第90話 地底湖

 凶暴な鮫に襲われながらも、デスタ達は無事二つ目の島に上陸出来た。そして、太陽の熱で熱々になった砂浜の上に立つ四人の眼前に広がるのは、一つ目の島同様に見渡す限りのジャングルだった。

 ただ、一つ目の島には無かった大きな火山が島の中心にそびえ立っている。伝説の剣を指すコンパスはブレイブが持って行ってしまったので正確な位置が掴めない。

 「先に行っている」と言っていたブレイブの姿も見えない。四人は次に向かうべき場所が分からなかったが、取り敢えず島の中央を目指して、再びジャングルの中へと足を踏み入れるのだった。


二十分後……


 ジャングルの中は湿気と熱気が混じり合い、サウナの様になっていた。沢山の葉が日差しを遮っているだけマシと言えるが、暑さで体力をどんどん奪われていく。

 どこかで休もうか、そんな事を考えていると四人は少し開けた所に出た。木々に囲まれたこの場所には、大昔に誰かが使っていたであろう線路が敷いてあった。線路は緩い坂道をジャングルの中を通って島の中心に向かって伸びているように見える。

 線路の側には小さな駅の様な土台が建てられていた。そして、錆び付いて茶色くなっているトロッコが辺りに散乱している。



フェイン「おいデスタ、俺いい事思い付いた」


デスタ「当ててやろうか?トロッコに乗って火山まで行くつもりだろ」


フェイン「お、分かってんじゃん!それなら早速」


デスタ「待て、この線路が本当に火山まで繋がってるとは限らんぞ?それにかなり古い」


ピノ「えー、乗ってこうよー」


カナ「そうよ、乗ってきましょ?」


フェイン「大丈夫だって、デスタは心配し過ぎなんだよ」


デスタ「このまま歩いても時間と体力を失うだけか……分かった、トロッコを使おう」



 四人は一台のトロッコを線路に乗せた。そして、フェインは三人を乗せたトロッコを坂道まで押した。トロッコは少しずつ加速し、それを確認したフェインは急いでトロッコに乗り込んだ。四人の火照った顔に涼しい風が吹きつける。鬱蒼とおい茂るジャングルの中を中々の速さで進んで行く四人。

 長い間使われていないせいか、度々線路上に木の枝が垂れ下がっている。邪魔臭いとも思ったが、中には果物がなっている物もある。四人は目的地に着く間、適当な果物を取って食べた。

 しばらくして、四人を乗せたトロッコは火山の近くまでやって来ていた。相変わらず景色はジャングルだが、生えている植物がどこか毒々しい。



カナ「ねえ、もうそろそろじゃない?」


フェイン「だな、だけどブレイブさんどこに居んだろ?」


ピノ「道に迷ってたりして」


フェイン「いやいや、伝説の勇者だぜ?なんかこう、千里眼みたいな力でも使えそうじゃないか?」


デスタ「お前ら、雑談はそこまでにしておけ……あれを見てみろ」



 トロッコは火山のふもとに差し掛かっていた。ふもとには、いかにも危険そうな匂いのする洞窟が見える。入り口の近くにはご丁寧にドクロの看板も立ててある。そして、そのまま線路は洞窟の奥まで続いていた。



カナ「げ……なんかヤバそうじゃない?降りる?」


フェイン「何言ってんだ、このまま乗っときゃ着くだろ」


カナ「その自信はどこから湧いてくるのよ……」



 カナの不安をよそにトロッコは洞窟の中へと入った。どんどん入り口の光が小さくなっていく。洞窟内は暗く、1メートル先がどうなっているかも分からない。すると、突然急な下り坂になりトロッコが猛スピードで走り始めた。四人はしっかりと掴まれるところにしがみ付いていたが、激しい揺れに耐えられなくなった

 その衝撃で、デスタとピノの二人は勢いよく投げ出された。そして、二人の投げ出された先は崖だった。フェインとカナは急いで崖下を覗き込み二人の名前を呼んだ。しかし、声がこだまするだけで、崖下に落ちた二人からの返事は返ってこない。崖下はとても暗く、どうなっているのか全く分からない。



フェイン「暗いなぁ……何がどうなってんのか見えねえや」



 フェインは右手に魔力を集めると光の玉を作り出した。そして、それを自身の頭の上に浮かべた。以前、バラネア湖で素潜りをした時に使用した即席の明かりを作り出す魔法だ。



カナ「へー、フェインってただの脳筋じゃなかったんだ……って感心してる場合じゃない!早く二人を助けないと」


フェイン「まあ、アイツらが簡単に死ぬとは思えないが……ん?」


カナ「どうしたの?」


フェイン「カナ、崖下をよく見てみろよ……」



 フェインの作り出した明かりによって、ぼんやりとだが少しずつこの暗闇に目が慣れてきた。そして、改めて周囲を見渡すとそこは巨大地底湖だった。ここに来る前に寄った港町くらいならスッポリ入りそうな広さがある。深さもかなりありそうだ。



カナ「下は湖になってたのね、それならきっと二人共無事……だよね?」


フェイン「ちゃんと湖に落ちてくれてたらな」


カナ「確かに、地面に叩きつけられてたら怪我してるかも」


フェイン「さあてと、どうやって降りるかな」


カナ「これなんてどう?」



 カナは近くに捨てられてたロープを見つけフェインに手渡した。ロープはかなり古そうで、洞窟の湿気により少し湿っている。それを線路に括り付けて、二人はゆっくりと崖を降りて行くのだった。

 その頃、トロッコから投げ出されたデスタ達は湖に落ちてびしょ濡れになっていた。テンションが下がる中、岸に上がった二人は水分を多く含んだ砂の上に立った。そして、まず安全を確保するため周囲を見渡した。



ピノ「暗いね、姉御」


デスタ「見れば分かる」



 デスタ達もフェインと同様に即席の明かりを作ると、地底湖周辺の砂浜を崖伝いに歩き始めた。どうやって上に上がろうか考えていると、ピノが何かを見つけたのかデスタの肩を叩いた。

 


ピノ「姉御、あれ海賊船じゃない?」


デスタ「何だと……?」



 ピノの視線の先には巨大な海賊船が停泊していた。こんな地底湖にどうして海賊船があるのだろうか。取り敢えず二人は謎の海賊船に向かってみる事にしたのだった……………

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