蘇る英雄 編

第99話 再会

 リゾー島を出て一週間が経った。デスタ達の船はレスト大陸の小さな港町に停泊していた。ここから先は大陸を進む事になるので、キース達船員は船に残る事になった。そして、ブレイブの案内の下、デスタ達は光の部族の村へと出発したのだった。

 レスト大陸の気候は寒く、空気も乾いていて植物もあまり育たない。しかし、あたり一面に広がる雪景色はとても美しかった。

 それから馬を走らせること二日、ついに一行は何も無い荒野の地平線の先に雲を貫くほど高い塔を発見した。

 そして、ブレイブが双眼鏡を覗くと、塔の麓に村を発見した。



ブレイブ「見えた!あの塔の麓に村がある」


ピノ「おお、あの塔から天界に行けるのかぁ」


リュシオン「普段は侵入者対策のため、沢山の罠や、どこまで登っても永遠に辿り着けない結界を張っているんですがね」


デスタ「随分厳重だな……本当に天界に行けるのか?」


リュシオン「あなた方は招かれているんですよ?罠も結界も心配ご無用、作動しません」



 リュシオン曰く、天へと続く塔の内部に設置されている障害物は作動しないとの事だった。



カナ「それを聞いて安心したわ。あんな高い塔に登るんだもの、罠なんかあったら絶対登りきれないわよ」


フェイン「俺は別に罠があっても構わないぜ!そっちの方が退屈しなくて済みそうだしな」


ピノ「確かにその方が面白いかも」


カナ「ちょっと冗談でしょ?あんた達みたいな体力馬鹿と違って、か弱い乙女がいる事も忘れないでよね!」


ピノ「か…か弱い……?」


フェイン「ぷぷぷ、お前がか弱い?冗談を言ってるのはそっちだろ」



 怒ったカナは馬をフェインとピノの方へ寄せると槍の柄で二人を突っついた。慌てて馬を加速させる二人。

 そうこうしている内に、あっという間に村へ辿り着いた一行は村の入り口で馬を降り、村の中へと入った。

 村の中は木造の家が沢山並んでおり、屋根には雪がぎっしり積もっている。余所者が珍しいのか、村人達はデスタ達に興味津々だった。



村人「あんたら、こんな辺境の村に何しにきたんだべ」


リュシオン「天界へ行くんだよ」


村人「ありゃあ……おら翼が生えてる人間なんて始めて見たんだな」


リュシオン「僕は天使ですよ」



 特に天使のリュシオンは村人達から注目を浴び、デスタ達は質問攻めをされ足止めを喰らってしまった。

 すると、人混みの中を掻き分けながら村長と呼ばれる老人が一行の前に現れた。村長は村人達の非礼を詫びると、家へ正体してくれた。雪の積もる中やって来たデスタ達には、暖炉の熱が身に染みる。



村長「さて……天使様がいると言う事は天の塔を登りに来たのでしょうな」


フェイン「俺達どうしても天界に行かなきゃ行けないんだ」


村長「ええ、そうでしょうな。わかりました、塔を登る事を許可します」


ピノ「ありがとう村長さん!それじゃ早速塔へ行ってみようよ」



 フェインとピノは早足で家を出ようとした。しかし、二人の前にブレイブが立ちはだかりそれを止めた。



ブレイブ「待った、塔へ行くのは僕が用意した試練をクリアしてからだよ」


カナ「試練……?」


ブレイブ「みんなにはそれぞれ別の試練を受けてもらう。出来なければここへ置いて行く」


ピノ「えッ!?そんなのあんまりだ」


ブレイブ「厳しいようだけど、半端な力で魔王軍の精鋭と戦えるはずもないからね」


デスタ「フン、失敗しなければいいだけだろ」


ピノ「そ、そうだけどさぁ……」


ブレイブ「ま、取り敢えず今日は疲れてるだろうし休もう。試練は明日から始まるよ、いいね?」



 こうして、ブレイブの用意した試練を受ける事になった四人。どんな試練が待ち受けているのだろうか。デスタやフェインは楽しみにしているが、ピノとカナはあまり乗り気ではなかった。

 村に滞在している間は村長の厚意で家に泊めてもらった。家が広いので自由に使っていいらしい。

 翌朝、四人が朝食を終え、外に出るとブレイブとリュシオンが待っていた。二人の後ろには大きめの馬車が一台駐めてある。誰か乗っているのか、中から数人の気配が感じられた。



ブレイブ「みんなおはよう!早速君達に試練を与える」


リュシオン「期間は三日です。それ以上掛かると残念ながら失敗となります」


フェイン「で、俺達は何をすればいいんだ?」


ブレイブ「シンプルに僕の用意した戦士達を倒してもらうよ」


デスタ「戦士だと?」


リュシオン「皆さん、もう出てきていいのでは?」



 リュシオンの声を聞いて、背後に駐めてある馬車から見覚えのある二人が降りて来た。



フェイン「お前ら……どうしてここに?」


ラッシュ「よう、お前達が魔王軍と直接対決かもしれないと聞いて駆けつけたぜ」


カナ「ラッシュじゃない!元気してた?」


セレカ「おい、そこの女!馴れ馴れしいぞ。今のラッシュ様はガルベルグ帝国の皇帝なのだぞ、口を慎め」


ラッシュ「ま、まあまあ、落ち着いてくれセレカ。コイツらは俺の恩人なんだ、それくらい許してくれ。それとカナ……もう少し距離を」


カナ「何ー?何か言ったかしら?」



 ガルベルグ帝国のラッシュとセレカが現れ一同は驚いた。ラッシュは相変わらず女性が近づくと固まってしまうので、カナがおちょくる。すると、馬車の中に残っている人達が次々に出てきた。

 六勇者のクロウとルプラス、助手のリン。ミドピラ闘技大会で会った闘士ミトラ。花騎士の長ローズ。皆、見知った顔だった。



ローズ「やあ、久しぶりだねみんな」


カナ「やだ、イケメン……ってローズ団長!?」


クロウ「今回我々が呼ばれた理由は二つ」


リン「一つ目は魔王軍と戦う君達の加勢」


ルプラス「二つ目は君達の試練の相手をする事さ」


デスタ「ほお?面白い、誰が私の相手だ」



 ブレイブから言い渡された。ガルベルグ戦争の時は決着がついていなかった事もあり、セレカ自身がデスタを指名したようだ。

 続いて。理由もしっかりとあった。闘技大会でミトラにやられているピノは、この機会にリベンジを申し込んだのだ。

 そして、。元上司が相手なら試練として相応しいだろう。

 皆それぞれの相手と共に散っていったのだった。



フェイン「ブレイブさん、俺の相手は?」


ブレイブ「フェイン、君の試練は二つ。一つは対戦相手のラッシュを倒す事。そしてもう一つは勇者の力を完璧に使いこなせるようになる事だ」


ラッシュ「要するにお前はクリア出来ないって事だ」


フェイン「どう言う意味だよ」


ラッシュ「お前、俺には勝てないぞ」


フェイン「何?どうしてそうなんだよ!」


クロウ「続きは戦いながらしたらどうだい?タイムリミットは三日なんだろ」


ラッシュ「そう言う事だフェイン。悪いが本気で行くぜ?」


フェイン「そうだな、ここらでライバルと決着をつけるってのも良いかもな」



 フェイン達の試練の相手は皆、何かしらの因縁がある相手だった。果たして全員試練を達成出来るのだろうか…………………………

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