第107話 戦慄!魔勇者の力
ダリオの大斧の一撃を受けたバルは魔王城の翼にめり込みぐったりとしている。傷は深く、二人の呼び掛けにも応じない。
フェイン「オッサン……あんた生きてたのか。どうして俺達を攻撃するんだよッ!」
デスタ「待てフェイン。恐らく奴はゼニスの魔強転生によって蘇った死人だろう」
ダリオ「その通りだ、俺自身の意思じゃどうにもならねえ」
フェイン「嘘だろ……オッサンとも戦わねえといけねえのかよ」
ダリオ「こんな形で再会する事になったのは残念だが、二人共武器を構えろ……」
デスタ「いや、ここは私が相手をしよう」
デスタは素早く剣を抜くとダリオに斬り掛かった。デスタの漆黒の剣とダリオの大斧の刃が激しくぶつかり合い火花が飛び散る。
デスタ「フェイン、早く装置を破壊してゼニスの所へ向かえ!奴を倒すのは勇者の仕事だろ?」
フェイン「分かった……オッサンの相手は任せるぜ!」
フェインはデスタがダリオを引きつけている間に装置を破壊すると、魔王城へ続く鉄の翼を走った。
ダリオ「一人で大丈夫なのか、俺は強いぜ?」
デスタ「安心しろ、すぐに土へ還してやる」
自分の体長くらいある大斧を軽々と振り回すダリオの攻撃は確かに厄介だった。彼の強さはパワーとスピードを両立している隙の無さにある。
流石のデスタもこれにはかなり手こずった。大斧を避けるのに精一杯で中々反撃に出られず、デスタは一旦距離を取るために背後に飛んだのだった。
しかし、それを読んでいたダリオは大斧をぶん投げた。凄まじい速さで飛んでくる大斧を剣で弾くデスタ。だが、この一瞬で背後にまで回っていたダリオの強烈な蹴りがデスタの背中に炸裂した。
デスタ「(こ、これは……かなり効くな。次は死ぬかもしれん)」
ダリオ「どうした!お前の力はこんなものか」
デスタ「仕方ない、少々強引な手だがアレを使うか……」
デスタは剣を鞘に収めると服の袖を捲った。そして素手戦う姿勢を見せた。予想外の行動に目を丸くするダリオ。
ダリオ「俺はお前達を殺したくないんだ……本当に大丈夫なのか?」
デスタ「ああ、かかってこい……これで終わりにしてやる」
その頃、天界の宮殿ではピノ達率いる天使軍と魔王軍が激しく争っていた。しかし、これまでの旅で成長してきたピノ達が負けるほどの相手は現れなかった。
しかし、魔王軍幹部であるレオニオルの登場によって戦況は一変した。彼らもまた成長していたのだった。
レオニオル「現在、上空の魔王城で魔王様と勇者達が戦っているみたいだな。だが、魔王様は無敵だ。勇者達が勝つ可能性は万に一つ無い」
カナ「あんた何も分かってないわね!」
レオニオル「何だと?」
ピノ「姉御達はお前らが思ってるよりずっと強いって事だよ、バーカ!」
レオニオル「戯言を……」
そして、時を同じくして地上の村で傷を癒しているブレイブとセレカの元にも魔王軍が現れた。さらに、それを指揮していたのはガルベルグ戦争でブレイブに敗れたミュアルだった。
ミュアル「ブレイブ?久しぶりねぇ……あんたに復讐するチャンスがこんな早く来るとは思わなかったわ」
ブレイブ「これはこれは、また随分と危険なのが見舞いに来てくれたな」
セレカ「あの魔物、あの時デスタとの決闘を邪魔した奴か!?」
ミュアル「おやおや、怪我をしているみたいね。だからといって見逃すほど私は優しくないわ。たっぷり苦しんで死になさい」
ブレイブ「(万事休すか……)」
再び場面は戻り、素手の構えを見せたデスタはダリオ挑発するように手招いた。
ダリオ「クソッ……どうなっても知らねえからな!」
ダリオの豪快な攻撃をするりするりと紙一重で躱していくデスタ。十分距離を詰めたデスタは一瞬の隙を突いて腹に触れると、厄災王の力を使って一気に魂を引きずり出した。
魂の抜けたダリオの肉体からは意識が消え、その場に倒れた。そして、デスタの手にはダリオの魂が静かに浮かんでいた。
デスタ「終わったな……中々に強かったが、こうなってしまえば何もできまい」
デスタは抜き取った魂をバルの側に置いた。そして、バルに簡易的な回復魔法を掛けていると、突然背後から大斧が飛んで来た。
振り向くとそこには、魂の無いはずのダリオの肉体が立っていた。その瞳は赤く不気味な輝きを放っている。
デスタ「馬鹿なッ!?なぜ奴が動いている」
ダリオ「フハハハハ!今の俺の中にあるのは魔王様の魔力だけだ、つまり意思も何も無い」
デスタ「なるほど、貴様はゼニスの残りかすと言う事か」
ダリオ「フン……随分と余裕そうだが、俺にさっきの魂を抜く技は効かんぞ?」
デスタ「(これは結構まずいかもしれんな……さてどうしたものか)」
ダリオはありったけの魔力を拳に集め、攻撃する準備を始めた。デスタは素の戦闘能力ではダリオの方が若干勝っている事を分かっていた。
闇雲に近づけば手痛いカウンターを受ける事は目に見えている。しかし、魔力を溜めているのを黙って見ている訳にもいかず、一か八か先手を仕掛けた。
その時、倒れていたバルが起き上がり白銀のブレスをダリオに向けて放った。一瞬怯んだダリオにすかさずバルは噛みついた。
その衝撃で二人とも翼から滑り落ち姿を消した。
デスタ「恐らくこの高さでは助からないか………バル、すまない」
バルの捨て身の攻撃によってダリオは倒れた。残る魔王軍の主力はズン、レオニオル、ミュアル、そしてゼニスだ。
仲間を失った事を嘆く間もなくデスタはフェインの後を追ったのだった…………………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます