踏切の影
世間には何故か良く事故が多発するっていう俗に言う【魔の踏切】ってのがあると思うんだけど、僕が何時も通勤で使ってる道にもその魔の踏切があってそこでは夕暮れ時に通ると事故に逢うっていう噂がある。
実際夕方の時間に事故が多いんだけど自分では見たこと無かったからそんなに関心も無かった。
そして僕は今正にその踏切の前に居る。
丁度夕暮れ時。
周りには誰も居なく僕一人。
警報機が鳴り始める。
遮断捍が降り僕は電車が通過するのを待っていた。
ふと、線路の先を見つめるとそこに影が居た。
人の形をした影がウヨウヨと蠢いている。
まるで手招きをしているみたいに。
その影に気を取られていると後ろから中学生位の女の子が走ってきて遮断捍を潜り抜け踏切に侵入していった。
呆気に取られていたら、「ファーン!」と電車の警笛が鳴り響いた。
「危ない!」
咄嗟にそう叫びながら僕は女の子の方へ走ろうとしたが足が動かない。
必死に足を動かそうとするがまるで地面に打ち付けられたかのように微動だにせずその間にも電車は近付いてくる。
「動け、動け!」
そう言ってる最中僕の目の前を電車が通過した。
鈍い音と共に女の子の体は吹き飛び、けたたましいブレーキ音が周囲に鳴り響いた。
「また助けられなかった...」
そう思うと同時に「また?」という疑問が頭を過ぎる。
僕が事故を見たのは初めての筈なのに何故「また」と思ったのか。
そんな事を考えながらまた線路の先を見つめると影はまだそこに居た。
そしてその影は徐々に僕の方へと近付いてくる。
僕は恐ろしくなりその場を離れようとするが相変わらず足が動かない。
影は僕の目の前まで来た。
そして、
「マタ、タスケラレナカッタネ〜」
と薄ら笑いを浮かべ言った。
そして全て思い出す。
僕は前にも同じような光景を目の当たりにしていた事を。
と言うよりも同じ様に警報機を無視して線路に侵入した小さい子供を助けようとし、その子供と共に自分も電車に撥ねられ死んでいた事を。
その時もこの影が線路の中に居て子供に手招きをしていたのだ。
今回は死んで地縛霊となってしまったが故にここから離れられず助けに行く事すら出来なかった。
絶望する僕に影は、
「イタダキマス」
そう言い僕を取り込んだ。
取り込まれていく最中、影の中に沢山の人が見えた。
ああやって線路の中に呼び込んで死んだ人間の霊魂を吸収してきたのか...
僕の意識は徐々に薄れて行った。
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