一年中
これは、
「今年も暑くなるよね」
「そうですね、天気予報も、去年とそう変わらないみたいですし」
「そっかぁ~。それじゃ……家に居よう!」
「君はいっつも家に居ますけどね」
ハイテンションな彼女と、
(まぁそんな訳ないですけど)
即否定。彼女に関しては、あんまり深く考えないのが
突然の出来事にも、もう慣れてきた。
昔は、急にお泊りを開かれたり、気付いたら彼女の家に僕が
そのたびに愛が深まった気はしないかもしれないけど、おかげで最近は平穏な毎日だと思う。
「む、私を見て温かい目をするなーっ! ……恥ずかしいもん」
「すみません、でも可愛いのが悪いと思う」
「うぅ……!」
返す言葉が無いみたいで、彼女は僕の胸に頭を押し付けてくる。マーキングするように、主張するようにぐりぐりと押し込んでくる。
さらさらの髪と、僕の両手でぴったり収まる頭が僕を刺激する。何て愛らしい行動なんだ。これ以上僕をポンコツにしてどうする……。永久無料の
っと、そんな事を考えるくらいには僕も間抜けなのかもしれない。
「春は恋の季節! 私たちも……っ……え、えっと……いちゃいちゃ、しよう……ね?」
「……」
「あ! 笑った! 酷いよ、私の勇気を鼻で笑うなんてー!」
「違いますよ。ただ、別に春じゃなくても、僕は一年中、君とイチャイチャしたいですよ」
「ッ……!」
再び押し黙る彼女、可愛い。
「さて、それじゃあイチャつきますか?」
「ぅえ……?」
「え……えっと…ぉ……?」
だんだんと赤くなっていく顔を見つめながら、ついに彼女の座るソファの前に立った。そのまま彼女の顔の位置までしゃがんで、その体に腕を伸ばす。
「(ぎゅぅ~)」
「ぁぅ~……」
少しの
――今だ!
「きゃっ!?」
抱きしめた彼女を横に倒すように、僕もソファへ横になる。狭いソファの外側を僕、内側を彼女が互いを抱き合うように寝転がる。
少しでも力を抜けば僕は落ちる。
――だから。
「(もっと強く、抱きしめてください)」
「~~ッ!!」
僕の背中に掛かる力が強くなった。彼女の頭の上に僕の頭が乗るような感じ。
柔らかくて壊れてしまいそうな彼女の肌を
少しだけ暑い湿度を感じながら、離れることは出来ない。
高まる
でも
「大好きですよ」
「ぅぅっ! ……わ、私も……」
くぐもって、
「……だ…大好き…………うぅ!」
やがて恥ずかしくなったのか、彼女はさらに僕の胸に顔を押し当てて隠れようとする。でもそれが、予想だにしない程に愛らしくて、可愛過ぎて、やっぱり僕の腕にも力が
真冬の寒さを
―ああ、洗濯物を干さないとなぁ。
とか。
―買い物に行かないとなぁ。
とか。
―掃除しないとなぁ。
なんて。
頭の中を幾つもの”日常”が通り過ぎるけれど、僕はそれを一つたりとも実行することは出来ない。
”日常”とは得てして慣れ切ったことの裏返しだ。それと同時に、やるべきことの代名詞でもある。
けれどそれは、非日常を前にして無力となる。
なんて。
堅苦しい言葉を使わなくても僕は分かっている。
今はただ、彼女を離したくないのだ。愛おしくて可愛くて、何よりも大好きな彼女の温もりが、幸福を与えてくれる。
幸せな時間は、それからしばらく続いた。
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