さるぼぼ

友人が岐阜に旅行に行ったらしくお土産にさるぼぼを貰った。


さるぼぼって言うのは岐阜で昔から作られてる人形で色によって御利益が違ったりする。


僕が貰ったのは厄除けや魔除けの効果がある黒いさるぼぼを貰った。

そして免許を取り立てだった僕は御守りの意味も込めて車のバックミラーに付けていた。


ある日の仕事終わりの帰り道、車を走らせているとさるぼぼのストラップ部分に付いている鈴が「チリン」と鳴った。


そして「左へお寄り下さい。」とナビが言う。


最初はナビの故障かと思い無視していたらもう一度「左へお寄り下さい。」とナビが言ってきた。


今は自宅へ帰る道中なのでナビをルート設定している訳ではない。

だからルート変更のナビが出るはずもないのに左に寄れと指示してくる。


「故障かな?」なんて思いながら更に走り続けていたらスマホが鳴った。


友人からだ。

脇に寄りポケットからスマホを取り出し着信に出る。


「ザ、ザー...ザザ...」


やたらとノイズが入る。


「もしもし、どうした?」


「ザザ...ひだ...ザー...くだ...い...」


「もしも〜し、ノイズが凄くて聴こえずらいんだけど。」


「ツーツーツー...」


電波が悪かったのか切れてしまった。


こちらから掛け直そうとすると後ろから猛スピードで車が駆け抜けて行った。


そしてそのまま数十メートル先でその車がガードレールに激突した。


僕は呆気に取られながらも我に返り友人に掛け直そうしていたのを110番に変えた。


暫くして警察と救急車が来る。


その後駆けつけた警察に事情を説明して僕は家路に着いた。


後日ニュースで先日の事故の事が取り上げられていた。


特殊清掃業の車だったらしく不思議な事に運転席には誰もおらず助手席だけに人が乗っていたらしい。


その助手席に乗っていた人は一命を取り留めたらしく僕は安堵した。


そしてふと気付く。

もしあの時電話に出るために路肩に車を寄せていなかったら後ろから猛スピードで激突されていただろうということを。


ゾッとすると同時に友人から貰ったさるぼぼの御利益だったかもしれないと思う事にした。


奇しくもあの時電話を掛けてきた友人というのがそのさるぼぼをくれた張本人だったからだ。


まぁ一番ゾッとしたのはその事を友人に伝えたらあの日僕には電話してなかった事だけれど...

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