第93話 宝玉
ピノの放った矢はスカルの謎の力によって、何故かピノの太ももに刺さってしまった。しかし、ピノの中でスカルのカウンターの正体が掴めた。
ピノ「カウンターの正体……それはいくつかの条件があるとみた!」
スカル「ほお、どんな条件だ?」
ピノ「一つ目の条件は足元の魔法陣の中にいる事。そして二つ目は、俺に触れる?とかかな」
スカル「まあ……ほとんど正解だ」
ピノ「ほとんど?」
スカル「触れるのではなく、対象の血液を魔法陣に練り込むのが条件だ」
ピノ「なるほど、フックで斬りつけた時に俺の血を……」
スカル「それと、一ついいことを教えてやろう。今の俺が受けるダメージは全てお前が肩代わりする事になっているが、自分で自分を傷つけてもお前のダメージにはならねえし、俺様が魔法陣の外に出れば効果は消える」
魔法陣の効果を説明し終えるとスカルは腰に携帯してある二丁の拳銃を引き抜いた。そして、ゆっくりと二つの銃口をピノに向けた。
スカル「降参するならしてもいいぜ?」
ピノ「する訳ないだろ!それよりなんで魔法陣の効果を教えた!」
スカル「クックックッ……そこで観戦してる仲間の姉ちゃんが魔法陣の事知ってそうな感じだったからな、どっちにしてもヒントは貰ってたはずだぜ」
ピノ「ヒントねぇ……そりゃあどうも。だけどこれでお前を倒す方法は分かった!後はお前を倒すだけだなあ!?」
スカル「フン、面白い奴だ。まだ諦めていないのか……では遠慮なく引き金を引かせてもらうぞ」
ピノは銃を撃たせまいと必死に数十本の爆発矢をスカルに向けて放った。しかし、焦っていたのか全て外してしまい、再び砂煙が舞い上がり互いに見えなくなった。
だが、砂煙はすぐに晴れ、再びピノを捉えたスカルは引き金をあっさりと引いた。地底湖に銃声が響き渡る。弾丸は二発とも命中し、ピノはバッタリと砂浜の上に倒れた。
観客のガイコツ達から歓声が上がり、スカルは銃口から漏れている煙を吹いた。
フェイン「マジかよ……」
カナ「そんな……ピノ!嘘でしょ」
デスタ「二人共……まだ終わりではないぞ」
カナ「終わりじゃないって……どう言う事?」
スカルは魔法陣を解き、片膝を地面についた。どうやらかなり体力を消耗していたらしい。
スカル「はぁ…はぁ…やはりこの魔法は長期戦には向いていないか」
ピノ「そうみたいだな……」
ガイコツ達の歓声の中からピノの声がスカルの耳に入ってきた。突然の出来事で数秒思考が停止したが、ピノは目の前で倒れている。声が背後から聞こえてきた気がするが、気のせいだろう。
しかし、念のためスカルは振り向いた。するとそこには倒したはずのピノが、ずぶ濡れになりながらも立っていた。
スカル「なッ…何が起こっているんだ……小僧が二人いる…!?」
ピノ「ああそうだ、二人いるぞ!撃たれたのは俺の分身だけどな」
スカル「分身だと……では最初から分身で戦ってたと言うのか?」
ピノ「いいや、途中ですり替わったのさ。二回目の砂煙が舞った時、俺は急いで分身を作り湖に飛び込んで隠れた。お前が魔法陣を解くのを待つために」
スカル「フフ…フハハハハハッ!!!やるな小僧、気に入った。お前達は合格だ」
ピノ「え?合格?」
スカル「そうだぞ!もっと喜べ!お前達は伝説の剣ファルティングに一歩近づいたんだ」
スカルは試練の合格をピノに伝えると、懐から青く輝く宝玉を取り出した。そして、試練達成の証である宝玉をピノは受け取った。
スカル「確かに渡したからな。ほらさっさと次の試練に行きな!」
ピノ「ふ、ふざけんなッ!俺はお前を倒してねえぞ!」
スカル「いや、この勝負俺様の負けだ。魔法陣を作るのに体力も魔力も使い果たしちまったからな」
ピノ「俺だって脚を怪我してるぞ!」
スカル「まあとにかく合格は合格、勝負は終わりだ。それと仲間に回復魔法に長けている奴がいる。ここを出る前にそいつに怪我は治してもらうんだな」
ピノは不満そうだったが、スカルの部下に脚の怪我を治してもらった。そして、四人はガイコツ達の案内で地底湖を出ることができた。
しばらくすると暗い洞窟を抜け、眩い日の光が四人を照らした。四人は咄嗟に手の平で光を遮る。
洞窟を抜けた先は砂浜だった。地底湖と違って乾いた砂だ。水平線にオレンジ色の太陽が沈んでいくのが見える。周囲が太陽と同じ色に染まっている。南国特有のヤシの木が周囲に生えており、金持ちの貸し切りリゾート感がある。
すると、テンションの上がったフェインが海に飛び込んだ。それを見たピノとカナもフェインに続いて入った。そして三人は無邪気に遊び始めたのだった。
デスタ「お前達、この島へは遊びに来たんじゃないんだ。さっさと次の試練に向かうぞ」
フェイン「まあ待てよデスタ。今日はピノの活躍で一つ試練をクリアしたんだし、他の試練は明日でいいんじゃないか?」
ピノ「そうだよ!次の試練は別の島なんだから、今から急いで行っても夜になっちゃうよ」
デスタ「だが、ユノシア達に先を越されたらどうする?伝説の剣はゼニスを倒す唯一の可能性なんだぞ」
カナ「それはそうだけど、ブレイブさんも私達を探してるかもしれないしこの島を離れない方がいいんじゃない?」
三人の必死の説得により、今夜はこの砂浜でブレイブを待つという名目で野宿する事になった。
翌朝、まだ空が薄暗い早朝。眠っているデスタ達の元にブレイブが現れた。フェインだけは既に起きていて朝食の準備に取り掛かっている最中だった。
ブレイブ「お、試練どうだった?」
フェイン「ブレイブさん!?今までどこ行ってたんですか!先に行ってるって言っていなくなるから探しましたよ」
ブレイブ「ごめんごめん、他の試練を終わらせに行ってたんだよ。君達なら僕がいなくても試練を達成できると思ったからね」
フェイン「他試練って……ええッ!?もしかして一人でクリアしちゃったんですか?」
ブレイブ「まあ、一つだけね」
ブレイブは腰にぶら下げている袋の中から緑色の宝玉を取り出した。フェイン達が手に入れた宝玉と合わせて二つ。残り一つで全ての試練達成となる。
二人の会話を聞き、デスタ達も眠そうにあくびをしながら起きてきた。そして朝日が昇ると共に一行はフェインの用意した朝食を済ませた。
デスタ「残る試練は後一つ……」
カナ「伝説の剣は目の前ね」
フェイン「そんじゃ最後の試練、ちゃっちゃと終わらせますか!」
??「フフフ、その必要はないわ」
最後の試練に向けて意気込んでいる一行の前に突如現れたのはユノシアと海賊達だった。そしてユノシアの手には赤く輝く宝玉が握られていた。
雲一つない快晴の下、ついに姿を現したユノシア海賊団。朝の潮風が心地いい砂浜で、一波乱ありそうだ………………………………
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