第65話 開戦
デスタ達は帝国軍と魔王軍が戦いを始めるのを、帝都の東にある見晴らしの良い丘の上から待っていた。
すると、北西の山脈の上空に見たこともないほど大きな雲が、何の前触れもなく現れた。そして、巨大雲の中から巨大なゲートが出現した。遠くからでも大きいと充分に確認できるサイズだ。
皆の視線がゲートに集まる。すると、ゲートの中から沢山のガーゴイル達が帝都目指して飛んで来る。
しかし、驚くのはまだ早かった。次にゲートから出て来たのは、空を飛ぶ要塞だった。左右に付いている立派な翼。その上に禍々しい城が建っている。魔王城は空飛ぶ空中城だったのだ。これでは地上からでは手が出せない。
皇帝討伐班
ラッシュ「何だ…あのデカさは……」
デスタ「恐らくあの中にゼニスがいる」
カシム「二人共、我々が倒すべきは皇帝ですよ」
デスタ「分かっている……(フェイン…ゼニスを倒すのは任せるぞ)」
カシムの作戦通り、帝国軍と魔王軍はぶつかった。激しい戦いが北と西の入り口で始まる。しかし、魔王軍の猛攻は止まらない。帝都を取り囲む様に魔物を指揮し、東と南の入り口からも攻め込んでいる。魔王軍は本拠地である魔王城ごと攻めて来たのだ。そして、作戦通り皇帝討伐班は帝都へと向かうのだった。
魔王討伐班
フェイン「ブレイブさん、どうします?ゼニスが空中にいるんじゃ手の出しようがないぜ」
ブレイブ「大丈夫、ゼニスはきっと降りてくるよ」
ミトラ「どうしてそう言い切れるの?」
ラオ「帝国の大将であるガルデュークはかなり強いからのう、魔王でもなければ太刀打ちできんと思うぞ」
リン「それでは我々も帝都へ向かいますか?」
ルプラス「うん!そうしようよ!」
ブレイブ「分かった、デスタ君達は東の入り口から向かってるみたいだから僕達は西側の入り口から入ろう」
魔王討伐班は、魔王が地上へ降りて来るまでの間、皇帝討伐班が少しでも楽を出来るように西側の入り口から援護に向かう事にした。
その頃、東の入り口で皇帝討伐班は足止めを喰らっていた。その理由はシンプル。血の傭兵団エースと帝国四将軍のバクアが、デスタ達皇帝討伐班を攻撃してきたからだ。しかも、帝国兵もかなりの数控えている。
バクア「お前達反乱軍の連中だな?雑魚のくせに頑張るなよー。皇帝に逆らったら命はないんだぞー」
カシム「黙れ……お前達帝国の圧政でどれだけの人が苦しんだと思っているんだ!」
バクア「さあ?二十人くらいか?」
エース「将軍とやら、少しは真面目にやれ。ここは戦場だぞ」
バクア「アッハハハ!君達真面目だねぇ。ま、なんにせよこの先は通さねえよー」
カシムは明らかにバクアのふざけた態度にムカついていた。そして、腰に差してあるサーベルを引き抜くと、バクアに飛びかかった。それを見たバクアは凄まじい高音の指笛を吹く。耳をつんざく様な音が辺りに飛び散る。すると、突然上空から
トリーヴァ「よーし、ここは僕も手を貸すよ。みんなは先に行っててよ」
ラッシュ「いや、俺も残るぜ。前にミドピラ闘技大会で会った、あのエースとか言う血の傭兵団とは一度戦ってみたかったんだ」
ラッシュ、カシム、トリーヴァの三人はエースとバクアと戦うためその場に残ると宣言した。全員で掛かれば勝てない事もないが、帝国が大勢の民の住むアンダーゲートに何かしでかさない保証はない。なるべく早く決着をつけたいところだった。デスタ達は三人を残して、帝都の奥に構える不落の要塞へ向かうのだった。
その頃、西の入り口では、東と同様にフェイン達も足止めを喰らっていた。東で待ち受けていたのは、血の傭兵団キングと帝国四将軍ラーダンだった。
キング「やはり私の予想通りだ。反乱軍はこのタイミングで仕掛けて来る。帝国軍と魔王軍の戦いよ混乱に乗じて漁夫の利を得るつもりなんでしょう?」
ラーダン「そう簡単に行くとは思わない事だね……ふふ」
槍使いのキングと魔法使いのラーダン。フェイン達はキングとは一度ギアノアで会っている。ので、油断できない相手と言うのは分かっていた。しかし、ラーダンについては完全に初見だ。包帯を体中に巻きつけ、ミイラのような格好をしている不気味な男だ。彼はリンを見つけると目の色が変わった。
ラーダン「ふふ……ターゲットは決まったよ。あの子にしよう、舐め甲斐がありそうだ」
キング「おや?浮気ですか?貴方はセレカさんを気に入ってると思ってたんですが」
ラーダン「セレカたん……セレカたん……うがあああああ!!!」
ラーダンは突如発狂すると、リンに向かって全力疾走し始めた。迫り来る変態にリンは反射的に逃げ出した。
リン「ひいいい!!なんなんですかこの人!怖いですよおおお」
ラーダン「セレカたんを舐めさせろおおおお!!」
ルプラス「ちょっと待ちなさい!わたしの助手に手を出しはさせないよ!」
ラーダン「ロリに興味は無えんだよッ!!引っ込んでろ貧乳!!」
ルプラス「カッチーン……キレていい?ねえキレていい?」
ラオ「まあ落ち着くのだルプラス。冷静さを失ってはいかんぞ」
ラオの説得も虚しく、ルプラスはリンとラーダンを追いかけて行った。残ったキングはやれやれと言った表情だ。
キング「あの二人の始末はあの人に任せるとして……私は誰のお相手をしましょうか。自信がなければ全員で掛かってきてもらっても構いませんよ」
フェイン「へっ!随分自信があるみたいだな。だが、全員相手にする必要はないぜ、俺が倒す」
ラオ「待て、此奴の自信は多分根拠があるんじゃろう。ここはわしが相手をする。お前達は先に行くのじゃ」
フェイン達はラオとキングを残して帝都の奥にある要塞へ向かった。要塞へ向かう途中沢山の兵士達と戦う事になったが、特訓したフェイン達の相手ではなかった。しかし、フェインやデスタ達が帝都へ侵入した事は、すぐに北と南の入り口にいる将軍達の耳に入った。レオニオルとセレカ。二人の将軍も要塞を目指すのだった。
ついにぶつかった三つの勢力。勝つのは魔王か帝国か。
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