カクヨムを使い始めて思うこと ――五年目の塔も下から組む――
2023年4月
昨日4月5日の「カクヨムからのお知らせ」を読んで ――短編コンテストだけど短編コンテストじゃない!?――
2023年4月最初の更新なので、まずは少しご挨拶を。
4月といえば、新年度の始まりです。2019年4月1日からカクヨムを使い始めた私にとっては、カクヨム5年目のスタート。本エッセイの副題部分も「四年目にして惑わず」から「五年目の塔も下から組む」に変更しました。
副題部分は元々「カクヨム初心者の視点から」であり、2年目も単純に「カクヨム二年目の視点から」でしたが、3年目に「三年目の正直」とした際。
「これなら『三度目の正直』をもじった格好になり『一年目も二年目も特に目立った成果はなかったけれど、三年目こそは!』みたいな意味になりそう」
と、自分では上手いこと言ったつもりになって……。
ならば4年目もそれっぽいものを、という言葉遊び的な感覚で選んだのが「四十にして惑わず」。今年は「五重の塔も下から組む」の精神で、5年目になってもまだまだ基本からコツコツ頑張っていこうと思っています。
これからもよろしくお願いします。
さて。
今回の本題は、昨日の「カクヨムからのお知らせ」です。
【4/26~6/2募集】カドカワ読書タイム短編児童小説コンテスト開催決定!
https://kakuyomu.jp/info/entry/dokusho_time_2023
今こうしてリンクを張る際、初めてURLにも注意が向いたのですが、今回は末尾が『dokusho_time_2023』となっているのですね。
当然「2023」は2023年の意味であり、「dokusho_time」はカドカワ読書タイムを示すはず。そうなると、今年のカドカワ読書タイムのコンテストはこれ一つなのでしょうか。だとしたら少し残念です。
……というのは今現在の気持ちですが。
昨日この「お知らせ」を見た瞬間、私の目に入ってきたのは「カドカワ読書タイム」と「短編児童小説」。
これは待望のニュースだ、と思いました。
カドカワ読書タイムといえば、児童向け短編集の「5分で読書」シリーズを刊行しているレーベル。以前にこのエッセイでも、
>今後も「5分で読書」のコンテストは開催されるだろう、と期待しています。
>特に「5分で読書」ならば、受賞だけでなく中間通過作品も書籍に結構収録されるようなので、そこを目標にしたくなります。
などと記したように、私は「5分で読書」コンテストの開催を今か今かと待っていました。今回は「5分で読書」という言い方ではないけれど、ならば「5分で読書」に類似した新しい短編集シリーズを刊行する予定があり、そのためのコンテストかもしれない!
そんなワクワクする気持ちで「お知らせ」本文を読んでいくと……。
>今回のコンテストでカドカワ読書タイムが募集するのは、長編児童向けノベルの「核」となるようなキャラクター・設定を持った、短編小説です。
あれ……?
短編集に収めるような作品ではなく、長編化が前提の短編……?
まずは期待していた想像の一つを壊された形ですが、これはこれで面白そう。「受賞作品は長編化して書籍化を検討」みたいな中編コンテストは今まで何度かありましたし、これも似たようなものなのでしょう。
短編集ならば一冊に複数の方々の作品が収録されますが、長編化するのであれば一人一冊。「書籍収録」より格上っぽい「書籍化」になる代わりに、そのチャンスを得られる人数が減ってしまうので、その点は残念ですね。
そんなことを思いながら、さらに読んでいくと……。
>募集する部門は、「児童向け恋愛小説(溺愛)」と、「児童向けファンタジー小説(異世界転移)」の二つ。
>「児童向け恋愛小説(溺愛)」の対象読者は(以下略)
>「児童向けファンタジー小説(異世界転移)」の対象読者は(以下略)
それぞれの募集部門に関して、かなり細かく具体的に書かれています。お題が与えられる短編コンテストはよくありますが、その場合の「テーマ」はもっと漠然としたものが多いですし、ここまで詳しく指定されるとなると、もう「お題」とか「テーマ」とかの範疇を超えている感じ。レーベル側の求めているものがハッキリしているので、これは相当ガチな雰囲気っぽい。
私は元々「受賞なんて夢のまた夢。一次通過みたいな形で少しでも評価されたら、それだけで幸せ!」という姿勢でコンテストに臨むエンジョイ勢。今ではいくつかの短編コンテストに限り「書籍収録を目指す!」みたいなガチ勢っぽい気持ちになる場合もありますが、まだまだ基本的にはエンジョイ勢です。特に、複数の作家が収録される「書籍収録」ではなく一人一冊の「書籍化」前提のコンテストともなれば、完全に「受賞なんて夢のまた夢」という気持ちに戻ってしまいます。
そうなると、今回のカドカワ読書タイムのコンテストは、私から見ると応募するだけでも恐れ多いレベルのコンテスト。それでも一応、気分だけでも襟を正すみたいな気持ちで、さらに続きを見ていくと……。
そもそも、今までコンテスト関連の開催告知では「お知らせ」ページに詳細な記述はなく『詳しい応募要項はコンテストよりご確認ください』みたいに誘導される場合が多い印象でした。ところが今回は「お知らせ」ページの段階で詳細が記載されています。そんな点からもレーベル側の本気度を感じました。
一番「これは普通じゃない!」と私が感じたのは『作品形式等』として赤字で書かれていた部分です。
>作品ページのあらすじ部分に「※ネタバレ注意」の一文を入れたあと、「キャラクター設定」「長編化した際のプロット」を記載してください。(文字数制限はなし)
>「児童向け恋愛小説(溺愛)」部門では主人公は女子、主人公の年齢は10~15歳としてください。
>「児童向けファンタジー小説(異世界転移)」部門では主人公の年齢は10~15歳としてください。(性別は問いません)
下2つは先ほどの募集部門の件でも書かれていた話ですが、問題は上の1つですね。
「キャラクター設定」と「長編化した際のプロット」!
