「楽しくお仕事 in 異世界」中編コンテスト中間選考について

   

 昨日今日の話題ではないので、少し今更感もありますが……。

 3日前に中間選考の結果が発表された「楽しくお仕事 in 異世界」中編コンテストについての話です。


 昔の私は「発表当日に結果を見ると100%落選」「一次選考や中間選考に通過するのは、1日か2日遅れて結果を見た場合、あるいは自分で見ずに他のかたから通過を教えていただいた場合のみ」という妙なジンクスがありました。そのせいで少し遅れて結果を見に行く習慣でしたが、いつの頃からかそのジンクスも消えましたし、また最近では『落選カレンダー』と称してコンテスト結果そのものをまとめるエッセイも連載しているので、発表があったことに気づき次第、結果を見に行くようになりました。

 そんなわけで「楽しくお仕事 in 異世界」中編コンテストの中間選考も、1月11日のうちに結果を確認。『落選カレンダー』の方にまとめました。


 私は1作品応募して、めでたく中間通過。しかも、自分なりに思い入れのある作品だったのでとても嬉しい! ……という話は『落選カレンダー』の方でも書きましたが。

 今になって改めて考えてみると、そもそもカクヨムのコンテストで中間選考を通過したこと自体、とても久しぶりな気がします。実際には前回のカクヨムコン短編で中間通過しているので、昨年3月以来なのですが、感覚としてはそれ以上の「久しぶり」。

 なぜそう感じるかというと、カクヨムコン短編は「読者選考によるランキングを参考に」という選考だからでしょうね。読者選考に完全準拠ではないにせよ、★の数から「中間通過できそう」「中間通過は無理っぽい」というのが事前に予測できる分、そういうのがないコンテストの中間選考とは「何か違う」という感覚になっているようです。

 そこでカクヨムコン短編の中間通過を除いてみると、最後に中間通過したのは2020年9月の「第1回 角川武蔵野文学賞」。2年数ヶ月ぶりみたいな感覚になり、だから「とても久しぶり!」と感じてしまったのでしょう。


 まあそれは少し余談として、一度『落選カレンダー』の方で報告しているのに今回わざわざこちらのエッセイでも「楽しくお仕事 in 異世界」中編コンテストについて記しているのは、発表当日の「嬉しい!」から少し頭を冷やして、考え直した部分も出てきたからです。

 まず『落選カレンダー』の中で、私は以下のようなことを書いてしまいました。


> 応募締切時点の発表を見ても、今回の中間選考結果発表ページに表示されている総作品数を見ても、応募総数は588作品。

> 数えてみたら中間通過は167作品ありましたから、3割近くが通過できたことになります。一次通過でも1割くらいが普通と考えたら、今回はかなり甘い気がしますね。

> それでなくても前々からカクヨムのコンテストでは、文字数など明らかに応募規定に合致しない作品だったり、そこまで「明らか」でなくても内容的に「何故このコンテストに応募?」と思える作品だったりが、結構たくさん応募されている場合もありましたから……。

> その辺りも加味すると、本当に「甘い」中間通過だったのかもしれません。


 たとえ「3割」を多いと感じたとしても、逆にいえば7割は落ちているのですから、これは落ちた方々に失礼な考え方ですね。

 その日のうちに、近況ノートでも「中間通過しました!」という報告をしたのですが、そちらでは以下のような記述も付記していました。


> なおエッセイの中では「応募総数の約3割が中間通過。文字数で規定を満たしてなかったり、明らかなカテゴリーエラーだったりという作品も含んだ応募総数の約3割だから、通過基準は結構甘かったのかも」と書いてしまいましたが……。

> 近況ノート新着記事一覧を眺めていると「落ちました!」みたいな報告も結構ありますね。しかも「しっかりした作品を書いておられる」という印象を私が抱いている方々の中でも、落選している場合があるようです。

> それならば、最初に思ったほど甘くはなかったのかもしれません。


 我ながら言い訳がましくて恥ずかしくなります。

 その後、他の方々のエッセイを見ているうちに、一つ誤解している点に気づきました。先ほど自分自身のエッセイから引用したように、私は『前々からカクヨムのコンテストでは、文字数など明らかに応募規定に合致しない作品だったり、そこまで「明らか」でなくても内容的に「何故このコンテストに応募?」と思える作品だったりが、結構たくさん』と思っていたのですが、少なくとも今回の「楽しくお仕事 in 異世界」中編コンテストに関しては、規定の文字数違反は非常に少なかったそうです。

 改めて考えてみると、私が思っている「前々からカクヨムのコンテストでは」の「前々」というのはかなり以前の話。あれから少しずつカクヨムのシステムも改善されて、あからさまな規定違反のコンテスト応募は減ってきているのでしょうね。

 そうなると、やはり結構の割合で落選していることになります。ならば今回は、それほど甘かったわけではないのでしょうが……。


 それはそれで「あれ?」と思う点が出てきました。

 私が今回応募して中間通過した『こちら異世界ウイルス堂』は、確かに個人的な思い入れは強い作品なのですが、では胸を張って「面白い作品です!」と言えるかというと、そんな自信はありません。

 ★やレビューもいただいているので、面白いと思ってくださる方々がいるのは確かだとしても、そうした方々は他の作品の場合より少数かもしれません。

 元はといえば、私の処女作に相当する『「ウイルスって何ですか?」――ウイルス研究者の異世界冒険記――』に関して「ウイルスをテーマにしつつ冒険小説としても書きたかったが故に、逆にテーマがとっ散らかった」「ウイルス要素が強いのは序盤だけで、途中からは単なる冒険小説になってしまった」という反省があり、そこから「ならば本当にウイルス関連だけにテーマを絞って」と思いながら書いた作品が『こちら異世界ウイルス堂』でした。

 今回のコンテスト応募用の執筆ではなく、2019年6月に投稿した作品です。

 しかしウイルスの話に絞ってしまうと、冒険ファンタジーから冒険部分を抜いたみたいな感じで、娯楽小説としては「ん?」と疑問符がつく作品になってしまう!

