第109話 最終決戦!勇者対魔王
女神と魔王は突然現れた勇者を見つめていた。勇者の足元に転がる沢山の魔物の死体が彼の強さを物語っているからだ。数百、もしかすると千を超えているかもしれない異様な数の死体。
流石の魔王も視線を釘付けにして驚いた。しかし、すぐに冷静さを取り戻すと勇者に向けて先制の灼熱の魔法を放った。
灼熱の炎は荒波の如く激しく燃え盛り、勇者に襲い掛かった。魔王の魔力は膨大で、千の死体は一瞬にして消し炭になり、炎の波に囲まれた勇者は灼熱の中に姿を消した。
ゼニス「少しはやるようだが、その炎は魔界の業火……全てを焼き尽くす」
アリシア「そんな……あんな強い炎どうすれば……」
だが、勇者は二人の予想に反してあっさりと魔界の業火を突破した。炎の波を大きく斬り裂き、中から光を纏った剣を持った勇者が再び姿を現した。
ゼニス「魔界の業火を破っただと……それに、何だあの剣の光は」
フェイン「エンチャントホープ………俺の中にある勇者の力を剣に纏っているんだ」
ゼニス「フンっ……それがどうした?我の前ではそんなも」
ゼニスが喋り終わるより速くフェインの光の剣がゼニスの胴を斬った。そして、無敵であるはずのゼニスは再び痛みを覚えた。
ゼニス「何だと……我がまたもやダメージを受けただと!?」
フェイン「女神様!やっぱあんたの言ってた通りみたいだぜ」
ゼニス「どう言う事だ?」
アリシア「勇者の力の正体、それは私の加護を強く受けた人間のことなのよ」
フェイン「つまりお前を傷つける事が出来るのはこの世でたった二人!俺と女神様だけって事」
ゼニスは膝をつき乱れる呼吸を整えながら二人の話を聞いていた。揺らぐ事の無かった圧倒的な強さが崩れ始めている事にゼニスは焦った。
急ぎ女神の力を吸収しなければ、ゼニスの頭の中にはそれだけがあった。そのためには目の前にいる最後の強敵、勇者フェインを倒す事だった。
フェインは女神を部屋の隅にまで移動させるとゼニスの前に立った。そして、静かに目を閉じ深呼吸をした。
これまでの旅の記憶が走馬灯の様に一気に流れていく。
フェイン「(ここまで本当に長かった……後は奴に勝つだけだ)」
ゼニス「……勇者フェイン、我は我の野望のためお前を殺す。貴様も全力で来るがいい」
フェイン「ああ、決着をつけようぜ……魔王ゼニス!いざ勝負ッ!!!」
ゼニスは異次元から禍々しい邪気を放つ大剣を取り出すと、先手でフェインに斬りかかった。それを光の剣で弾き返すとフェインも果敢に攻める。
両者一歩も引かない激しい打ち合いが続く。二人の実力は五分と五分。どちらが勝ってもおかしくなかった。
ゼニス「ぐはッ!?我がここまで追い詰められるとは………」
フェイン「はぁ…はぁ……さ、流石にめちゃくちゃ強ぇな………」
二人が激闘を繰り広げている隙にアリシアは奪われた力を取り戻すため、吸収された力が封印されている水晶をこっそり持ち出すとそれを叩き壊した。
力が戻ってくるのが分かる。こうして、アリシアは奪われた力を取り戻したのだった。
アリシア「ここからは私も援護しますよ!」
フェイン「どうやら希望の風はこちらに吹いてきたみたいだぜ、魔王!」
ゼニス「クックック、愚か者め!本当の絶望というのを教えてやる」
ゼニスは剣を手放すと腰を深く落とし力を溜め始めた。空気が震えゼニスの体に力が満ちていく。それと同時に姿も変化し始めているようだった。
体は以前よりも一回り大きくなり、立派な翼が生え、胴体には異次元に続く穴が開いている。吸い込まれれば無事では済まないだろう。傷もすっかり消えており、ゼニスは完全に復活した。
ゼニス「グハハハハ!力が満ちている……この姿になるのは100年振りだ」
フェイン「な、なんて圧だ……これが魔王の本気なのか……」
アリシア「これは、予想外ですね……」
ゼニスの真の姿を目にしたフェインはかなり動揺していた。しかし、アリシアには秘策があった。
アリシア「フェイン、少し時間を稼いで下さい
フェイン「時間を?」
アリシア「今から魔王を次元の彼方へ飛ばします。そうすればもう二度と戻って来れません……」
フェイン「死んだも同然って事か……」
アリシア「そう言う事です」
そう言うとアリシアは魔力を溜めるため瞑想を始めた。
フェイン「でも、奴に魔法は効かないんじゃ?」
アリシア「この魔法は攻撃ではなく移動魔法の類なので恐らく問題ないと思います」
フェイン「え!?そんなのがあるなら最初から使って下ださいよ」
アリシア「これは
フェイン「そっか……その虚無ってのを使うしか手は無さそうだな」
ゼニス「話は終わったか?では、地獄を見せてやろう」
フェインとアリシアがゼニスと死闘を繰り広げている頃、天空の宮殿ではレオニオルの登場によって勢いが増した魔王軍とピノ達天使軍が乱戦を繰り広げていた。
レオニオル「この気配……魔王様がとうとう本気になられた」
カナ「ふ、ふんッ……こっちには女神様がいるんだし大丈夫よね?」
ピノ「勿論!アイツらなら魔王なんか敵じゃないさ」
レオニオル「馬鹿め、お前達は魔王様の本当の力を知らんからそんな事が言えるんだ」
魔王城.王の間……
本気を出したゼニスを倒すため、フェインは一人時間稼ぎのためゼニスと戦っていた。
しかし、ゼニスの力は以前とは比べ物にならない程に強くなっており、パワー、スピード、魔力、あらゆる要素がフェインを上回っていた。
無論、戦いは一方的なものとなり苦戦を強いられた。
ゼニス「さっきまでの威勢はどうした?勇者よ」
フェイン「はぁ…はぁ……俺は諦めねえぞ!」
ゼニス「クックック…そうだ、そうこなくては面白くない」
高笑いしながらフェインを痛めつけるゼニスだったが、アリシアが戦闘に参加していない事に気が付いた。
周囲を見回すと、既に魔力が十分に溜まったアリシアが虚無を放とうとしていた。
アリシア「ありがとうフェイン!そして魔王ゼニス、これで終わりよ」
ゼニス「ま、まさか……虚無を使う気か!?」
アリシア「次元の彼方へ消え去ってしまええええええ!!!」
ついに放たれた次元転移魔法
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