これを見て、このコンテストに対する印象が、改めてガラリと変わりました。
短編や中編のコンテストで、長編化して書籍化するのを前提とする。
そこまでならば「よくある話」と思っていました。
例えば短編や中編を書く場合、それ単独で物語をまとめながらも、まるで長い物語の第一話っぽい内容にして「続編を書くことは可能」という形で終わらせる……。
コンテスト応募でなく日頃の小説投稿の中でも、似たような経験のある方々は結構おられるのではないでしょうか?
コンテストに話を戻すと、そういう短編や中編ならば「長編化して書籍化が前提」なコンテストには応募しやすい。いや「短編や中編」だけでなく長編でも「続編を書くことは可能」にしておく場合はありますよね。特にラノベは売れ行きさえ良ければ一冊だけでなくシリーズとして何冊も刊行される印象ですし、例えば「三冊まで刊行確約」みたいな謳い文句のコンテストもどこかで見た記憶があります。
そんなわけで、どんな作品でも「続編を書くことは可能」というのは比較的よくある話かもしれません。でも「長編化した際のプロットも記載」と言われたら、もう「続編を書くことは可能」というレベルを超えています。
私が思っていた「続編を書くことは可能」というのは、漠然と「シリーズ2作目はこんな物語にして、3作目はそんな物語にして……。シリーズ全体の着地点は、あんな感じかな?」と考えるレベル。でも、それだと途中が抜け落ちているからシリーズ全体の構想としてはまとまっていない。そもそも着地点にしたところで、まだ「漠然と考える」程度では、他人に見せられるような「プロット」の形には出来ない!
個人的には「キャラクター設定」も苦手なのですよね。まあ長編だと設定せずに書き始めると収集つかなくなりそうだから一応キャラ設定は作りますが、これも私の場合「漠然と」というメモ書きのレベル。
特に短編になると「書いているうちに固まってくるよね」と思って、特にキャラ設定も用意せずに書く場合が多いほど。まず基本的な行動方針はキャラの性格に依存するので、短い物語だと物語を構成した時点で主人公の性格はある程度決まるから必要ないですし、口調や細かい仕草などに現れるような性格に関しては、あらかじめ決めてしまうよりも、書きながら「なるほど、このキャラは、ここでこんなことを言ったり、こんな仕草を見せたりするのか」と固めていく方が書きやすい。
まあ「基本的な行動方針はキャラの性格に依存」というのは短編に限らず長編でも同じでしょうから、そうなるとプロットを立てた時点で、ある程度キャラ設定は決まってくる。だから自分用の設定メモならば、後々発生予定のイベントと関わる点だけキャラ設定しておけばいいのですが……。
そうすると、細かい部分は細か過ぎて、スカスカの部分は超スカスカ。そんな疎密の多い「設定」になってしまう。これでは、もちろん他人には伝わりません。
今でも思い出すのが、他サイトで挿絵付き連載を始めた時のこと。キャラデザのために提出したキャラ設定、自分では詳しく書いたつもりだったのに、当時の担当様からは「もっと趣味など色々書いてください。それらのイメージもキャラデザに必要なので」と言われてしまいました。趣味嗜好がデザインに繋がるというのは、絵の描けない私にはピンと来ませんでしたが……。後でキャラデザのラフ画をいただいた際、イラストレーター様の「かわいい小物が好きという話なので、それらを入れられるよう、ポケットの多い服装にしました」みたいなメモ書きが。
なるほど、そういう形でキャラの性格がデザインに反映されるのですね! とても勉強になりました。
……と、キャラデザの話はさすがに余談になりますが。
デザインとして起こすまではしないとしても、コンテスト応募段階で「キャラクター設定」が求められるということは、応募する作者とレーベルの編集者との間で、そのキャラのイメージをしっかり共有したいのでしょうね。それも選考に関わるのでしょうから、とにかく相手に具体的なイメージが伝わるレベルの「キャラクター設定」――自分だけわかればいいという程度のものではなく――を書かねばなりません。
それに加えて「長編化した際のプロット」。こちらも他人に見せる以上は「とりあえず全体の着地点だけ決めて、途中は書きながら考えよう」ではいけません。
……いや正直に言うと、先ほどの「他サイトで挿絵付き連載を始めた時」は、提出したプロットも第1章と第2章だけ詳しくて、その後は「このように10万文字から15万字くらいごとに、次々と事件が起こります」と省略。物語全体の最後の着地点として、最終章の構想だけ記す形でした。良くない書き方のプロットです。
