第7話 伝説のマヤ人

「これは笑ってしまっていけないのでおじゃる。クックック。正解がわかる人間なんぞ、今の世にいるわけがないのでおじゃる……」


 正解がわかるわけがないだと!? 俺を舐めてるのかっ! こいつはイギリスのウェールズ地方産のタルタルソース以外の何だって言うんだよっ!!


 俺はつい怒鳴り声をあげたくなったが、外に声が漏れては、誰かに通報される可能性がある。俺は休業日のマックス・ド・バーガーに忍び込んでいるんだ。


 俺は怒りをグッと腹に押し込める。くそっ……。怒りで右腕がブルブルと震えてやがる。こんな屈辱、味わったことがない……。


「では、正解を教えるのでおじゃる。これはマヤ産なのでおじゃる」


「はぁあああ!? マヤってどこのマヤだよ。もしかして、伝説のムー大陸に住んでいたっていう古代マヤ人たちが作ったって言うんじゃねえだろうな!?」


「そうでおじゃる。そのマヤ人が丹精込めて作ったタルタルソースなのでおじゃる。ぬしたちは、ムー大陸もマヤ人も居ないと思っているかも知れぬが、マヤ人は現代の世の中に確かに存在しているのでおじゃる」


 こいつ、何を言ってやがるんだ……? 俺を騙そうとしている? しかし、俺を騙して、こいつが得をすることなんてあるのか?


 わからない……。だが、こいつが嘘を言っているような気もしない……。俺の直観で申し訳ないが、俺は何故か、こいつの言葉を信じたいと思ってしまうのである。


 その理由は、さきほどから味わっているタルタルソースが原因だ。今更ながらに味を思い出せば、違う気がするのである、ウェールズ産とは。


 時間が経てば経つほど、タルタルソースの中に含まれたほろ苦さが俺の舌に広がっている。そして、そのほろ苦さがもっとタルタルソースを供給してくれ! と俺の身体が求めているのである。


「ぐあっ! タルタルソースが食べたい! タルタルソースが恋しくてたまらない!!」


 禁断症状が出てきやがった! 俺こと胡麻衛門は1日に300グラムのタルタルソースを体内に摂取しないと、ウグイスパンマンよろしく、タルタルソースが足りなくて、力がでない……状態になってしまうのだ。


 くっ……。身体から力が抜けていく……。括約筋が緩んでいく……。あっ、漏れそう。だめえええ……。


「フォッフォッフォ。どうやら、マヤ産のタルタルソース無しでは生きていけない身体に代わってしまったようなのでおじゃる。さて、ここからが本当の商談の始まりなのでおじゃる」

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いいえ。タルタルソースは主食です。 ももち ちくわ @momochi-chikuwa

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