第66話 ジョーカー
東の入り口では、カシムが四将軍の一人バクアと激しい攻防を繰り広げていた。そして、バクアの呼び出した
バクア「アッハハハ!この
カシム「馬鹿な!?ドラゴンが人間に従うなんて……そんな事があり得るのか」
ラッシュ「あり得るからこうやって戦う事になっている」
カシム「何をやってるんだ……その方向はマズいぞラッシュ!」
バクア「ん?皇子は何をするつもりだ?」
ラッシュ「フ……特訓の成果を見せてやるよ」
ラッシュは空中で綺麗に三回転をすると、火球の礫の上を蹴った。そして、器用に礫を蹴り上がり、ついに
ラッシュ「秘技!真・疾風剣舞!!」
目にも留まらぬ剣撃が
カシム「何が起こったんだ……?速すぎて見えなかった……」
バクア「へえ、やるじゃん。だけど、俺のコレクションはこれだけじゃないぜ!」
バクアは再び指笛を吹いた。すると、ズシンズシンと地鳴りの様な足音が近づいて来る。そして、民家の屋根から二本の角が生えた鬼が顔を出した。鬼は黄色い目玉をギョロギョロさせ獲物を探している。
ラッシュ「次から次へと飽きさせないな」
バクア「複数同時には出せないが、いくらでもコレクションはいるんだぜ。皇子も降参して帝国側に来たらどうだ?」
ラッシュ「断る、こんな国に興味は無い」
バクア「アッハハハ!なら、もう容赦しないぞ!やっちまえ」
鬼は自分と同じサイズの棍棒を持ち上げると、ラッシュに叩きつけた。しかし、動きがトロイ鬼の攻撃はラッシュには当たらない。だが、その攻撃力は凄まじく、棍棒が叩きつけられた地面は深く抉られていた。二人はその威力に唖然としていた。すると、少し離れた所で戦っていたトリーヴァ達が突然、静かになった。倒れているのは血の傭兵団の一人エース。どうやら勝ったのはトリーヴァのようだ。
トリーヴァ「こっちは終わった。私も加勢する」
ラッシュ「もしアンタが負けたらアイツは俺が倒すつもりだったのに」
カシム「頼もしい。やはり六勇者の名は伊達じゃないようだ」
トリーヴァ「この戦い、我々が勝利する」
三対二の状況。ラッシュ達はとても有利だった。しかし、バクアは相変わらずヘラヘラとふざけた態度をとっている。何か奥の手でもあるのか、それともただの馬鹿か。
バクア「アッハハハ!傭兵団弱ええええ!!」
カシム「お前もアイツみたいになりたくなかったら今すぐ降参しろ!」
トリーヴァ「カシム、落ち着くんだ。降参するような相手ではないだろ?」
トリーヴァはカシムの肩に手を置くと、冷静に怒りを
バクア「降参?何で?この戦い俺達の勝ち確なんだぜ。降参する必要がどこにある」
ラッシュ「何寝ぼけた事言ってんだ。お前の味方は動きの遅い鬼一匹だけ。パワーはあるが、多分一対一でも勝てるぞ」
バクア「アッハハハ!俺が勝ちを確信しているのはそいつがいるからじゃねえよ」
カシム「どう言う事だ?」
高笑いをするバクアを問い詰める二人。そして、ついに我慢の限界がきたカシムはバクアに詰め寄ろうと一歩踏み出した。その瞬間、カシムは木っ端微塵に砕け散った。カシムの立っていた周辺には、一瞬にして血溜まりが出来ていた。ラッシュは理解出来なかった。何が起きたのかを。
バクア「アッハハハ!反乱軍のリーダーさんも呆気ないなあ!」
ラッシュ「何だ……何が起こったんだ!?」
バクア「そろそろ茶番は終わりにしようぜー、血の傭兵団のお二人さん」
ラッシュ「二人……だと?」
ラッシュの前にはバクアとやられたはずのエースが立っていた。そして、トリーヴァもその二人に並んでいる。
トリーヴァ「クックックッ……言っただろ?我々が勝利すると」
ラッシュ「トリーヴァさん……これはどう言う事なんだ?アンタ裏切ったのか」
トリーヴァ「ああ、その通りだ」
ラッシュ「何者なんだよ、さっぱり話が見えてこないぞ」
エース「つまり、トリーヴァは我ら血の傭兵団の団長だったと言う事だ」
トリーヴァ「そう言う事だ………団員からはジョーカーと呼ばれている」
ジョーカー。血の傭兵団の団長。これがトリーヴァの本性だった。カシムは瞬殺され、突然の大ピンチを迎えたラッシュ。正直、六勇者として活躍していたトリーヴァが敵に回ったのは痛い。痛すぎる。ラッシュに勝ち目はなかった。果敢に飛びかかるも、一撃で気絶するのだった。
バクア「アッハハハ!皇子は流石に殺すわけにはいかないってか?ジョーカー」
エース「お前ごときが気安く団長の名を呼ぶな……死ぬぞ?」
バクア「なんだと?お前ら将軍舐めすぎじゃね」
エース「ジョーカーどうする?そろそろ計画を開始してもいいと思うが……」
ジョーカー「そうだな……他の連中に合図を頼む。これより、初代皇帝バルデューク暗殺計画を開始する」
バクア「暗殺だ?笑えねーよ」
ジョーカー「消えろ…雑魚に用はない」
ジョーカーはバクアの頭を鷲掴みにすると、カシム同様木っ端微塵に吹き飛ばした。それと同時にバクアの呼び出した鬼も砕け散った。彼の使っている魔法は、触れたものをなんでも破壊する魔法。その危険さ故に、扱えた者は過去に一人しかいなかった。いや、一人と言うのは語弊があるかもしれない。
かつて人間達の天敵として立ちはだかったドラゴン。そのドラゴン達を治める竜の王ただ一人が扱えた破壊魔法。しかし、初代皇帝バルデュークによって倒された。もう破壊魔法を使う事の出来る者は存在しないはずだった。
ジョーカー「待っていろバルデューク……1000年前の戦いはまだ終わってはいない」
その頃、要塞内部へ侵入した皇帝討伐班は帝国兵達と戦っていた。すると、そこに魔王軍の兵士であるガーゴイル達が現れた。要塞は三つの勢力がぶつかり合い、混沌としている。激しい戦いの末、デスタ以外の仲間達は帝国兵やガーゴイル達に足止めを喰らっていた。そして、悲鳴や雄叫びが飛び交う中、デスタは皇帝の間を目指して走っていた。すると、沢山の人混みをかき分けて、帝国四将軍セレカがデスタの前に立ち塞がった。
セレカ「見つけたぞ……反乱軍。帝国に仇なす愚か者め。少数で攻めればバレないとでも思ったか」
デスタ「貴様は誰だ?」
セレカ「私は栄誉ある帝国四将軍が一人、セレカ・グリモーネである!!」
デスタ「将軍か……厄災王の力を試すには丁度いい相手だ」
セレカ「厄災王……何を言っている?」
デスタはセレカの問いには答えず、剣を引き抜いた。それを見たセレカも、白銀の剣を構える。強者同士の戦いは、一瞬の隙もない殺し合いだ。セレカから溢れ出る威圧感は、強者そのものだった。死闘は避けられない……
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