あの時は「基本的な方向性のために一応プロットを」と言われた程度なのでそれで許されましたが、コンテストとなれば話は別。今回は「長編化した際のプロット」として、選考側のレーベルを納得させるために、かなり綿密なプロットが必要になるのでしょうね。
もちろん作品本文だって重要です。『本文が5000字以上12000字以下』『作品のステータスが「完結済」でない場合、当該作品は選考対象外』なので、短編としてのまとまりも要求されるわけですが……。
長編としてのプロットとキャラ設定も添えた上で、1万文字程度の作品本文。こうまとめてしまうと、頭に浮かんでくるのが、以前に自主企画の枠で行われていた公式コンテスト的なイベントです。
【スニーカー文庫編集者】カクヨムプロットコンテスト【担当なります】
https://kakuyomu.jp/user_events/16817330647869497553
私は結局応募しませんでしたが、あのプロットコンテストで興味深かったのが、プロットだけでなく「本文の一部」も要求されたこと。
あれはプロットコンテストだったのでプロットが主であり、あくまでも「本文の一部」はメインではありません。おそらく文章力や表現力などを判断する上で必要だったのだろう、と想像していました。
あれと比べて、今回のコンテストは「短編児童小説コンテスト」と銘打っている以上、短編のコンテストです。短編小説が主体のはず、と思うのですが……。
でも最終的な目標は、
>コンテスト受賞作にはカドカワ読書タイム編集部員が担当につき、加筆・改稿を行い長編ノベルを作ることを目指します。
と書かれているのですよね。
長編として書籍化するために必要だからこそ「キャラクター設定」「長編化した際のプロット」が求められているわけで……。
ならば短編小説の作品本文よりも、実は「キャラクター設定」「長編化した際のプロット」の方が重要であり、そちらが選考でも重視されるのではないか。
だとしたら、これは短編コンテストというより、実質的にはプロットコンテストなのでは……?
そんなことを考えてしまいました。
1万文字程度の短編を書くだけならば簡単ですが、他人に見せられるレベルの「キャラクター設定」「長編化した際のプロット」も一緒に書くとなると、一気にハードルが上がります。
むしろ「短編」本文なしで「プロット」だけならば、全体的なあらすじっぽいもので済ませてしまうという手もあるかもしれませんが、両方となると難易度が跳ね上がるイメージ。
というより、そもそも「長編化した際のプロット」と冒頭部に相当する約1万文字まで書いてしまったら、作者としては続きを書きたくなるのでは……?
考えれば考えるほど、これは大変なコンテストではないか、という気持ちになりました。一般的に「短編コンテスト」というと取っ付きやすいイメージですが、これはむしろ「長編コンテスト」よりも難しそう!
以上、形式的な話の段階でもう応募意欲が思いっきり低下しましたが、内容的にも難しそうな感じ。
募集部門が「児童向け恋愛小説(溺愛)」と「児童向けファンタジー小説(異世界転移)」の2つだけですからね。
まず「溺愛」は全く書けそうにありません。書くとしたら「異世界転移」の方ですが、どうも「異世界転移」と言われるとラノベっぽいイメージとなり、児童向けファンタジーとは少し違うような気が……。
そう思ったところで、ふと思い出しました。「5分で読書」の異世界ファンタジー編は「扉の向こうは不思議な世界」というタイトルでしたね。「異世界」でなく「不思議な世界」と言われると、ラノベっぽさを感じなくなります。
そして「児童向け」で「不思議な」と言われて頭に浮かぶのは、世界的に有名な『不思議の国のアリス』。ああいうのも「異世界転移」の範疇ならば、なるほど「児童向けファンタジー小説」になりそうです。
とはいえ「『不思議の国のアリス』みたいな雰囲気の作品を書きましょう」と言われても、全く書ける気はしないのですけどね。
以上、新しいコンテストに関して長々と考えてみましたが……。
結局のところ「私には難しそう」「おそらく応募できない」という気持ちがドンドン強くなるだけ。それでも、もしも何か思いつけば応募するかもしれませんが……。その場合、短編本文だけで手一杯となり、肝心の「キャラクター設定」「長編化した際のプロット」の方は、スカスカで酷いものになるでしょうね。
どうやら今回のコンテストは、真面目に児童向けの長編を書ける方々のためのコンテストっぽい。特にお子様をお持ちの方々など、カクヨムにはそうしたユーザーもたくさんおられる、と感じています。
「我こそは!」と思う皆様は、是非がんばってください!
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