3
「おはよう!」
翌朝。布団を頭まで被って寝ていたベルンを起こして、クオたちは食堂のある「本館」に向かった。
暖かな朝陽が真っ白に照らす神殿。新緑の木々たちや、「本館」へと続く廊下から見える中庭の芝生も、綺麗な緑色に光っていた。
「本館」のロビーには、すでに他の子どもたちがいて、ターラを囲って輪を作っていた。
「おはようございます!」
「おはようございます。クオ」
それかれベルンも、とターラはクオの後ろであくびをするベルンにむかって、優しく微笑んだ。
「さぁ、みなさん。お天気も良いですし、ベルンの歓迎会もかねて、朝食は中庭でしましょう」
ターラのその提案に、クオをふくめた子どもたちは、大いに喜んだ。
◯
澄みわたる朝空の下は、ちょっぴり肌寒いけれど、足元の芝生からは暖かな熱が感じられて心地よい。
真っ白な塀で囲まれた中庭。無垢材のテーブルに子どもたちが並んで座り、廊下からターラと当番の子どもたちが朝食を運んでくる。
メニューはヤングコーンとキャベツが入ったトマトスープに、ブロッコリーのサラダとスライスしたバケット。新鮮な色のイチゴジャムの瓶がテーブルの真ん中に置かれ、各々には細切れのバターが渡される。
クオとベルンは並んで座っていた。
目の前の料理を食い入るようにして見つめるベルンに向かって、「いただきますをしてからだよ」とクオは笑って言った。
最後にターラがひとりひとりのガラスコップにミルクを入れ終えると、手を合わせた。
「いただきます」
「いただきまーす!」
それを合図に、子どもたちは一気にご飯へ手を伸ばす。まわりに圧倒されつつ、ベルンもバケットを一口かじった後、トマトスープを一気にかきこんだ。
空腹は無限のスパイスだ。ベルンは、かつて自分が過ごした過酷な環境のことを思い出していた。
心地よい風がそよぐ。
しばらくして、笑い声で包まれた食卓にターラが呼び掛けた。
「ベルンのお話を聞きましょう」
突然の指名にさっぱりなベルン。しかし、となりのクオや他の子どもたちも、行儀よくニコニコと姿勢を正した。
「無理せず、ゆっくりで良いからね」
クオが小声で言った。
そのおかげか、ベルンはキッと表情を固くしてから、ゆっくりと語り始めた。
ベルンの生まれは、戦争のために大国によって創られた人工島だった。
その名の通り、島は
「そこで俺は生まれた――ううん、造られた」
その島の子供たちには親はいない。今の時代ではすでに大半となった人工授精で生産され、彼もそのうちのひとりだった。目的はただひとつ。立派な戦士に育て上げるため。
生まれたときからカプセルに入れられ、言語、数学、歴史、それから忠誠心も植え付けられる。カプセルから出ると、戦いに必要な体術、知識を訓練される。もちろんロボットたちに。
「俺も、あと半月ほどでカプセルから羽化する頃だった」
クーデターが起きた。
ベルンはどうしてか、ターラを睨み付けるようにしてそう言い放った。
人工のその島にやってきた敵国の兵士たち。システムがシャットダウンされ、カプセルに入った子どもたちは解放された。
コンピューターによって教えらたことが「すべて」だった。
カプセルから強制的に解放されたベルンたちは、侵略してきた連中に保護されたのだ。
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