第11話 文化祭

 服装も衣替えの時期を過ぎ、半袖になって動きも軽くなってきたこの季節。私の高校では、この時期に文化祭をします。文化祭は3年おきに一度。なので、在学中には一回だけ生徒が参加をする訳なのです。


 以前は秋に開催だったそうですが、3年生の受験の事も考えて、この時期に移動になったそうです。まあ、私にとってはあまり関係ないですけど。


 今は文化祭に向けての準備に追われている所です。各教室毎に出し物が決められ、様々な物が集められています。そんな訳で私の組でも、ある物が集められていました。


「うえぇぇぇ…。まだ残ってるの? もう飲めないよぉ…」

 そう弱音を吐いてきたのは、友人の結奈ゆな。目の前には、ペットボトルの緑茶が立ち塞がっていました。

「うん…。まだ後12本もあるよね…。私もそろそろ限界…」


 何をしているか、その解説ですね。

 私の組では、ペットボトルのキャップを釣り糸で繋ぎ合わせた『モザイク画』を作る事になっていまして、その中で緑色が必要という事で、緑茶のペットボトルを集めている訳なのです。


 しかし絵柄の中で緑色はかなりの量が必要になっていますので、今は皆して必死になって緑茶を飲んでいる、という事です。


「とりあえず、このお茶を飲める人を探して、飲んでもらうしかないわね。何かの箱に入れて、配って歩きましょ」

 私の提案に結奈ゆなは二つ返事で同意します。

「そーしよー。もう飲み疲れたよー。お腹ちゃぽちゃぽ」

 そう言ってお腹をさする結奈ゆな。顔はゲッソリとした表情で、「もうイヤだ(汗)」と言わんばかり。そりゃそうよね、2本も飲めれば充分頑張ったよ。

 まだ残っている3本目を片手に持ち、残っているペットボトルの緑茶を適当な箱に横倒しで入れて、教室を後にしました。





 私はこの文化祭、最初は乗り気ではなかったのですが、いざ始まって準備に取り組んでいると、まんざらでもない気がしてきました。


「ほら、先週言ってたクレープ屋。アソコのクレープが美味しいから、今度の屋台では真似しようって」

「んんんんん? お前そんな色にしたの? もっとこう…明るい色にしないか?」

「ねーねー。準備まだ終わンないでしょ? だったらさ、学校に泊まり込まない?」


 他愛ないお喋り、真剣な意見の出し合い、完全なお祭り騒ぎのノリ。そんなお喋りが、明るい色と気持ちのイイ匂いと一緒に感じられる、そんなひとときを感じているのです。そんな時、なかなか無いですね。


 私もガラに無くノリに乗ってしまっているのは、まあたまにはイイと思いますよ。私だって普通の女の子なんですから。

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