ガルベルグ戦争 編

第64話 上陸!レスト大陸

戦争まで残り一週間。デスタ達はアルカランドを出ると、船でレスト大陸へ向かっていた。魔王と帝国、二つの強大な敵と戦うために。



フェイン「アイツらも俺達の船で行けばよかったのにな」


カナ「仕方ないでしょ、ライラ達は一応学生。先生達と行動しないと」



ライラやソハヤ、ブレイブは、学園の用意した船でレスト大陸に向かうとの事で、現地で合流する事になっていた。そして、戦争へ参加する冒険者達は、反帝国派の反乱軍へ加勢すると言う形になる。と言う事でまずは反乱軍の拠点となっている、アンダーゲートの街を目指す必要があった。



フェイン「船長、アンダーゲートってどんな所なんだ?」


キース「悪いな、俺も行った事がないんだ。ただ、聞いた話によると地下にあるらしいぜ」


ピノ「へぇ…地下の街か……」


ラッシュ「どうしたよ、あんまり乗り気じゃなそうだな?」


ピノ「だってジメジメしてそうじゃん」


キース「ジメジメしてるかどうかは知らんが、結構寒い所だぞあの辺は」



そんな話をしていると、レスト大陸に到着した。レスト大陸は北の大地。他の大陸と比べると肌寒い。遠くに見える山の頂上は、雪を被って白くなっている。生えている木や植物も、この地域特有の物ばかりだ。一行は新たな大陸へ上陸した興奮冷めやまぬまま、反乱軍待つアンダーゲートへ向かった。

二時間後、アンダーゲートに到着した。そして、一行はその光景に圧倒された。



ラッシュ「思っていた三倍は大きな入り口だな……」


デスタ「同感だ……」



街の入り口と呼ばれる洞窟は、城を縦に二つ並べても余裕で収納できるくらい大きかった。そして、洞窟と同様に大きな階段が地下へと続いている。階段を降りると、そこには街があった。しかし、その光景はまた異様なものだった。



フェイン「なんだこれ……谷か?」


ピノ「谷だ…」


カナ「アルテン渓谷を思い出すわね」



地下には二つの巨大な絶壁があった。そして、肝心の建物はと言うと、絶壁の中をくり抜いて出来ていた。さらに、二つの絶壁同士は、至る所に開いている穴から吊り橋が架けられ繋がっている。すると、一行に声を掛けてくる者がいた。



ミトラ「やあ、久しぶりだね」


ピノ「ミトラ!やっぱり来てたか」


ミトラ「勿論。この戦いは帝国と魔王を倒す戦いだよ。ダリオさんの仇は討つよ」


デスタ「クロウはどうした?お前達は一緒に行動していたのではないのか?」


ミトラ「今は他の六勇者さんと反乱軍のリーダーの所に行ってるよ」



ミトラの案内でデスタ達も反乱軍のリーダーの元へ向かうのだった。街は地下だと言うのに明るく、天井にかなりの数の照明が付けられていた。街の人口もそれなりにいるようで賑わっている。そして、かなりの数の冒険者を見かけた。皆、戦争で武功を挙げるためこの街に来ているのだろう。

しばらく歩いていると、一軒の石造りの屋敷に到着した。中に入ると、五人の六勇者が大きなテーブルを囲んで座っていた。

他にも見知った顔が何人かいる。ルプラスの助手のリン、花騎士の団長ローズ、フェインの船の船長キース、ルーバリエ学園の面々。皆それぞれデスタ達に声をかけてくる。これまでの旅で出会ったほとんどの人がこの場に揃っている。まるで同窓会だ。

すると、一人の若い男が部屋に入って来た。見たところまだ二十代前半くらいだろう。



若い男「皆さん、私は反乱軍のリーダーをやっているカシムと言う者です。まずお礼を言わせて下さい、ありがとうございます」


トリーヴァ「それで、早速ですが帝国や魔王と戦う計画の説明をお願いします」



カシムは軽く頷くと、巻物の様な大きな地図をテーブルいっぱいに広げた。地図には、帝国の本拠地、帝都周辺が記されていた。

帝都の北西にはダリオが魔王と戦った雪の積もる山脈。東はアンダーゲート。南は緑広がる大草原、その先には水平線が続く大海原があった。



カシム「皆さんに最初に言っておきたい事があります。我々が勝利する条件、それをちゃんと理解しておいて欲しいのです」


ローズ「勝利条件……皇帝と魔王を討つ事ですよね?」


カシム「ええ、その通り。この戦いは皇帝と魔王、両方を討つ必要があります」


マリア「あらぁ、それは大変ですね」


カシム「ですが真面目に二つとも相手をする必要はありません」


リン「と言いますと?」


カシム「帝国と魔王軍を戦わせるんです」



反乱軍の作戦とは、魔王軍に帝国を襲わせ両者を戦わせる事だった。そして、混乱に乗じて皇帝と魔王を討つ、と言うものだった。しかし、混乱に乗じると言っても大人数で行けばバレてしまう。そこで、皇帝討伐班と魔王討伐班に別れ、で叩く事になった。討伐班以外の人達は、アンダーゲートの防衛に回るというものだ。

そして、話し合いの結果、皇帝討伐班に選ばれたのは七人。


デスタ ラッシュ カナ ローズ カシム クロウ トリーヴァ


魔王討伐班に選ばれたのも同じく七人。


フェイン ピノ ブレイブ ミトラ リン ルプラス ラオ


そして、拠点防衛の重要戦力は四人。


ライラ ソハヤ キース マリア



それぞれ出撃の準備を始めるのだった。

その頃、帝都でも魔王軍の襲撃に備え、四将軍は東西南北の入り口で軍を構えるのだった。そして、ついに魔王軍はこの地に降り立った。その頃、帝都では皇帝がある人物と会話していた。



皇帝「こうして初代に力を貸してもらう事が出来れば、帝国に負けはない」



ガルベルグ帝国初代皇帝ガルデューク。彼は帝国の原点にして頂点。史上最悪の暴君である。その力は、かつて人の天敵であったドラゴンをも討ち倒すほどのものだった。ドラゴンが現在の人間界に存在していないのは、ガルデュークがドラゴンの王と一騎討ちをし、勝利したからである。歴代最強とも名高いガルデュークだったが、一人の英雄によって体を複数に分けられ封印されたのだった。その分けられたパーツは、ギガント・ギアのコアになったり、国の宝物庫に保管されていたりと世界中に散らばった。しかし、血の傭兵団の活躍により、見事復活してしまうのだった。



皇帝「初代なら魔王ごとき相手ではないでしょう?」


ガルデューク「お前は戦わんのか?」


皇帝「無論、そのつもりだ。戦闘は得意ではないのでね」


ガルデューク「そうか…戦わんのか……ならば死ね」



ガルデュークは大勢の部下が見守る中。無論、その場は大混乱だ。しかし、ガルデュークの怒号で静まり返る。



ガルデューク「弱者が人の上に立つなど言語道断。帝国が求めているのは強者きょうしゃだ!集え、勇敢なる戦士達よ!今こそ魔の者達を滅ぼすのだ!!」



帝国の四将軍達もガルデュークの圧倒的強者のオーラに声を出せなかった。しかし、帝国の指揮は今までにない高まりを見せたのだった。



レオニオル「これが初代のオーラ……凄まじいな」


ラーダン「うぅ……流石に鳥肌が立ったよ」


バクア「アッハハハ……マジでいかれてるな。最高じゃん!!」


セレカ「求めているのは強者……か。面白い、私は初代の考えに賛成だ」



現皇帝が殺され、初代皇帝ガルデュークが復活し、帝国のトップになった事は反乱軍の耳にもすぐに入った。帝国側の指揮が高まった事は、嬉しくない情報だった。



ラッシュ「(父上が…死んだだと……!?)」


フェイン「どうした?そんな暗い顔して。怖気付いたのか?」


ラッシュ「そう言えば話してなかったな、俺が帝国の皇子だって事」


フェイン「は?……お前それ本当に言ってるのか?」


ラッシュ「ああ…こんな時につまらない冗談なんて言う訳ないだろ」


フェイン「あー、その話が本当だったとして、皇子がなんでこんな所にいるんだよ?」


ラッシュ「簡単な話さ、父上のやり方に反対だったからだ。民を道具としか思ってなかったからな」


フェイン「そうか……ま、お前が皇子でも関係ねえや。お前は味方なんだろ?」


ラッシュ「ああ!今の帝国を潰して、もっといい国してやるさ。そのためにも、この戦い絶対に勝つぞ…」



フェインとラッシュは別々の班だった。お互いに助け合う事は出来ないが、生き残る事を固く誓うのだった………………………………

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