第3話 車いすの男
白い空間の奥から不敵な笑みを浮かべた男が俺に近づいてくる……。
あいつが乗っているのは電動車いすだ。いや違う。自動車会社:トヨンダが開発したばかりの量子と電子のハイブリッド型じゃねえかっ!
確かあれ1台で億ションが買えるとまで言われているやつだろ!?
「フォッフォッフォ。そんなにこの車いすがものめずらしいのでおじゃるか? これはちょっとした伝手を頼って手に入れたのでおじゃる。そんなことよりもでおじゃる……」
男がそう言うと、右のひじ掛け部分にあるパネルを右手で器用にピコピコと操作を始める。こいつ、いったい何をしてやがる!?
「おい、不審な動きをするんじゃねえ!」
「フォッフォッフォ。こんな昼下がりに堂々とマックス・ド・バーガーに忍びこんでおきながら、何をビビっておるのじゃ。しかし、麻呂を不審がるのは致し方ないことでおじゃるな」
俺の眼の前の男はそう言いながらも、ひじ掛けのパネル操作を止めない。くっ。もしかすると、あの謎のパネルで警察を呼びだそうとしているのかもしれないぞ……。
もし、ここで通報されてしまえば、俺は建造物侵入罪でもれなく会社はクビになり、家族は路頭に迷ってしまうことになる……。
ここはこの男をコロコロしてしまったほうが良いのではないか?
いや待て。日本の警察は軽犯罪においての検挙率はアホのように低いが、殺人となれば話は別だ。軽犯罪の逮捕者は3割に満たないと言うのに、殺人は9割以上の検挙率というある意味狂っている国だ……。
くっ。手詰まり感が満載だな……。
「フォッフォッフォ。そんなに心配するなと言うているのでおじゃる。麻呂はマックスド・ド・バーガーとは無縁とまではいかないが、ここ、タルタロス・ルームの管理人なのでおじゃる。客人が来たからもてなそうとしているだけでおじゃる」
男はそう言いながら、俺の警戒心を解こうとしているのであった。いや、ちょっと待て。
「おい、さっきから俺の思考を勝手に読んでないか!?」
「フォッフォッフォ。今頃、気づいたでおじゃるか。ここ、タルタロス・ルームでは管理人である麻呂には客人の心の声が駄々洩れ状態なのでおじゃる」
まじかよ……。じゃあ、俺が麻呂マロと変な一人称を使うこの男をどうやってコロコロしようかと言うのも全部、バレバレだってことなのかっ!?
そのときであった。眼の前の男がフォッフォッフォではなく、クックックと笑い声を変えたのであった。
ちっ。心を読まれるってのは、非常に厄介だな……。
「さてと……。客人をからかうのは麻呂の悪い癖なのでおじゃる。まずは自己紹介と行かせてもらうのでおじゃる。麻呂の名は『阿倍野清明』でおじゃる」
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