これも一種の公式自主企画
今日のお昼頃、自主企画一覧を見ていたら、面白い企画が目に留まりました。
【スニーカー文庫編集者】カクヨムプロットコンテスト【担当なります】
https://kakuyomu.jp/user_events/16817330647869497553
カクヨム公式アカウントからではなく、また「公式自主企画」という言葉も含まれていませんが、主催者様がKADOKAWA系列のプロの編集者様なのですから、これも公式自主企画みたいなものですね。
コンテスト枠ではなく自主企画枠を使った、公式のコンテスト的なイベントというのは、今までもいくつかありましたが……。
今回興味深いのは、これがプロットコンテストだということ。
小説そのものではなく、プロットだけで応募できるのです!
そもそも素人作家が小説を執筆して公開する動機って何でしょう? 今でこそカクヨムロイヤルティプログラムみたいに「お金になる」というのもありますが、趣味の執筆というのは元々、一銭にもならないものでした。だからお金のためではなかったはず。
自己顕示欲や承認欲求ならば、別に小説執筆でなくてもいいわけですよね。私の場合「こんな話を思いついた」というのを他の方々にも見てもらいたい……。そんな気持ちが、大きな動機の一つな気がします。
これって私だけに限らず、結構ありがちな執筆動機ではないか、と勝手に思っています。
しかし、物語を思いつくのは一瞬でも、それを文字に起こそうとしたら結構大変です。例えば1時間あたり1,000文字書けると仮定しても、3,000文字程度の掌編で3時間、数千文字程度の短編ならば数時間。10万文字の長編ならば100時間も費やすことになります。いや、そもそも「1時間に1,000文字も書けない!」という方々もおられるでしょうし、執筆自体は「1時間あたり1,000文字」という方々でも、設定を練ったり資料集めをしたりという時間も含めれば、とてもその時間では収まらないでしょう。
そんなわけで、誰しも「思いついたけれど形にしていない」「形にしないうちに構想そのものを忘れてしまった」というアイデアは結構あるのではないでしょうか?
でもプロットだけならば、そこまで時間もかからずに書けるはず!
しかもコンテストなので、それを一般ユーザーだけでなくプロの編集者様にも見ていただける!
なんと素晴らしい機会なのでしょう!
そのように考えてしまうので、プロットコンテストは大好きです。
カクヨムではないですが、昨年の確か今頃、別のサイトで行われていたプロットコンテストに応募したこともあります。4作品応募したのですが、残念ながら全て一次選考の段階で落選しました。
プロットコンテストって、応募しやすいだけに応募者殺到となり激戦区。一次選考すら厳しいのだから、出すだけ無駄……。そんなことも痛感しましたが、一年経ったらケロッと忘れて、性懲りもなく今年もそちらの「第2回」に1作品だけ応募中です。
とはいえ、そちらは他サイトの例であり、今回はカクヨムです。
カクヨムは私がメインとして使っている小説投稿サイトなので、そこでプロットコンテストが行われるというだけで、なんだかワクワクします!
そんな気持ちで、企画内容を見ていくと……。
フリー枠やお祭り枠の他に、3つのテーマが用意されています。
例えばコンテストによっては「応募要項には明記されていなかったけれど、途中選考の通過作品や受賞作品を見ると、最初から『そのジャンルは採用するつもりがない』というジャンルがあったらしい」と思われる場合もありますが、こうして求められているテーマが示されているならば大丈夫。かなり具体的にテーマが書かれており、それに合わせれば良いのですから、心配する必要はありません。
プロットの書き方が詳しく指定されている点も素晴らしいですね。
一口にプロットと言っても、どれほど詳しく書くか、どの項目を書いておくか、感覚的に記すか理路整然と書くか等、人によって書き方は千差万別でしょう。自分自身が趣味で執筆する際に用意するだけならば、それでも十分でしょうが、いざ他人に見せようと思ったら、ある程度共通の規格が必要になってきます。
その意味では今回、プロの編集者が求めるフォーマットがわかるというだけでも意義がありますし、実際にそれに沿って書いてみるのは、作家デビューを目指す方々にとっては良い勉強になるでしょうね。
また、今回のコンテストでは『1話プロット、2話本文で合計1万字以上、2万字以内のプロット』となっており、特に私が興味深く感じたのは、この「本文の一部をつける」という点。
作品の一部だけならば小説全体を書くほど時間もかからないはず。時間的には楽できる上に、自分の小説の文章そのものを見てもらえるわけです。
私は文章力の高い書き手ではありませんが、それでもやはり「自分の文章をプロに見てもらいたい」という気持ちはあります。
……というようなことを考えた時点で、思い出した経験が一つあるので、少し余談になるかもしれませんが披露してみます。
そもそも「文章力」も「作品の面白さ」同様、客観評価的な「高い」「低い」とは別に、主観評価の部分もあるのではないでしょうか。
このエッセイでも何度か触れているので、ずっと読んできた方々はご存知でしょうが――エッセイなので飛ばし飛ばしで読んでいる方々もおられると思うので改めて書いておきますが――、私は「ノベリズム」というサイトで「紙媒体ではなくweb連載だけど一応は商業作品」という長編連載を続けています。
