第6話 こりゃ、味の革命やでぇ!

 ほわあああ!? 海老フライエビ・フリャーの衣に歯が突き刺さったと同時に、衣の亀裂からあっつあつのタルタルソースが飛び出てきたんやでーーー!


 ほわほわっ! あっつあっつ! うぎいいい!


 口の中が大やけどやでーーー!?


 とまあ、余りにもの衝撃で思わず関西弁になってしまう俺こと胡麻衛門である。


 ふぅ……。ちょっと大やけどは言い過ぎたな。


 グラタンで例えると、思いのほか、グラタンがあっつあつで、思わず、ほわあああ!? となってしまうあの感覚だ。


 しかしながら、濃厚な味のタルタルソースがしかも少し熱めで海老フライエビ・フリャーの衣の内側に仕込まれていたのには脅かされた。


 産まれて初めてカニクリームコロッケを食べた時のことを思い出してしてもらえば、この驚きもわかってもらえるだろう。俺は海老フライエビ・フリャー型のタルタルフライを一滴もこぼさないように、ハフハフさせながら完食するのであった。


「ふぅ……。驚かせやがって。あまりの美味さに思わず、踊り食いしちまっただろうが!」


「フォッフォッフォ。喜んでもらえたなら、これさいわいなのでおじゃる。さて、おもてなしはどんどん続くのでおじゃる。何せ、数年振りの客人なのでおじゃるからな」


 そういえば、こいつ、さっきそんなことを言っていたよな。しっかし、こんな壁も床も天井も真っ白で殺風景な部屋にずっといたのか? こいつは。


 確か、『タルタロス・ルーム』とかなんとか言ってたっけか。だいたい、なんだ、そのネーミング。まるで、この部屋の中では外と隔絶されていて、さらには外の時間が停止しているってオチじゃないだろうな?


「フォッフォッフォ。勘だけは冴えているのでおじゃる」


「うるせえ……。俺は勘だけじゃなく、舌も肥えてるんだよ。古今東西のタルタルソースの生産地を当てれるほどだぜ?」


 自慢にもならない自慢を俺は対抗心からか、つい、してしまうのである。恥ずかしい。26歳になっておきながら、なんで俺はムキになってんだ?


「ほぅ。では、今食したばかりのタルタルソースの生産地がわかるのでおじゃるか?」


「ああ、当たり前だ。これはイギリス産だな。このどっかりと舌に主張してくる感じなのはウェールズ地方の特徴だ」


 ふっ……。こんなの謎かけにもなりゃしねえ。俺のタルタルソース愛を舐めているのか?


 しかし、俺が自信満々でそう答えたとほぼ同時に、眼の前の車いすの男は、クックック、アーハッハッハ! と高笑いをしだしたのだ。


「てめえ、何がおかしいんだ! まさか、俺の回答が間違っているとでもいいたいのかよっ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る