第3話 不思議系女の子市ヶ谷 蘭
現在俺らは川崎の父が運転する車で雪ノ丘高校に向かっている。
高梨さんが助手席に座り、俺と川崎が後部座席に座るという配置になっている。
俺は高梨さんに気になったことを2つ質問してみた。
「ところで高梨さんは、なぜ雪ノ丘高校に?」
高梨さんは首だけ後ろに向けて不思議そうな顔をする。
「へぇ? さっきも言ったけど……」
さっきは高梨さんを思い出すことだけで精一杯で話全然聞いてなかったんだよ。
もう1度お願いします。
「今雪ノ丘高校でちょっと話題になってる最強の剣士について取材しに行くためだよ」
「最強の剣士? ……それって真壁のことだよな? 話題になってるのか!?」
どうやら高梨さんが言うには真壁は最強の剣士という名で話題になっているらしい。
最強の剣士。 何それカッコいい!!
いや、そんなことよりも話題になっていることの方がポイントだ。俺が調べた限りでは全く情報は得られなかったぞ。
「うん。真壁 恭矢くんのことだけど、秀くん達知らなかったの?」
「おう。俺と
すると高梨さんはポケットからスマホを取り出し何やら操作し始めた。後ろから見えた緑色の画面から、無料通話アプリのLIMEを起動していることが分かる。
高梨さんは「これ」っと言って俺らにスマホの画面を見せてきた。
「私が作った市内全8校の生徒会や新聞部の人達が情報交換をするグループなんだけど、その中で雪ノ丘高校の新聞部の子から教えてもらったんだよ」
私が作った市内全8校の人達が情報交換をするグループ!??
……え? 何? どういうこと!?
確か俺らが住む市には8つの高校があるらしいが、その8つの高校の生徒が繋がっているグループなんてものがあるのか!?
しかも!! そのグループ高梨さんが作ったって今言ったよな!?
「高梨さん!? そのグループ何なの?」
「うん? 驚いた? 私新聞部ってことで校外からもネタを見つけられるように、他校の人とも繋がってるんだ! うちの部が毎月発行してる新聞見てると分かると思うけど、市内の他校の話題も豊富でしょ?」
うちの新聞部が発行している新聞は他校のネタも豊富らしいが、俺は1度も見たことが無いので分からない。
「コイツ人脈広すぎだから、あり得ない話じゃねぇーな。さすが人脈オバケ!」
川崎は俺と違って余り驚いた様子を一切見せないではない。
高梨さんにとってはこれくらいのことは普通だということかなのか?
川崎が言うようにまさに人脈オバケだな。
「話を戻すけど、この子の情報による雪ノ丘高校ではそこそこ話題になってるらしいよ。 でも一過性の話題で、既に下火になりかけてるようね」
「ふーん。 まっ! 行けば分かるだろ!」
「相変わらず秀くんってのんきだよねー」
「そうか? 分かんないことをいちいち考えてても無駄だろ!」
先ほどから2人の距離を見ていると、どうもただの友達のようには見えない。
俺は、気になっていたもう1つのことを聞いてみた。
「ところでさ、その……2人はどういう関係なの?」
「へぇ? 秀くんから聞いてない……?」
「え!? 特に聞いてないです」
すると川崎は申し訳なさそうに軽く手を合わる。
「あーすまん! コイツとは家族ぐるみの幼馴染なんだ」
なるほど。 家族ぐるみの幼馴染か。
さっき高梨さんが川崎の父とも仲が良さそうに話していた理由が分かった。
俺はてっきり家族公認の……。
「秀くんもしかして私が今日来ることも言ってなかった感じ?」
先ほど手を合わせた素振りを見せていたのとはうってかわって、手をポケットに突っ込み笑い出す。
「おう! 忘れてた! ハハッ」
今度は高梨さんが申し訳なさそうにこちらに向かって謝る。
「颯くんごめんね。そりゃ急に私がいてビックリしたよね」
「でもさ、1人くらい増えても別に問題ないだろ?」
川崎はさらっと何も問題ないだろ? と俺の顔を見る。
まあ問題がある訳じゃないけど、事前に言っておいてほしいかな。特にその増えるのが女の子なら
高梨さんは元々仲がいい川崎と同じように俺にもフランクに接してくれるおかげで、多少緊張は緩和されているけど、心の準備とかあるだろ…………。
それから約20分ほどで雪ノ丘高校に到着した。
川崎の父の車から降り、剣道部が活動する武道場に向かう。
川崎は武道場の場所を知っているようなので、それについて歩いていると、雪ノ丘高校のジャージであろうものを着た女子生徒がこちらに向かって手を振ってきた。
「味美高校の人だねぇ~!」
特徴的なアニメの声優さんのような声を持つ女の子だった。高梨さんよりも一回り小さい。
高梨さんはその女の子に挨拶をする。
「はいそうです! えっとあなたは?」
高梨さんに反応して小柄な女の子は答える。
「にょわっす~♪ 私は雪ノ丘高校2年の市ヶ谷 蘭だにぃ~♪ 武道場まで案内するよぉ~!」
へ!? 今この子なんて言った!??
なんなんだこの子……?
いや、それよりもなぜ俺らが武道場に向かっていることを知っている?
「市ヶ谷って言ったか? 何者だ?」
「ふぇ? 私どこにでもいる普通の女子高校生だよぉ~!?」
「いや、そうじゃなくてよ」
普段その場のノリと感覚で会話をする川崎が呆れている。
天然なのかこの子? なかなか手強いぞ。話
そんな様子を見ていた高梨さんは、不思議少女市ヶ谷さんに別のアプローチをする。
「蘭ちゃんはどうして私達が武道場に行くことを知ってたのかなー?」
「ふぇ? だって剣道部の練習試合をしに今日来たんでしょ~?」
「ということは、蘭ちゃんは剣道部関係者か何かなのかなー?」
高梨さんは、小さな女の子に話をするように丁寧に質問をしていく。
その質問に市ヶ谷さんは、目をまん丸にして首を傾げる。
いや、首を傾げたいのは俺らの方だ。
「だって私剣道部のマネージャーだよぉ?」
なんだマネージャーか。
それならそうと言ってくれればい─
「あぁぁーーーー!!!」
えっ!? 何々? 突然どうした!?
市ヶ谷さんは両手を大きく上げ、手をパタパタと鳥の翼のように腕をブンブン振りながら叫ぶ。
「私マネージャーってことみんなに言ってなかったねぇ~!!」
俺は呆然とする。
叫ぶから何事かと思ったが……
時間差で俺らが疑問に思っていたことが伝わったようだ。
「あっ! そうだぁ~!」
……次は何だ?
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