R18? R15?
今回は、前々から少し不思議に思っていたことや、カクヨムコンの時期に考えたことなどを含めて書いていこうと思います。
どこまでの性描写が許されるか、という問題です。
まず最初に。
カクヨムで皆様の作品をチラチラ見ていくと、時々、キーワードや作品紹介欄などでR18を謳い文句にしているものを目にすることがありました。
近況ノートで「R18だからきちんとセルフレイティング『性描写有り』にチェックを入れておいたのに、運営から注意を受けた」という記事を見たこともあります。
そんな時、私は不思議に思ったのでした。
「あれ? カクヨムで許されているのはR15までであり、そもそもR18は駄目なんじゃないの?」
と。
改めて、ガイドラインを見てみましょう。
まず『表現についてご留意いただきたいこと』の項目で列挙されている中には「表現・描写などにより著しく性欲を刺激するもの」とありますが……。
それよりも、その前にある、包括的な文章の方が重要でしょうね。引用してみます。
>表現の自由を制限するものではありませんが、青少年を含む利用者が気持ちよく利用できるように以下の表現についてはそれ自体が作品の目的(テーマ)ではなく、物語上の必要な要素として必要最低限の描写となるよう配慮をお願いいたします。
ポイントは『それ自体が作品の目的(テーマ)ではなく』『物語上の必要な要素として』『必要最低限の描写となるよう配慮』あたりでしょうか。性描写を記述する際は、この三点を踏まえた上で書いていけば良いのですね。
そして、セルフレイティングに関するガイドライン。
>設定基準は「R15」相当といたします。
>レイティング表示を行ったとしても、過剰な表現や、表現や描写の割合が大きいものについては前述の通り制限を受けます。
さあ、問題はここです。この『設定基準』という言葉。
改めて辞書で『基準』という言葉を調べると『物差し』と書かれていますから、私は、
「R15に相当する作品には、レイティング表示が必要」
という意味に理解してきました。R15の時点でレイティング表示をしないと投稿できないくらいであり、それより上であるR18作品なんて投稿してはならない、という解釈です。
しかし。
辞書的な定義とは別に、私は『基準』という言葉に、上限とか下限とかのニュアンスを感じてしまうのですよね。『線引き』とか『ライン』とかの言葉に置換できるような。
そのニュアンスで行くと、少々強引かもしれませんが、
「レイティングを表示するかしないか、のボーダーラインがR15。R15まではレイティング表示をしなくていいから、レイティング表示をするのはR18作品」
と考える方々が出てきても不思議ではないのか、と思うようになりました。
……と、そんな理由でR18作品が投稿されるのだとしても。
投稿した作者自身の定義としては『R18』であっても、カクヨムのガイドラインを守っている以上は、実質的にはR15なのでしょうね。なにしろ『それ自体が作品の目的(テーマ)ではない』『物語上の必要な要素』『必要最低限の描写』ですから、どう考えても、官能小説のようなものには成り得ません。
R18かR15か、というのは、言葉尻を捉えた屁理屈のような話に過ぎないのでしょう。ガイドラインを守っている限りは。
さて。
以上のような話とは別に。
カクヨムコンの時期に、ふと思ったことがあります。
それは、同じR15であっても、その許される範囲はサイトによって大きく違う、ということです。
なぜ『カクヨムコンの時期』かというと……。
私は「小説家になろう」にも登録しており、通常の読み書きは専らカクヨムで
ただし「小説家になろう」のコンテスト優先といっても、日頃カクヨムをメインで使っているため「カクヨムには投稿したけれど、まだ『小説家になろう』には転載していない」という作品が大量にありました。なのでカクヨムコンの時期は、それまでカクヨムに投稿してきた大量の作品を、せっせと「小説家になろう」に転載する時期でもありました。
ただし、自主企画経由で生まれた作品の中には「これはカクヨム限定にするべき!」というものも結構あるので、流れ作業で全て転載するわけではありません。
さらに、転載する作品を選別していく際には、ガイドラインも重要になってきます。例えば性描写の問題ひとつとっても、何が禁止で何が許されているのか、サイトによって異なるからです。
特に「小説家になろう」では、R18作品は系列の別サイトに投稿する仕様になっており、かなり具体的な注意が書かれていました。少し引用してみます。
まず、わざわざ、
>一般書籍等で見られる描写であっても、小説家になろうではR18相当と判断するものもあります。
という前置きが用意されていて……。
>基本的に以下の項目にあてはまるものはR18相当であるとの判断を行なっております。
>■性交・性的接触等の描写
>■性的感情を刺激する行為の直接的描写
>■具体的な性器の描写
>■R18相当の画像が掲載されている
>■大衆向け辞典(広辞苑等)に掲載されていないアダルト用語が使用された作品
>■残酷な行為についての必要以上に詳細な描写
いくつかは「そりゃそうだろ」という感じですが、「えっ、それもR18相当になるの?」と思う項目もありました。
個人的に一番厳しく感じたのが『大衆向け辞典(広辞苑等)に掲載されていないアダルト用語が使用された作品』という点。他は『描写』なのにこれは『使用』という表現になっていますから、場面描写ではなく登場人物たちの軽い会話の中であっても、それっぽい単語が出てきたらもうR18だから系列の別サイトへ行け、ということでしょうか。これを厳密に適用すると、カクヨムで掲載されているR15作品なんて、大半がアウトになってしまうような気がします。
二番目の『性的感情を刺激する行為』というのも、やはり厳しめですね。カクヨムでは、レイティング表示をした上でR15として、濃厚なイチャイチャ――もちろん官能小説レベルには程遠い――を描いた小説、結構ありますよね? でも、これも「小説家になろう」では、R18扱いでアウトです。
要するに、
「カクヨムではR15扱いだけど、『小説家になろう』ではR18扱いになってしまう、という小説がたくさんある!」
と私は感じたのです。
普通に「小説を読んでもらいたい」という理由で投稿するのであれば、言われた通りに系列のR18サイトへ行けば良いのですが、私の場合は違いました。読者を増やすためではなく、「ネット小説大賞」に応募するための転載です。R18扱いだと応募できないので、意味がありません。
というわけで。
カクヨムコンの時期になって初めて、「同じ作品が、サイトによってR15になったりR18になったりする」という事実を、強く認識したのでした。
そして、カクヨムコンが終わり。
またコンテストの時期になったら「小説家になろう」にたくさん転載しよう。いや、溜めると大変だから、今のうちから少しずつ転載しておこうか。そういえば去年は、5月の連休に少しまとめて転載したような気が……。
そんなことを考えたのが、5月に入ったくらいの時でした。
一応、前々から「次回のネット小説大賞の時期に転載する作品リスト」というのを用意していたのですが。
2月の頭に「ネット小説大賞」の応募期間が終わり、それ以降にカクヨムに投稿した作品。その中から転載するもの、しないものを取捨選択して、14作品が転載予定になっていました。選び出した14作品とは別に、注意書きとして「これは転載やめておこう」という作品も記されています。
さらに。
カクヨムに投稿したものとは別に、3月に登録したエブリスタ。そちらからの転載予定として、16作品がリストにありました。
約3ヶ月で合計30作品と考えると……。
秋のコンテストの時期までには、まだまだ増えそうです。やはり溜めてしまうと大変です。今から少しずつ、転載しましょう。
とりあえず。
KACイベントが始まった辺りから執筆数が加速していたので、それ以前の作品だけ、5月の連休のうちに転載することにしました。
リストにあるのは、わずか3作品。これならば、簡単そうです。
しかし、その先の予定として、改めてリストを見直すと。
「何故これが転載予定に入っているのだろう?」
というR15作品もありました。『良い子の皆さんは真似しないように』です。
『良い子の皆さんは真似しないように』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894532466
男女間のやりとりではなく一人で遊んでいるだけの『その日彼女は童貞だった』は、「転載しちゃダメ」欄に書いてあります。
『その日彼女は童貞だった』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894108619
「逆じゃないかな? 後々『良い子の皆さんは真似しないように』を転載するくらいなら、今回『その日彼女は童貞だった』を転載できそうな気がする」
と、私は考え直してしまいました。
なお、この時の私は、上記のガイドラインを再確認していません。ただ、カクヨムコンの時期――正確には「ネット小説大賞」の時期――の「カクヨムより厳しくて、カクヨムではR15でも『小説家になろう』ではR18に成り得る」という印象から、ざっくりと判断しています。
結局『その日彼女は童貞だった』も含めて4作品を「小説家になろう」に転載したのが5月5日。
それから10日ほどが何もなく経過して、昨日。
あちらの運営からメールをいただきました。
「R18相当なので改稿あるいは削除してください」
という注意です。
この手のメールの存在、噂には聞いていましたが、実際にいただいたのは初めてでした。私のような低PV作品でも、きっちり送られてくるのですね。
初犯だからでしょうか。『もし5月28日を経過しても対応が見られない場合は、当該小説の削除を行ないます』というように、2週間の猶予が与えられていました。もちろん私は、その日のうちに削除しましたけど。
通知の最後には『適切な年齢制限が行なわれない小説投稿が繰り返された場合ユーザID削除等のより厳しい対応を行なうこととなりますので、ご注意ください』という記述もありましたから、再犯だと大変なのかもしれません。怖い、怖い。
こうした経緯で。
改めて「あちらはカクヨムより厳しいなあ」と感じて、こんなエッセイを書く気になったわけです。
そして、エッセイ執筆のため、上述のように「小説家になろう」のガイドラインを再確認すると……。
ああ、当然ですね。
男女間のイチャイチャはありませんが、それでも『その日彼女は童貞だった』は「性的感情を刺激する行為の直接的描写」に該当しそうです。注意を受けるのも納得でした。
「そういえば、もともと転載予定リストの中では、転載しちゃダメ欄に入っていた作品だからなあ」
と、思い出すと同時に。
自分自身のリストの中で、何故か転載予定に含まれていた『良い子の皆さんは真似しないように』は「転載しちゃダメ」欄に移動させたのでした。これもおそらく、あちらではR18ですよね。
というわけで。
投稿サイトによってR15とかR18とかの基準は違う、というのが今回のエッセイの主旨でした。
カクヨムはあまり厳しくないから大丈夫、と油断して、私はR15作品を書いていますが……。
本当に大丈夫ですかね?
結局カクヨムでも同様の注意を受けた、などというオチが来ませんように。
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