9月24日の「カクヨムからのお知らせ」(後編)――「参考に」というのはどれくらい? 昨年のデータから再考する――

   

 というわけで、後編です。

 短編部門の『読者選考によるランキングを参考に、カクヨム編集部による一次選考を行います』という記述。本当に「参考」程度で審査してくださったのか、あるいは、実際はほとんど読者選考に丸投げだったのか。

 昨年の私の応募作品を例として、改めて考えてみたいと思います。


 まず。

 昨年のカクヨムコンに私が応募した短編は、51作品。そのうち中間選考を通過したのは、2作品でした。

 それら全てを、読者選考期間に得られた星の数が多い順に並べてみます。「A(B → C)」という書き方で、Aが期間中に増えた分、Bがカクヨムコン開始時(カクヨムコン期間中に投稿した場合は投稿時)の星、Cが読者選考期間終了時の星です。


 41(0 → 41)黒いクリスマスケーキ [中間選考通過]

 28(0 → 28)スーパーが花屋に化けた

 27(0 → 27)はじめてのミスコン

 27(0 → 27)ある朝トイレに入ったら便器がきれいに消えていた [中間選考通過]

 25(3 → 28)乳首なき世に生まれつく

 21(0 → 21)2月3日の引きこもり

 21(0 → 21)猫はコタツで丸くなる ――アメリカのともだち――

 21(0 → 21)あなたと私の HAPPY NEW YEAR

 14(36 → 50)猫の幼女とプラネタリウム

 12(44 → 56)ゾンビ vs 生存者 ――おそらく俺が最後の一人――

 12(14 → 26)黒ずんだ乳首をピンク色に戻したい

 11(0 → 11)私の魔王軍は53万です

 11(0 → 11)風が吹けば傘屋が儲かる

 10(11 → 21)猫の子育て

 10(0 → 10)片眼の死角

 8(31 → 39)長い渡り廊下で

 8(20 → 28)69の星

 8(0 → 8)二色の手袋の思い出

 7(0 → 7)人事と人妻

 6(31 → 37)われは転生者

 6(24 → 30)怖い女と手ごわい男

 5(12 → 17)異世界で作ってみようオートクレーブ

 5(10 → 15)働け、魔女モンスター!

 5(0 → 5)「あたしスターさん。今あなたのところに来たわ」

 3(21 → 24)「俺の自慢のファイナルブレーキが!」

 3(21 → 24)大統領のファイナルブレーキ

 3(14 → 17)現代むかしばなし「メロン太郎さん」

 3(14 → 17)ダッチワイフ殺人事件

 3(14 → 17)たまごの中から

 3(13 → 16)俺と煙草と少女と布団

 3(11 → 14)あの日、僕が出会った妖怪は……

 3(10 → 13)釣った魚に餌はやらない

 3(8 → 11)俺の猿夢

 2(28 → 30)俺のケーキはそこにある

 2(16 → 18)ブラックホールフォーエバー! スターダストエモーション!

 2(7 → 9)「俺の素人作家としてのファイナルブレーキが!」――ある素人作家の恐怖体験――

 0(37 → 37)ハッピーエンドは嫌いだから

 0(27 → 27)ナンパ男と黒衣の女

 0(23 → 23)鶴と亀が滑った

 0(16 → 16)ささやかな倦怠期

 0(13 → 13)川で魚と戯れる

 0(12 → 12)ゆとり女神

 0(12 → 12)6月6日

 0(9 → 9)梅雨だから

 0(8 → 8)もしも俺が猿だったら。

 0(7 → 7)剣と魔法の異世界へGO!

 0(7 → 7)人は死んだらどこへ行く ――永遠の金縛り――

 0(6 → 6)廃墟探訪

 0(5 → 5)ホッちゃんを守れ!

 0(3 → 3)不幸の子犬

 -1(10 → 9)竹屋の渡しに魅せられて


 読者選考ランキングは星の数だけでなくフォローなども影響するのでしょうが、計算式がわからない(それぞれの重要性の傾斜がわからない)ので、とりあえず星だけで考えるとします。

 さて。

 ザッと見ていただいたらわかると思うのですが、上の方はBが0のものが多いですね。カクヨムコン開始時には星が入っていなかった、というより、カクヨムコン期間中に投稿した作品たちです。

 例えば、上から9番目の『猫の幼女とプラネタリウム』や10番目の『ゾンビ vs 生存者 ――おそらく俺が最後の一人――』は、Cつまり読者選考期間終了時の星の数は多くても、カクヨムコン前にいただいた割合が大きいので、カクヨムコン期間のランキングとしては、それほど上になりません。

 ということは、当たり前ですが、カクヨムコン開始前に投稿するよりも始まってから投稿する方が有利なのでしょう。本当に『当たり前』な話ですけど。


 続いて、本題です。

 もしも「読者選考によるランキングは参考に留めるだけで、カクヨム編集部が読んで一次選考をしている」というのが建前であって、実際は読者選考の順位だけ見て決めているのだとしたら。

 このリストの上から二つが、中間選考に通過しているはずですよね。

 しかし。

 実際に通過したのは、1番上の『黒いクリスマスケーキ』と4番目(同率3位)の『ある朝トイレに入ったら便器がきれいに消えていた』。『ある朝トイレに入ったら便器がきれいに消えていた』と同数の『はじめてのミスコン』や、少しだけ多い『スーパーが花屋に化けた』は落選しています。

 ここだけ見ると「やはり読者選考によるランキングは参考に過ぎず、きちんと読んで審査してくださったのだ!」と思えますが……。

 ここで、もう一つ考慮すべき点。

 長編の方の通過ラインは、応募部門によって違う。激戦区では通過に必要な星の数も跳ね上がる。……みたいな話を、どこかで見た気がします。各部門で上から何割、みたいに通過させるならば、確かに部門によって通過ラインは異なってくるのでしょうね。

 ならば。

 もしかすると、短編でも部門によって「多い」とみなされる星の数は異なるのではないでしょうか?

