第111話 必殺!超新星爆発剣

 天界の更に上空に浮かぶ魔王城では神を超えた二人が今、激突しようとしていた。



ゼニス「デスタリオス、貴様とは古い付き合いだ。苦しみを与えず一瞬で消してやろう」



 ゼニスは右手に光の魔力を集中し、左手には全く正反対の力である闇の魔力を集めた。そして、二つの魔力を一つに集約すると小さな魔力の塊になった。



ゼニス「これで最後だ、混沌砲カオスバーストッッ!!!」



 四方八方に飛び散る魔力がデスタに襲いかかる。部屋中の壁や柱が一瞬にして砕け散り、避ける事が不可能なほどの圧倒的数だった。勝利を確信したゼニスは笑みを浮かべる。

 しかし、フェインの力を受け継いだデスタの前では全くの無力だった。デスタが剣を一振りすると、そこから放たれた勇者の力が全ての魔力を打ち消した。



ゼニス「ば、馬鹿なッ……!?神を超えた我の攻撃を打ち消しただと」


デスタ「どうやら、力の差が開きすぎてしまったらしいな」


ゼニス「ふざけるな!我が敗北するなどあり得るはずがないッ!!!」



 ゼニスは恐怖していた、揺らぐ事のなかった力関係が崩れ自分より強い存在が現れたことに。諦めずにゼニスはあらゆる手段を使って攻撃したが、デスタには効かなかった。

 1万本もの矢を放てばその全てを剣で弾かれ、地獄の業火を呼び出せば剣から放たれる突風で消し飛んだ。

 デスタの時間を超加速させ老化させようとしたが、フェインの魂に眠る女神の加護がそれを防いだ。

 、まさにゼニスは完全に詰んでいた。



デスタ「ふん、無駄な足掻きだ」


ゼニス「くッ……こんな所で我が野望が潰えるというのか」


デスタ「これ以上基様の戯言を聞くつもりはない!続きは地獄でやってるんだな」



 デスタはゼニスを高く蹴り上げた。天井を突き破り魔王城の外に吹き飛ばされるゼニス。その後を追いかけデスタも高くジャンプした。

 空中で体勢を整えたゼニスはデスタの追撃を身構えた。しかし、デスタが見当たらない。



ゼニス「奴はどこだ!どこに行った」



 辺りを見渡すゼニスを大きな影が覆う。恐る恐る影の元を見上げるゼニス。そこには魔王城と同等の大きさの剣の形をした魔力の塊を持ったデスタが居た。



デスタ「これで最後だああああああッ!!!」


ゼニス「よ、よせ……やめろおおおお!」


デスタ「超新星爆発剣ビックバンソードッ!!!」



 振り下ろされた特大の剣はゼニスを魔王城ごと断ち切った。凄まじい衝撃と轟音が天界中に広がり、魔王城は空中分解し粉々に砕け散った。

 その様子を見ていた魔王軍の残党も戦意を失い、逃げる者や降参する者が続々と現れ長い戦いに終わりが見えた。



デスタ「全て終わったぞ……フェイン、私達の勝ちだ」



 デスタは落下しながら全てが終わった脱力感に浸っていた。それを見ていたリュシオンがデスタを空中で回収すると、天界の宮殿で待つ仲間達の所へ運んだ。

 皆戦いで傷だらけだったが、デスタが現れる駆け足で集まってきた。



ピノ「姉御ッ!俺達ついにやったんだね、魔王倒したんだ」


カナ「すごいんじゃない私達、もしかして伝説として後世に語り継がれるかも」


ローズ「こんなに大きな戦いなんだし間違いなく記録に残るよ」


ラッシュ「ちっ、おいしいところを持ってかれちまったか」


クロウ「どうしたデスタ?なぜ黙っている」


リュシオン「そういえばフェインさんの姿が見えませんが……」



 デスタは魔王城であった出来事を全て仲間達に話した。魔王は滅びたが神も消えた事。フェイン、そしてバルという大切な仲間を失った事を。

 皆ショックを受けていた。泣き出す者、俯く者、黙る者、とても戦いに勝利した事を喜ぶ雰囲気ではなくなった。

 その時、宮殿の外から激しい爆音が鳴り響いてきた。外に出ると、今にも死にかけのゼニスがしぶとく立っていた。



ゼニス「デスタリオスうううううッ!!!」


ピノ「あれを喰らってまだ生きているのか……なんて執念だよ」


ゼニス「認めよう、我の負けだ……」


デスタ「今更降参する気か?」


ゼニス「いや、一ついい事を思いついたんだよ」


ラッシュ「そんな死にかけで何が出来るってんだよ!」


ゼニス「女神の力を使って時を超えるのさ、全ての現況であるフェインが成長する前まで」


リュシオン「だが、そんな事をしてもこの世界に影響はないはず」


ゼニス「無論知っているさ、こことは別の時間軸が出来る事はな。だが、この世界で我が敗北したとしても別世界の貴様らに待っているのは絶望だ」



 ゼニスは空中に円を作り出した。そして、円の中の時空が歪み別の世界が写っている。



ゼニス「この世界には平和は訪れた。喜べ、お前達の願いは叶ったんだぞ?ククク、神も大切な仲間も消えたみたいだがなあ!?」


デスタ「き…貴様ああああ!!!」



 デスタはゼニスに飛びかかった。だが、デスタの剣が届くのより速くゼニスは歪んでいる時空に飛び込んだ。

 その後を追いかけようとするデスタだったが、リュシオンが止めに入った。



リュシオン「待ってください!ここから先は過去の世界、元の世界に戻ってこれる保証はどこにもありませんよ」


デスタ「だが!奴は過去のフェインを始末するつもりなんだぞ?」


リュシオン「ゼニスも言っていましたが、過去を変えてもそれは別の時間軸。とどのつまり別世界です、こっちの世界には影響はありませんよ」


デスタ「はぁ……悪いな、例え別世界の話でも奴のピンチなんだ!見過ごす訳にはいかない」



 こうして、デスタはゼニスの後を追って過去の世界へと向かうのだった………………………

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