 私としては「教育番組のお姉さんとお兄さんが軽妙な掛け合い」みたいな雰囲気を目指したつもりですが、読者によっては「小説というより異世界におけるウイルス学の教科書みたい」と思われるかもしれません。

 また、一応は中編として完結していても、物語としてはまだまだ導入部。これを第1作としてシリーズを続けるならばまだしも、この作品だけでは特に中途半端に感じられるでしょうね。

 冷静に考えれば考えるほど、中間通過できたのが不思議になってきました。


 なお少し余談になりますが、今回の中間通過で嬉しい驚きの一つとして、『こちら異世界ウイルス堂』のフォローが急に増えています。今現在フォロー46なのですが、そのうち8つか9つくらいは中間通過の発表後のはず。約20%の急増ですね。

 コンテストの中間選考通過って、ここまで読者を増やす効果があるんでしたっけ?

 確かに以前「第1回 角川武蔵野文学賞」で中間選考を通過した際、PVが一時的に増えたことはありますし、その件はこのエッセイでもネタにしました。

 あれは短編でしたが今回は中編。だから「後で読もう」という方々もおられてフォローが増えるのだろう。……と理屈はわかるのですが、でも中間選考通過がわずか20作品だった「第1回 角川武蔵野文学賞」に対し、今回は167作品もあります。それだけ多いと、中間選考発表ページの中でも埋もれてしまいそうなものなのに、案外導線になり得るのですね。

 あるいは、そこではなくTwitterからなのでしょうか。

 カクヨム公式アカウントの発表告知ツイートを「通過しました!」みたいに一言添えて引用ツイートしているユーザーが何人もおられて、私も同様に引用ツイートしてみました。

 カクヨムに限らず公式アカウントのたぐいから引用ツイートすると、いつものツイートとは比較にならないほど多くの方々の目に留まるでしょうし、そちらから来る読者もおられるのだろうか、とも想像しています。

 いずれにせよ、せっかく一時的に増えた読者の方々ですが、先ほども述べたように「小説というより異世界におけるウイルス学の教科書みたい」と思われてガッカリされるのではないか。そんな心配もしてしまいます。


 ……と少し話が逸れましたが。

「冷静に考えれば考えるほど、中間通過できたのが不思議になってきました」という辺りに話を戻して。

 本当に不思議に思うのであれば、比較のために他の方々の作品を読んでみればいいのですよね。

 特に近況ノートで、


>しかも「しっかりした作品を書いておられる」という印象を私が抱いている方々の中でも、落選している場合があるようです。


 と書いたのですから、その点、確かめる必要があるはず。『「しっかりした作品を書いておられる」という印象を』では曖昧なままなので、実際にどれほど「しっかりした作品」なのに落選したのか、読んで確かめてみようということです。

 そもそも『しっかりした作品を書いておられる」という印象を私が抱いている方々』という時点で、いくらか交流のある方々です。こちらは中間通過しているのに今更落選作品を読みに行くのは嫌味に思われるのではないか、という心配もありましたが、やはり曖昧な「印象」のまま放っておくのは無責任と思い、該当する作品を2つほど読んでみました。

 どちらも私があらかじめ思った通り、よく出来た娯楽作品でした。私自身の「面白い」のセンスが他人とは違うのを考慮に入れても、まず私の感覚で「面白い」と素直に楽しめる作品でしたし、「おそらく一般的な読者からみてもこれは面白いだろう」とも思える作品でした。読んでいて見習いたくなる部分もあり、勉強にもなりました。

 だから、それら2作品を読み終わって、やっぱり不思議に感じました。なぜこれらが中間選考で落選しているのか、と。

 続いてもう2作品、今度は「2作品応募して、自信作が落選して、もう片方が中間通過した」というかたの2作品を読んでみました。読み終わった段階で「自信作が落選して」の方に★3、「もう片方が中間通過した」の方に★1を入れました。それが私からみた面白さの評価でした。

 こうなると……。

 自分の作品の「なぜ中間通過できたのだろう?」も含めて、ますます「なぜ?」という疑問が大きくなります。いわゆるエンタメのような娯楽作品、小説としての面白さと別の部分に選考基準があったのではないか、と思えるほどです。

 これ以上の考察・分析は大変なので、とりあえず「今回は良作でも中間選考の段階で落とされたらしい」と確認できただけで良しとしましょう。

 一番最初に思った「甘かった」どころか、むしろ逆に「厳しかった」という中間選考でしたね。


 結局、改めて「コンテストって難しいなあ」と感じました。

 選考側が求めている何らかの判断基準があって、それに則していなければ、どんなに優れた作品でもあっても最初の段階で跳ね除けられてしまう。

 それは当然の前提として頭ではわかっているつもりでしたし、だからこそ「何かのコンテストで一次落ちでも、別のコンテストでは評価されるかもしれないから」と使い回しも頻繁にやってきたわけですが……。

 今一度、コンテストの難しさを実感させられた形です。こういう「選考の判断基準がブラックボックス」的なのと比べると、読者選考の方が――個人的にはあまり好きではないのですが――、むしろわかりやすくて良いのかもしれませんね。

   

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