 上記の51作品、応募した部門別に分けて並べてみます。やはり、それぞれの部門で「読者選考期間に得られた星の数」が多い順で。


 異世界ファンタジー部門

 11(0 → 11)私の魔王軍は53万です

 6(31 → 37)われは転生者

 5(12 → 17)異世界で作ってみようオートクレーブ

 5(10 → 15)働け、魔女モンスター!

 3(21 → 24)「俺の自慢のファイナルブレーキが!」

 0(12 → 12)ゆとり女神

 0(7 → 7)剣と魔法の異世界へGO!

 0(7 → 7)人は死んだらどこへ行く ――永遠の金縛り――


 現代ファンタジー部門

 21(0 → 21)2月3日の引きこもり

 12(14 → 26)黒ずんだ乳首をピンク色に戻したい

 11(0 → 11)風が吹けば傘屋が儲かる

 3(14 → 17)現代むかしばなし「メロン太郎さん」

 3(11 → 14)あの日、僕が出会った妖怪は……

 0(13 → 13)川で魚と戯れる


 キャラクター文芸部門

 41(0 → 41)黒いクリスマスケーキ [中間選考通過]

 28(0 → 28)スーパーが花屋に化けた

 27(0 → 27)はじめてのミスコン

 21(0 → 21)猫はコタツで丸くなる ――アメリカのともだち――

 21(0 → 21)あなたと私の HAPPY NEW YEAR

 14(36 → 50)猫の幼女とプラネタリウム

 12(44 → 56)ゾンビ vs 生存者 ――おそらく俺が最後の一人――

 10(11 → 21)猫の子育て

 10(0 → 10)片眼の死角

 8(31 → 39)長い渡り廊下で

 8(0 → 8)二色の手袋の思い出

 6(24 → 30)怖い女と手ごわい男

 5(0 → 5)「あたしスターさん。今あなたのところに来たわ」

 3(14 → 17)ダッチワイフ殺人事件

 3(14 → 17)たまごの中から

 3(13 → 16)俺と煙草と少女と布団

 3(8 → 11)俺の猿夢

 2(28 → 30)俺のケーキはそこにある

 2(7 → 9)「俺の素人作家としてのファイナルブレーキが!」――ある素人作家の恐怖体験――

 0(27 → 27)ナンパ男と黒衣の女

 0(23 → 23)鶴と亀が滑った

 0(12 → 12)6月6日

 0(6 → 6)廃墟探訪

 0(5 → 5)ホッちゃんを守れ!

 0(3 → 3)不幸の子犬

 -1(10 → 9)竹屋の渡しに魅せられて


 恋愛部門

 8(20 → 28)69の星

 7(0 → 7)人事と人妻

 0(16 → 16)ささやかな倦怠期

 0(9 → 9)梅雨だから


 ラブコメ部門

 3(10 → 13)釣った魚に餌はやらない

 2(16 → 18)ブラックホールフォーエバー! スターダストエモーション!

 0(37 → 37)ハッピーエンドは嫌いだから

 0(8 → 8)もしも俺が猿だったら。


 SF・ゲーム部門

 27(0 → 27)ある朝トイレに入ったら便器がきれいに消えていた [中間選考通過]

 25(3 → 28)乳首なき世に生まれつく

 3(21 → 24)大統領のファイナルブレーキ


 あら不思議。いや、むしろ当然なのでしょうか?

 中間選考に通過した2作品は、それぞれの部門では(私が応募した作品の中では)トップでした。

 これが偶然ではなく、必然だとしたら……。

 応募要項の『読者選考によるランキングを参考に、カクヨム編集部による一次選考を行います』というのは、実際にはほとんどランキング準拠、あるいは、それに近い(かなりランキングを重視している)ということになりますね。


 結論としては、あまり嬉しくない方向性なのですが。

 それはそれで、データとしては面白い数字が出てきたな、と思います。

 私が通過できなかった異世界ファンタジー部門、現代ファンタジー部門、恋愛部門、ラブコメ部門。それぞれ最高で★11、★21、★8、★3ですから、まあ落選して当然であり、データとしての面白味はないでしょう。

 しかし、私が通過できたキャラクター文芸部門と、SF・ゲーム部門。それぞれ「★41あれば通過できるが★28では足りない」、「★27あれば通過できるが★25では足りない」と考えられます。これは今年の「カクヨムWeb小説短編賞2020」でも、中間選考通過ラインの目安になるのではないでしょうか。

 ……ただし応募部門が再編された分、そのまま当てはめて考えられないのは残念ですが。

   

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