その過程で、これまで何人かの担当様にお世話になりました。そのうち最初の担当様は「原稿の送付などはメールで行うけれど、それ以外の細かい打ち合わせ(例えばイラストレーター様に頼む挿絵についてキャラの表情やポーズ、背景などを話し合う場合)はスカイプで行う」というシステム。メールと異なりスカイプならば二人だけのチャットみたいな形式となり、連絡事項以外にかなり雑談も含まれていました。
そんな雑談の中で「烏川さんの地の文の書き方を個人的に気に入っている」みたいなことを言ってくださった時があるのです。
おそらくお世辞半分、それどころか、ほぼ完全にお世辞だったのかもしれません。作家と担当という間柄の中で出てきた言葉と考えれば「作家に気持ちよく書いてもらうため」みたいな意味もあったのかもしれません。
そもそも一般論として、どこかで何度か「コンテストの選考委員や編集者などが文章を褒めるのは、他に褒める点がない場合」という話も目にした覚えがあります。小説執筆とは別ですが、アメリカで働いていた時「『英語が上手ですね』と言われても喜んではいけない。本当に上手と思ったらアメリカ人は『この点を直すともっと良くなるよ』と敢えて悪い点を挙げてアドバイスする」という話も聞いたことがあります。小説で文章を褒めるというのは、その「英語が上手ですね」と似ているのだろう、と感じて納得したものでした。
でも、いざ自分が「文章を気に入っている」と言われたら、そんな理屈は吹っ飛んで、素直に嬉しくなってしまうのですよね。
そもそも『最初の担当様』ですから、その
しかも「新作の連載」なので、作品そのものの拾い上げとは異なります。どんな作品が書かれるのか、未知数なのに声をかけてくださった。もちろん既存の私の投稿作品を読めば、ある程度の作風などはわかるとしても、新作と既存作が完全に一致するわけではない。そうなると「ある程度の作風」という判断基準の中には、今思えば「文章の癖」みたいなものも含まれていたのでしょうね。
つまり、声をかけてくださった担当様が私の文章を気に入っているのも、ごくごく自然な話……。そう思えるわけです。
このように文章を「気に入っている」というのは、まさに客観評価ではなく主観評価でしょうし、そうした意味での「文章力」は、作家と担当(編集)が一緒に仕事をする上で結構重要なファクターになるのではないか、と思いました。
それを踏まえた上で、今回のプロットコンテストに話を戻すと……。
もちろん他の投稿作品まで目を通してもらえれば「日頃の小説ではどのような文章を書いているか」というのも理解してもらえるかもしれませんが、そこまで見てもらえるかわからないし、そもそも応募ユーザーによっては「一作ごとに作風が違うから、文章の書き方も違ってくる」という方々もおられるでしょう。
そんな場合でも、プロットと共に本文の一部を提出する形式ならば「このプロットを小説にする際、こんな文章表現になります」というのが、編集様に伝わるわけです。
素晴らしいコンテスト形式ですね!
以上はポジティブな部分として……。
応募要項に相当する「企画内容」を読んでいくと、逆に気になった点もありました。
『応募はお一人、最大2作までに限ります』という応募制限です。
上でも述べたように、プロットだけならば小説そのものより書きやすいはずですからね。制限をつけておかないと、応募数が多すぎて大変なのでしょう。
そこは理解できるのですが……。
応募者視点で見れば、やはりたくさん出したいですよね。せっかくたくさん思いついても「2作まで」ならば厳選する必要が出生じてきます。
とはいえ「今これを出してしまうと、後で別のを思いついた時に困るから、少し待っておこう」などと考えすぎると、これはこれで問題がありそうです。
なにしろ、
>※多数の応募をいただいた場合応募期間の締め切りを切り上げる場合があります。
という記述もあるのですから!
駆け引きといったら大袈裟ですが、応募タイミングの見極めみたいなものも必要になりそうです。
……と、以上は応募を検討する際に考える点として。
この企画の場合、応募せずとも楽しめるのではないかな、とも思っています。
最初の方で他サイトのプロットコンテストの例を挙げましたが、プロットだけならば短いので読みやすく、少なくとも「第1回」の時は、かなりたくさんの応募作品を読んでみました。
とはいえ、しょせん他サイトは他サイトです。自分がメインで使っているカクヨムでないと、他のユーザーの方々と交流がなく、作品を読んでも知らない作者名ばかり。見覚えのある作者名も皆無ではありませんでしたが、それらはほとんどカクヨムユーザーだったと思います。
その点カクヨムならば、私のように交流の少ない者でさえ「私の作品にコメントを書いていただいたり、私の方から書いたり」という方々も結構おられますし、「交流はないけれどお名前だけはよく拝見する」というユーザーもたくさん。
企画参加作品を見ていったら「あの〇〇さんがこんなプロットを考えている!」みたいな面白い発見も出てきそうです。
私自身が応募者として参加するかどうか、その点はまだ決めていませんが……。
とりあえず、他の方々の応募プロットを読むだけでも面白そう。とても楽しみな企画です!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます