第91話 海賊の試練
デスタ達は地底湖に停泊している謎の海賊船の前までやって来ていた。近くで見るとかなり大きい。だが、かなりボロボロでマストが破れていたり苔が生えている。
そして、船は砂浜に半分乗り上げていた。どうしてこんな状況になったのか想像がつかない。
ピノ「ひえー、でっかいなぁ……」
デスタ「よし、調べてみよう」
ピノ「あ、ちょっと待って姉御。何か聞こえない?」
二人が静かに耳を澄ますと、声が聞こえてきた。宴をやっているのだろうか、数十人の楽しそうな声が海賊船の甲板から聞こえる。
ピノ「誰かいるみたいだよ。もしかしてブレイブさん?」
デスタ「かもしれんが、誰か分からん以上静かに行くぞ」
ピノ「了解!」
いざ海賊船に侵入しようとデスタが乗り込もうとしたその時、ピノが大きなくしゃみをした。
デスタ「どうした、風邪か?」
ピノ「ううん、ちょっと寒くて……ここの湖の水やたら冷たかったからかな?」
デスタ「確かに水着では寒いな。だが、着替えは無い……諦めろ」
再びデスタは船に乗り込むため、甲板から垂れ下がっているロープに手を掛けた。すると、甲板から銃を構えたガイコツがこちらを見ている。銃口はピノに向かっていた。だが、ピノは気付いていない。
デスタは引き金を引かれるより速くピノに体当たりをした。二人はそのまま近くの岩陰に転がり込み射線を切った。その直後銃声が地底湖に響いた。弾は二人には命中せず、湿った砂に撃ち込まれている。
ピノ「あ、ありがとう姉御。狙われてるの気付かなかったよ」
デスタ「ああ、気にするな……ん?お前鼻から血が出てるぞ」
ピノは体当たりされた時にデスタの豊満な胸が顔面に直撃した感触を思い出して鼻血を出していたのだった。しかし、そんな事を知らずにデスタは心配している。
デスタ「おい、しっかりしろ!血が出てるぞ」
ピノ「あははは……平気平気。それよりあのガイコツどうする姉御?」
デスタ「私があいつの注意を引く、その間に
デスタは魔界剣だけを持って岩陰から勢いよく飛び出した。すると、船の甲板にはガイコツが沢山集まっていた。バンダナやしま模様の服装から察するに元海賊だろう。ガイコツなのに何故動いているのかは分からないが、こちらを敵として認識しているようだ。
デスタ「さあ来い……私はここだ!」
ガイコツ達はデスタを視認すると大砲を発射して来た。砲弾が砂浜に直撃すると派手な爆発が起こった。辺りに硝煙の匂いが漂う。デスタは暗い砂浜を裸足で走った。ひんやりとした感触が足の裏に伝わる。そして、ガイコツ達の視線はピノの隠れている岩から離れていった。
その隙にピノは船の裏側に回り込んだ。すると、船底に小さな穴が開いているのを見つけた。ピノのサイズならギリギリ入れそうだ。あの数を一体ずつ倒していてはキリがないので船に爆弾を仕掛けて一度に倒す作戦を思いついたピノは、爆弾を探すため穴から船内に侵入したのだった。
狭い穴をくぐってピノが頭を出した先はベットの下だった。穴から這い出てみると、二段ベットが沢山並んでいる。どうやらこの部屋は船員達の寝室らしい。
ピノ「海賊船なら爆薬ぐらいすぐみつかるよね」
寝室を出て船内を物色していると、やたらと小綺麗な部屋に辿り着いた。部屋には豪華な装飾品と立派な机と椅子が設置されている。そして、机の上には金品が沢山置いてあった。しかし、金品には目もくれずに部屋を漁っていると、引き出しの中からダイナマイトを数本見つけた。綺麗に保管されていて、湿気もない。普通に使えそうだ。
ピノは見つけたダイナマイトを持って来た布袋に詰めた。すると、背後にある部屋のドアが開く音が聞こえてきた。
??「小僧、俺の部屋で何をしてる?」
低い男の声だ。ピノは咄嗟に机の上へ飛び乗り、声のする方へ弓を構えた。するとそこには、左腕がフックになっているガイコツが一人立っていた。服装は外にいるガイコツ達よりしっかりしている。
ピノ「お前は誰だ?」
??「クックックッ……それはこっちのセリフだ。まあいい、俺様はブラッド・スカル……この船の船長だ」
ピノ「船長か……一つ聞きたい、どうして俺達を攻撃する?」
スカル「この地底湖は俺達のアジトだ、外の立て札にもドクロマークを沢山書いておいただろ、見えなかったのか?」
ピノ「あー……あれね、確かにあった。それじゃお前は俺達が勝手にアジトに入って来たから怒ってるって事か」
スカル「おっと待ちな、俺様は別に怒ってる訳じゃないぜ」
ピノ「じゃあなんで攻撃するんだよ」
スカル「クックックッ……知りたいか?」
ピノ「え?……うん」
スカル「ダメえええええええッ!!!」
スカルは顎をカタカタと鳴らしながら腰に差してあるサーベルを引き抜くと、問答無用で斬り掛かってきた。すかさずピノは矢を三本連続で発射しスカルを迎え撃つ。しかし、スカルは器用に左手に付いているフックで全ての矢を弾き落とした。
スカル「真っ二つになりな小僧!今なら一瞬であの世に送ってやるぜ」
ピノ「お断りだね、俺はこんな所で死ぬつもりはない!」
ピノはバック宙で机の上から飛び降りると煙玉を投げつけた。たちまち部屋に白い煙が立ち込め、スカルはピノを見失う。その隙に部屋を抜け出すと、ピノはダイナマイトを船中に仕掛けた。そして導火線に火を着けると暗い湖へ飛び込んだ。背後で船が爆発している音が聞こえる。
こうして、ピノとデスタの活躍によりスカルの船は沈没した。ガイコツ達も慌てて次から次へと船を捨てて湖へ飛び込んでいる。ピノは岸まで泳ぐと砂浜に座り込んでいるデスタと合流した。
デスタ「はぁ…はぁ…よくやった」
ピノ「こんくらい楽勝楽勝!アイツらの親玉と船の中で会ったけど大した事なかったよ」
船の中で会った出来事をデスタに話すピノ。そこに崖を降りてきたフェインとカナもやって来た。そして、四人は沈んでいく船を見届けながら砂浜に腰を下ろした。
フェイン「おい!今の爆発どうしたんだよ?」
デスタ「船を一隻沈めた音だ」
ピノ「俺が爆弾仕掛けたんだぜ!すごいだろ」
カナ「あのさぁ、状況が飲み込めないんだけど……」
後からやって来た二人にこれまであった出来事を説明しようとしたその時、湖の中から沢山のガイコツ達がずぶ濡れになりながらも砂浜に上がって来た。海藻が頭に着いている者や目に水が溜まっている者もいる。
四人は即座に身構えたが、ガイコツ達から襲ってくる気配はなかった。そして、部下達をかき分けて四人の前にスカルが姿を現した。
スカル「フン、やるなお前達。流石に伝説の剣を目指すだけのことはある」
デスタ「何…?どうして剣の事を知っている?」
スカル「簡単な話だ、ここが最初の試練が行われる場所だからさ」
フェイン「なるほどね、そんじゃあんたが試練の主って事だろ?」
スカル「その通り、俺が試練の主だ。宝玉が欲しければ俺と戦え」
フェイン「よーし!話が早くて助かるぜ。俺がやる、みんなは手を出すなよ」
スカル「ダメだ、お前に戦う資格はない」
フェイン「はい?何でだよ」
スカル「先程力を示した女か子供、どちらか一人が代表して俺と戦え。負ければ試練は失敗、再戦は出来ないものとする」
スカルの指定した条件はデスタかピノが代表して戦うというものだった。暗い地底湖で行われる最初の試練。四人はクリア出来るのだろうか…………………………………………
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