ドナルド:・・・・はい。
結衣:ここに来る前に貴方のご家族の方や職場の部下の方に聞きましたが、貴方が大恩あるクライン氏を殺害するなど有り得ないと口々に言っています。何故『やってもいない罪』を被っているのですか?誰かを庇っているのですか?
ドナルド:⁉︎
結衣:(やってもいない罪と誰かを庇っているというワードに反応したわね。でもこのままじゃ黙秘される。でもここからは警部さん達と違うところよ♪)貴方のメモリースフィアとクライン氏の司法解剖結果を見させてもらいましたが、貴方が
ドナルド:ど、どういう事ですか?
結衣:理由は2点。1つは貴方がクライン氏を撲殺する際、クライン氏は一切抵抗しておらず、周りは真っ暗でクライン氏の顔を判別出来る状態ではなかった。そしてもう1つは凶器に使われた鈍器、つまりあの像の素材は純金製である事。神様の身体に私達より詳しい貴方ならここまで言えば分かりますよね?これら2点の理由から貴方がクライン氏を殺害する事は『絶対に不可能』なのです。
ドナルド:・・・・・・実は・・・実はあの時私の別荘に通行人と名乗る者から『お隣に泥棒がいる』と言ってきたのです。そこで私の別荘にあった像を持って駆けつけた時は真っ暗で、泥棒らしき者を殴って倒れた次の瞬間辺りが明るくなり・・・
結衣:そこに倒れていたのは泥棒ではなくクライン氏だったと。
ドナルド:私は暗がりで見えなかっただけなんです!クラインさんを殺すつもりは微塵もなかったんです!
結衣:そこにたまたま来た管理人さんに通報され逮捕されたと。
ドナルド:・・・はい。
結衣:安心して下さい。あの2点に気付いた段階で、私の中から貴方を殺神犯ではないと確信に変わりました。実はあの頭蓋骨の陥没は『殺害された後のもの』なのですよ。
ドナルド:え⁉︎
結衣:貴方が殴る以前にクライン氏は既に亡くなっていたんです。つまり貴方は遺体を殴ったにすぎないんです。
ドナルド:じゃあ一体誰が?
結衣:そのために今シーサイド警部に現場の再検証をしてもらっています。ですからもう少し辛抱して下さい。
ドナルド:はい!
魔界時間19:00 ロイヤルズ島内 『BARクラウン』
マト:今回の裁判の目的は被疑者であるドナルド・グローヴ氏の冤罪を防ぐのと真犯人を探すのが最大の焦点ですね?
結衣:ええ、私も地元警察と連携して捜査を続けるから裁判までにマト達も真犯人を探してちょうだい。
マト:分かりました。
セイ:りょ〜か〜い♪
次回へ続く・・・
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