第6話 帰路捜索
「こ!…こんにちは。」
「どうぞお入りください~」
「は、はい。」
昔おじいちゃんが使っていた席に座ると、玄関が見えないので誰が来たのか分からなかったが、ようやく全貌が明らかになった。
髪型は昔ながらのいわゆるおかっぱで、頭に小さなリボンをつけている。緑色のサスペンダー付きのスカートで、少しタイムスリップしたような感覚だった。最近こういうのがまた流行っているのか?まあ、むしろ清楚な感じが伝わって嫌いじゃないが。
「あ!…あの。」
「あ、お名前聞いてなかったね。なんて言うの?」
「ああ。
「すみれちゃんかあ。良い名前だね。」
「あ、ありがとうございます。」
「それで、今日はどうしたの?」
「あ、あの。お母さんと…は、はぐれちゃって。おうちに帰れ…ない…です。」
「そっかあ。じゃあ、お姉さんたちと一緒にお母さんを探そっか?」
「いや、もしはぐれたら、あ、あたしだけでも家に帰れって言ってたから。家に帰りたい。」
「OK!分かったぜ!じゃあ、お兄ちゃんと一緒に帰るか!」
「お兄ちゃんは心配なので、お姉ちゃんも一緒に行きます。」
俺ってそんなに信用無いの?
「じゃあ、ちょっと準備してくるから、ちょっと待っててね。」
「わ、分かりました。」
部屋に戻って支度をする。ちゃんと外に出てもいい格好にだ。
「あの~よみかず君ちょっといいですか?」
「うん?どうしたの?」
「あの、すみれちゃんって子。怪しくないですか?」
「怪しい?」
「というか、妖しいというか。妖怪じみているんですよね。」
「そうかな?ただの、小学生に見えたけど。」
「一人にさせるのってまずかったんじゃないですか?」
「大丈夫だよ、何が起きるっていうの?」
「この世界には、神様がいるんです。だったら、妖怪くらいいても不思議ではありません。」
「いやいや、神様なんているわけないって。確かに15年ぶりに会えたのは、奇跡かもしれないけど。」
「神様は、いるんです。」
「あーそう?」
「はい。」
まっすぐした瞳に納得させられる。
「じゃあ、いるのかな。」
「はい。」
「じゃあ、リビングですみれちゃん待ってるし、行くよ?」
「はい。」
リビングへ向かう足取りは、今までよりも重く、何やら本当にただ者じゃない何かを感じているようだった。否、ただ弥生さんにそそのかされただけと言えばそうだろう。気を取り直して、すみれちゃんの元へ進む。
「じゃあ、行こうか!すみれちゃん!」
「は!…はい!」
「元気があっていいね。」
「そうですね。」
玄関を出て、まず道路に出る。ここの車の通りは少なく、車道に飛び出してもまず轢かれない。
「だからって子供みたいに飛び出したら、少し引きます。」
「飛び出さねえよ!」
「すみれちゃんも、こんな男の人に惹かれちゃだめだからね?」
「だから、飛び出さねえって!」
「…ふふふ。」
「あ!すみれちゃんやっと笑った~」
「わ…私だって、ちゃんと笑えます。」
「笑顔の方がいいよ、すごくかわいい。」
「べ、別に。そんな褒め方されても…」
「まあいいや、で、どっちに進めばいいの?って痛い!痛い!足踏まないで弥生さん!」
「まあいいやって何ですか?」
目が笑っていなかった。右手には握りこぶしが、左手には日傘が、俺の鳩尾をめがけて今と言わんばかりに構えられていた。
「え、?」
「まず一つ、すみれちゃんに失礼です。まあいいやってそんな感じでほめていたんですか⁈じゃあ、もしかして私に言っていたのもそうなんじゃないかってなります。」
「すみません。」
「謝罪は早いです。そして二つ目。私を差し置いて、他の子まで手を出そうとしないでください。さすがに傷つきます。私の都合とはいえ。」
「本当に申し訳ない。すみれちゃんもごめんな。」
「私…は別に。大丈夫ですよ。そんなに気にしないで。」
「はあ、分かったならいいです。」
「た、確かこのコンビニを右に曲がると思う。」
話題を変えてくれた。気の利く女の子だ。
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