天界 編
第106話 白銀の竜
天界上空に浮かぶ魔王城には二つの翼があり、両翼から城へ魔力が注がれている。その魔力で城本体にバリアが張られており、外からの攻撃を受け付けない。
そこで、女神アリシアとデスタは二手に別れて両翼の魔力を注いでいる装置を破壊することにしたのだった。
デスタ「で、どうやって城に行くつもりだ?天使達にでも運んでもらうのか?」
アリシア「いいえ、彼らでは城に到着する前に迎撃されてしまいます」
デスタ「それじゃあどうする」
アリシア「デスタ、あなたの服に隠れている子を出してくれますか?」
デスタ「バルの事か…?」
デスタは服の中からバルを取り出し両手で抱えた。モフモフの白い小動物はアリシアを見つけると、彼女の頭の上に飛び乗った。
すると、アリシアの魔力に共鳴しバルが激しく発光し始めた。そして、その体はどんどん大きくなり、やがて白銀の鱗を纏った立派なドラゴンへと変化した。
デスタ「バルが……ドラゴンになっただと!?」
アリシア「そうです、彼は元々この地を守護する竜……バルクレシア」
デスタ「バルの本当の姿がドラゴンか……だが、何故小動物になって地上に?」
アリシア「それは手違いで転生してしまったあなたの捜索をするために……」
デスタ「待て、手違いで転生とは何の話だ?それに前々から何故元魔王の私が転生できたのかが不思議だった」
アリシア「そうね……一言だけ言うなら、あなたの転生は私にとっても予期せぬ転生だったの。それ以上は聞かないでちょうだい」
デスタはアリシアの反応から大体の経緯が予想できた。そして、二人は本当の姿を取り戻したバルに乗った。
すると、遠くからデスタを呼ぶ声が聞こえてきた。
フェイン「おーい!俺も連れてってくれえええええ!」
アリシア「彼は……まさか!?」
フェインは息を切らしながら二人の側まで駆け寄ってきた。デスタは魔王城に攻め込む作戦をフェインに説明した。
変化したバルに驚いてはいたが、すぐに興奮した様子で目をキラキラさせていた。
バルは三人を乗せ魔王城へ向かって飛び始めた。魔王城に近づくと、数えきれない程の砲弾がデスタ達を襲った。しかし、バルの機動力は非常に高く、軽々と躱していく。
そして、右翼部分でアリシアを下ろすと二人を乗せて今度は左翼部分へ向かって飛んだ。
フェイン「すっげえなバル!お前がいりゃ百人力だぜ」
デスタ「よし、このまま左翼へ向かってくれ」
調子良く飛んでいるバルは二人を左翼部分に下ろすと、自身は宮殿で魔王軍と戦っている味方を援護するため飛び上がった。去り際に二人を鼓舞する様に雄叫びをあげた。
その時、大斧を持った男がバルの上に飛び乗った。そして、斧を勢いよく振り下ろした。バルは翼に強く叩きつけられ、一撃気絶した。
フェイン「クソッ!一体何が起こったんだ」
デスタ「あの斧…どこかで見た気がする……」
???「クックック……久しぶりだなぁ?元気だったかお前ら!」
その頃、アリシアは右翼に設置されているバリア発生装置の前に立っていた。そして、両手杖に魔力を集めると破壊魔法を唱えた。
しかし、破壊魔法が装置に直撃する瞬間何者かが装置の前に立ち塞がった。
禍々しい気配が辺りを包んだ。舞い上がる爆煙の中から重厚感のある甲冑を着た魔物が現れた。
ズン「貴様が女神アリシアだな?」
アリシア「この雰囲気、あなたは魔王軍の幹部ってとこかしら?」
ズン「その通り、俺は
アリシア「それはできません……何故なら私が神だからッ!!!」
ズン「フン、時期にそうではなくなるさ」
ズンはアリシアに向かって超高速で突進した。アリシアは先程唱えた破壊魔法をズンに向けて放った。しかし、彼の甲冑はそれを全て弾いている。
一気に距離を詰めたズンだったが、突進が当たる直前にアリシアはテレポートで再び距離を置いた。
ズン「そんな攻撃で俺を倒せると思うか?女神よ」
アリシア「中々頑丈ね、それじゃあそんなあなたに一つ忠告してあげるわ」
ズン「忠告だと?」
アリシア「大人しく投降しなさい!存在を消されたくなければね」
ズン「この状況で投降しろだと?ふざけた奴だ……魔王様の指示がなければこんな雑魚すぐに」
アリシア「それはNOと受け取っていいわね?」
ズン「さっき存在を消すとか言っていたな?やれるものならやってみろ、俺の甲冑の防御を超えられると言うのならな!」
アリシア「こうしてる間にも皆戦いで傷ついているし、そうさせてもらうわ」
アリシアは両手杖を立てると、静かに目を閉じた。一瞬、辺りの時が止まった様な静寂が空間を支配した。
そして、ゆっくりとアリシアの目蓋が開いた。その瞳は青白く光っており、無限のエネルギーを感じる。
アリシア「形あるものいつかは朽ちる、その運命から逃れる事は出来ません」
ズン「一体何なんだ、この異様な魔力は……」
アリシア「あなたには無限の時を与えましょう……
アリシアの瞳から放たれた光はズンの甲冑と肉体をみるみる劣化させ僅か数秒で粉々に砕け散った。
ズンは一瞬の内に無限の時間を過ごしたのだった。いくら頑丈なものと言えど、永遠に存在する事は出来なかった。こうして、アリシアは右翼のバリア発生装置を破壊したのだった。
そして遡ること数分前、左翼に到着したデスタとフェインの前に現れたのは意外な男だった。
フェイン「ダリオのおっさん……なのか?」
ダリオ「おう!元気そうだな」
フェイン「あんた魔王と戦って死んだって……」
ダリオ「ん?まあな……」
デスタ「気を付けろフェイン、こいつは私達が知ってるダリオではないぞ」
フェイン「まさか……魔強転生!?」
ダリオ「お、なんだ知ってるのか。なら話は早いな、お前ら武器を構えろ!俺が相手をしてやる」
二人の前に現れたのは、かつて六勇者として活躍していたダリオだった。魔王ゼニスと遭遇し死んだとされていたが、彼もまた魔強転生によって蘇っていた………………………
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