リケジョとブケダン
4月。 中学3年生になった。クラス替えがあり、みんなちょっと不安な面持ちで席に着いていた。
「おはようございます」
先生が入ってきた。女の先生だ。
「みなさん、ご存知かと思いますが・・・今からテストをします。コースを決める大事なテストなので頑張って下さい」
「はーい」
今年の2月に施行された法律のせいである。投票したのは18歳以上なので、ほとんどの人は関係ないのだ。・・・理不尽すぎる。
文系、理系の筆記が行われ、後は結果を待つだけになった。体育・芸術は自分で決められるらしいので、テストはなかった。
今日は金曜日だ。次学校に行くときに結果は出るだろう。
・・・私の結果なんてもう見えているけど。
「よ、理花」
学校から帰っていると、後ろから声を掛けられた。誰かはすぐに分かった。
「宗四郎。・・・なに?」
彼は幼なじみで、近所に住んでいる寺田宗四郎だ。
「テスト、どうだった?」
「・・・からかいに来たの?」
「いや、俺もだし。ってかさ、あの法律、マジで意味わからんよな。俺たちの本当にやりたいことができないだろ」
「うん」
「・・・まだ、弁護士になりたいのか?」
「うん。あんたはまだ、医者になりたいの?」
「・・・どうだろ。やりたくても出来ないのが今の世の中だろ?現実は難しいよな」
「そうかな」
・・・私の考え方が古いのだろうか。でも私は、やりたいことをやりたい。
月曜日。憂鬱である。
「みなさん、テストの結果が返って来ました。しっかり見直しして、次に繋げましょう」
「はーい」
テストが返ってきた。あーあ。
理系→90%
文系→35%
・・・やっぱり。
そう、私の成績は、完璧な『リケジョ』なのである。
そして宗太郎は・・・
「俺、やっぱ諦めようかな・・・」
「どれどれ」
「や、やめろー!」
「え、だめ?」
「べ、別にいいけど」
「じゃあ見るわ・・・わー」
文系→93%
理系→26%
うわー。私以上だ。
・・・言うまでもないが、彼の成績は『ブケダン』である。
「・・・今日は勉強会だな」
「うん」
テストでどちらかが4割以下を取ったら、二人で勉強会を行うことにしている。ちなみにやらなかったことは一度もない。
宗四郎の家にて。
「何でこんなの覚えられるの?」
「これは、いいはこ作ろう鎌倉幕府、こっちは、なんと大きな平城京って覚えるといいぜ」
「へえ・・・それすらも覚えられないかも」
「・・・がんば」
私は記憶力が絶望的である。こんなんじゃ弁護士なんて無理かな・・・
「これはどうやって解くんだ?」
「・・・解の公式知ってる?」
「ああ。公式は覚えられるんだけど、使えないんだよ」
「・・・がんば」
そうこうしているうちに、時間は過ぎていった。
「お邪魔しました。・・・多分また来ます」
「ああ。じゃあな」
私たちはまだ知らなかった。この法律の残酷さを。
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