本書は「やよいちゃん」の書いた『風俗大好きお姉さん』という同人誌である。文フリで発売し、完売。私は事前に取り置きをお願いしていたので入手することができた。現在、第二版を鋭意制作中とのことである。

物語というか全て実話で高校二年生から現在にいたるまでの5年間を赤裸々に描いている。中心となるのは「風俗」。好奇心にかられて高校二年生で飛び込んだ風俗の世界。当然、違法営業。初めてだらけの体験。でも妙に性に合ってそのままずっと働くことになる。

「『私今本当に風俗嬢なんだ』とか、何か悪巧みを思いついたイタズラ好きの少年のような気持ちでこれからの風俗のお仕事を考えていました」（Ｐ11）

年代的には高校生活がメインにはずなのに、毎日が風俗漬けで時に薬に溺れ、閉鎖病棟に入ったりもする。言わば『人間仮免許　青春版』とでもいうような内容だ。

私たちは多様な価値感と生活を持った人間が生きる社会に暮らしてるが、実際に文化圏の異なる人間と触れあうことはそんなに多くない。日常の風景の中に確かに存在しているのに、決して混ざり合うことのない人々がいる。同じ中学校、高校にもそういう相手は必ず何人か存在する。作者は確実にふつうに生きている私たちの景色の中にいるけど、触れることのなかったタイプの人だ。その人の視線で世界がどのように見えるかを追体験することができた。

でも風俗という特殊な世界を経ているけど、作者が求めていたのは「何者かになる」ことで、それは彷徨の果てに実現できた（のだと思う）。

好奇心に殺されなかった猫の物語は楽しく、驚きに満ちていた。

なお、本書を購入したい方はやよいちゃんのツイッターアカウント（ @gokkundekitane ）に声をかけて頼むと答えてくれるはず。