第15話 予備校
そろそろ模擬試験も本格化して、本当にちゃんと勉強をしなくちゃいけなくなった、夏休みのある日の事。私は予備校に通って過去問の復習もしていた時の事でした。
「ミーーーンミンミンミン……」と遠くに蝉の鳴き声が響き、夏も盛りを感じつつ、エアコンの利いた予備校の教室で勉強をしつつ、待っていました。
「ガチャリ……」と扉が開けられ、一人の女子生徒が入ってきました。艶のある黒髪は眉の上で切り揃えられ、後ろ髪を三つ編みにして纏めていました。服装は、清潔感のある白のブラウスにジーパンと、至って簡素な容姿でした。真面目を絵に書いたような人でしたね。
もちろん私は、その人がここに来る事もわかっていましたし、どういう相談を持ちかけてくるかも知っていました。後はそれに対して、私が答えるだけです。
その女子生徒は私に一礼をしてから、隣に座りました。見た目と同じで礼儀正しいようです。
そして彼女の口から相談事が話されます。
「貴女が、恋愛相談をしてくれるって人?」
「そうですよ。相談内容をお聞きしますよ」
途端に彼女の顔が赤くなり、うつむきながらも相談を話してくれました。やはり恋の悩みです。それも受験生特有の。
「私ね、ちょっと気になってる人がいるの。誰とは言えないけど、話してて楽しいって思える人。一緒に楽しい事をして行きたいって思える人なの。
でも、私は受験生だから。まずは大学に合格する事が重要じゃない。こんな状況で、恋愛なんてしてていいのかしら?」
それに対しての私の返答はこうでした。
「いいんじゃないですか? 受験生だからって恋愛が禁止されてる訳じゃないし。それに大学受験のモチベーションになるなら、良い事だと思いますよ」
彼女は呆気に取られた「まさかそんな事を言われるとは思わなかった!」という顔をして、私を見つめ返しました。
そしてさらに私は、追加の情報をチラ見せしたのです。
「その彼氏さん、〇〇さんですよね? その人の志望大学、私は知ってます。もちろん学部まで。同じ大学に行って偶然を装って近付く、というのもアリかな? どうです、知りたくないですか?」
彼女は驚きさらに顔を真っ赤にして、早口で私に訪ねます。情報は当たりのようです。
「ちょ、え、なんであの人の名前を知って……。それに大学まで知ってるなんてどうやって???」
「そこは『
結局彼女は、紅茶とお昼の代わりとして二千円を私に渡して、私は彼氏の志望大学の情報を渡したのです。
結局その彼女は友人たちとも話をして、私の情報の裏を取ったようです。それで納得したのか、受験勉強に打ち込むようになったとの事。
志望大学も変更したそうですから、余計に頑張って欲しい所です。
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