第92話 ピノvsスカル
四人の前に現れたスカルは第一の試練の主だった。試練の内容は至ってシンプル、一対一の決闘だ。しかし、この試練に挑戦できる資格があるのはスカルの船を沈めたデスタとピノのどちらかだけであった。
スカル「さあ、どちらが戦うのだ?」
デスタ「私が行こう」
フェイン「ま、そうだよな。デスタの方が強いんだし」
ピノ「何だよ!確かに姉御は強いけど、あんなガイコツくらい俺でも倒せるぞ!」
カナ「まあまあ、ピノの本領が発揮されるのは遠距離戦でしょ」
ピノ「姉御、俺にやらせてくれよー。近距離でも戦えるってところを見せてやりたいんだ」
デスタ「……分かった、お前を信じよう」
ピノ「ありがとう姉御!俺絶対勝つからドーンっと任せてよ」
ピノは軽く準備体操をするとスカルの前に立った。二人の周りを海賊ガイコツ達が取り囲む。沢山のギャラリーに揉みくちゃにされながらも、デスタ達は最前線で戦いを観ることができた。
スカル「おい、さっきの姉ちゃんじゃなくていいのか?お前みたいな小僧じゃ相手にならねえぞ!あれ?小娘か?」
ピノ「俺は男だ!ってそんなことより相手にならないとは聞き捨てならねえな」
スカル「事実を言っただけだ」
ピノ「へッ!油断してんな」
いよいよ海賊の試練が始まる。ガイコツ達は浜辺に落ちている船の残骸を叩いて陽気に歌をうたっている。そして、一人のガイコツが試合開始の合図に拳銃を発砲した。
その瞬間、スカルはサーベルを目にも留まらぬ速さで引き抜くとピノに向かって投げつけた。自身の武器を投げるという予想外の行動に一瞬反応が遅れたピノは、咄嗟に体を大きくのけぞって剣を躱そうとしたが、剣は顔面に直撃してしまった。
だが、運が良い事にピノが当たったのは剣の柄の部分だったので致命傷にはならなかった。しかし、休む間も無くスカルの追撃がピノを襲う。スカルは左腕のフックでピノの腕を斬りつけた。
スカル「ガハハハ!どうした、お前の力はこんなもんか?」
ピノ「くッ……いきなり武器を投げるなんて反応できるか!」
スカル「フン、反応出来なきゃ死ぬだけだ」
ピノ「そんなこと分かってるよ!」
ピノは華麗にバック宙をすると、空中で矢を十本同時に放った。放たれた矢は四方八方に散らばり、次々とスカルの足元に刺さった。だが、一本だけ真っ直ぐスカルに向かって飛んでいく。しかし、当然の事ながらあっさりと弾かれてしまった。
スカル「甘いな。ある程度の実力がある相手には数撃ちゃ当たる戦法は使えんぞ」
ピノ「フ、甘いのはお前だ!足元をよく見てみるんだな」
スカルは言われた通り足元に刺さっている矢を確認した。よく見ると矢尻が真っ黒になっているのが分かった。
スカル「何だ……これは?」
ピノ「俺特製の火薬矢だ!単体じゃ普通の矢と変わらないけど、そこに火を投入したらどうなるかな?」
ピノは鞄から火炎瓶を取り出すと、火を着けて投げた。瓶はスカルの足元で割れ、一気に炎が広がる。それと同時に足元に刺さっている火薬矢に着火し、無数の爆発が起こった。
砂が舞い上がり、煙が二人を包み込む。スカルは完全にピノを見失ってしまった。しかし、スカルは余裕そうに腕を組んでいる。
スカル「小僧、中々やるじゃないか!見直したぞ。だが、この程度俺を倒せると思うなよ」
スカルは右腕に魔力を集中させると、膝をついて砂に手を当てた。すると、スカルを中心に紫色の魔法陣が展開された。
スカル「小僧、どっからでも撃ってこい……」
ピノ「(今なら不意をつける。だけど、あいつ妙に余裕のある態度だなぁ)」
スカル「さあ!得意の弓で攻撃しろよ!何を迷ってる」
ピノ「(クソッ!絶好のチャンスなのに…どうしてだろう、誘いに乗ってはダメな気がする。俺の狩人としての直感が何かを感じている)」
ピノがあれこれ考えているうちに砂煙は晴れ、二人は互いに姿を視認した。スカルは戦う気があるのか、無防備に棒立ちしている。
スカル「どうした、怖気付いたのか?」
ピノ「嫌な予感がしただけさ……何か仕掛けてたんだろ?」
スカル「クックックッ…鋭いな、確かにその通りだ。俺はお前の攻撃に対して確実に決める事ができるカウンターを狙っていた」
ピノ「確実に決まるカウンター?」
スカル「ああそうだ。視界が晴れてもそれは変わらねえ、俺は今もカウンターを狙ってるぜ。さあ、どうする?」
ピノ「どうするって言われてもなぁ……」
ピノは矢を放つか迷った。そして弓を引き絞り、狙いを付ける。その時、ピノはスカルが全く攻撃してこない事に気が付いた。
ピノ「(あいつはどうして何もしてこないんだろう……いくらカウンターを狙っていると言っても、そこまでこだわる必要があるのか?)」
スカル「はぁ……おいおい、どこからでも攻撃していいって言ってんだ。さっさと来やがれ!」
ピノ「お前が来いよ」
スカル「フン、言ったろ?俺はカウンターを狙ってるんだ。こっちからは仕掛けないぜ」
ピノ「それじゃあ勝敗が着かないだろ!」
スカル「結構、いくらでも待つさ。
しばらく
デスタ「あの魔法陣、もしや……」
フェイン「あの魔法陣知ってるのか?」
カナ「どんな効果なの?各自にカウンター出来るってどういう事?」
デスタ「二人とも落ち着け、一気に質問するんじゃない」
フェイン「わ、悪りぃ……」
デスタにはスカルの魔法陣に見覚えがあった。それは自分がまだ魔王だった頃、部下の中で流行っていた魔法陣。その名も血の呪いと言うものだった。
デスタは魔法陣の効果をピノに伝えようとしたが、周囲のガイコツ達の声にかき消されてしまった。そして、埒が明かないと判断したピノは覚悟を決めて矢を放つのだった。
スカル「クックックッ……馬鹿め、カウンターされると分かって撃ってくるとはな」
ピノ「やれよ、やってみろ!どうカウンターするのか見せてもらおうじゃないかッ!!」
スカルは両手を広げて矢を受ける体勢をとった。どうやら避けるつもりはないらしい。放たれた矢は止まる事なくスカルの太ももに刺さった。しかし、スカルの足に刺さったはずの矢は一瞬にして目の前から消えた。
そして、矢が消えたのを認識した瞬間ピノの脚に激痛が走った。恐る恐る下を見ると、ピノが放ったはずの矢が太ももにしっかりと刺さっていた。それを見たピノは堪らず尻餅をついた。傷口からは真っ赤な血液が脚先まで垂れている。
スカル「フン、わざと脚を狙ったな?小僧」
ピノ「そうだよ、何をしてくるか分かんないから様子見のつもりで矢を放ったのさ」
スカル「クックッ…様子見にしては重症だなあ?」
ピノ「だけどその価値はあったぜ!お前のカウンターの謎が解けたからな」
スカルのカウンターの謎が解けたと宣言したピノ。果たして、最初の試練の主スカルを撃ち破る事は出来るのだろうか…………………
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