アルカランド 編
第60話 アルカランド
早朝、アルカランドに向けて出発した五人は、馬車で一時間、そして足場の悪い山道をかれこれ五時間はぶっ続けで歩いていた。流石に休憩を挟もうと言う話になり、川の近くで少し早めの昼食を取る事にした。ラッシュとカナは火起こし兼、荷物番。他三人は食料を確保しに再び山に入った。
カナ「あー疲れた!脚パンパンになっちゃったよ」
ラッシュ「この山を抜けたらアルカランドは見えて来る。後少しだぞ」
火起こしと言っても、魔法を使えば大した事はなく、薪を集めるぐらいしか仕事がなかった。ものの数分で仕事を終わらせた二人は、ゆっくりと食料班を待っていた。ラッシュは切り株の上に座りながら、地図を広げてコーヒーを飲み。カナは疲れた脚をほぐしている。山は驚くほど静かで、黙っていると川の流れる音しか聞こえない。すると、食料を集めに行っていたデスタ達三人が戻って来た。しかし、三人は食べ物らしき物を持っていなかった。
ラッシュ「あれ?ピノもついてたのに、何も捕れなかったのか?」
ピノ「違うよ、この山変なんだ」
カナ「何が変なの?」
デスタ「動物やモンスター達を全く見かけなかった……」
カナ「えー!そんな事あるの?でも、確かに静かすぎるわね」
五人は不思議に思いながらも、昼食は街に着いてから取る事にした。そして、再び山道を歩き始めた。しばらく歩いていると、人気の多い街道に出た。そして、街道と並行するように大きな川が流れていた。山からずっと続いているのだろう。そこから少し歩くと、立派な門が見えて来た。ようやくアルカランドに到着した五人は、早速アルマに会うため学園に向かいたかったが、一つ意見が出た。
ピノ「俺もうダメだ、腹減ったから何か食べに行っていいか?」
フェイン「俺はさっきから腹が痛くて……トイレ行っていいか?」
デスタ「仕方ない。一旦、自由行動にするか」
五人は二時間後にアルマがいるという冒険者養成学校の前に集まる約束をした。フェインはトイレを探しに、ピノは食べ物を探しに、それぞれ人混みの中へと消えて行った。ラッシュも武器屋で剣を新調したいと言い、フェイン達とは反対方向へ歩いて行く。
カナ「デスタはどうするの?」
デスタ「私も適当な所で食事を済ませたら、街を散策してみるかな…」
カナ「それなら一緒見て回らない?」
デスタ「別に構わないが……どこに行く?」
カナ「服でも見に行こうよ!」
デスタ「服か…気にした事なかったな……」
カナ「えー!いくら戦う事が多いって言っても、女の子でしょ!身だしなみには気を使わないと」
デスタ「そう言うものなのか……?」
デスタはカナに連れられて、服を見て回る事になった。正直面倒くさかったが、断るのも可哀想なので付き合ってやる事にした。服屋に入ると、様々な種類の服が置いてある。どれも魔界では見ない物ばかりだ。店内を見て回っていると、カナが服を試着して見せに来た。
カナ「どう?似合ってる?」
デスタ「ああ…良いんじゃないか?」
カナ「そうかな?……そうだ!デスタも何か着てみたら?」
デスタ「いや、遠慮しておく」
カナ「えー!デスタもちゃんとお洒落したら可愛いと思うんだけどなぁ」
カナが思った以上にしつこく勧めてきたので、仕方なく服を試着してみる事にした。服のチョイスは全てカナに頼み、早速、試着室に入る。中には、ピンクが多めのフリフリのスカートが置いてあった。正直、着るのに抵抗はあったが、さっさと買い物を終わらせるためと自分に言い聞かせる。試着室を出ると、カナが目を輝かせてデスタに詰め寄る。そして、カナと一緒に待っていたバルも飛び跳ねて喜びを表している。
カナ「可愛い!似合ってるよ!デスタって普段はクールで勇敢なイメージだけど、こうしてみると可愛い見た目してるよね」
デスタ「そ…そうか……なんだか恥ずかしいな……もう脱いでいいか?」
カナ「えー!すごく似合ってるし買ってこうよ!私も買ったんだからさ」
デスタ「(仕方ない、服を買ってさっさと買い物を終わらせるか)」
カナの強い押しもあり、デスタはしぶしぶスカートといくつか服を買った。そして、早々と店を出た。すると、店の前に一台の馬車が停まっている。そして、中から黒いドレスを着た少女が出てきた。見たところ自分達と同じくらいの年頃だろう。茶色の髪に、緑色の目をしている。すると、少女は付き人達と一緒に、こちらへ歩いて来た。二人が少女を見ているのに気づいたのだろうか。
少女「貴方達も今夜のルーバリエ学園創立300周年記念パーティーに参加するのかしら?」
カナ「記念パーティー?」
少女「あら?違いましたか、これは失礼。でもよかったわ、貴方達みたいな薄汚い者達が神聖なる学園に足を踏み入れなくて」
少女は完全に二人を見下している。カナは突然の出来事に、開いた口も塞がらない様子だ。しかし、すぐに頭にきたのか文句を言い出した。
カナ「ちょっと!いきなり失礼じゃないかしら?」
少女「はい?わたくしは事実を言っただけですが?」
カナ「イラっときた。デスタ、止めないでよ」
カナは少女に詰め寄ろうとしたが、少女の付き人達が集まり、それを阻止する。
デスタ「カナ、そんな雑魚は放って置け」
少女「ちょっとお待ちなさい、そこの女」
デスタ「何だ?私か?」
少女「そうよ。貴方今、わたくしの事を雑魚と言いましたね?」
デスタ「それがどうかしたか?」
少女「それは聞き捨てなりませんわね。わたくしはルーバリエ学園三年、ライラ・ストバルですのよ」
ライラと名乗った少女は自信たっぷりに立っている。
デスタ「ルーバリエ学園……冒険者を養成している学園の事か……」
ライラ「お分かりいただけたかしら?貴方が誰に向かって雑魚と仰ったのかを」
デスタ「知らん、貴様の名など一度も聞いた事がない」
ライラ「なんですって!?わたくしをご存じない……」
ライラはショックを受けたのか、固まっている。しかし、首を横に振ると、デスタに招待状のような者を渡した。
デスタ「これはなんだ?」
ライラ「今夜のパーティーの招待状です。そこで出し物として武芸試合があるのですが、それに出てください」
カナ「ちょっといきなり何言い出すの」
ライラ「わたくしもその武芸試合に出ます。そこでわたくしが雑魚かどうか見てもらいましょう。勿論、受けてくれますよね?」
デスタ「面白い、相手をしてやる」
こうして、デスタはルーバリエ学園で行われる武芸試合でライラと戦う約束をした。さて、記念パーティーには何を着て行こうか…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます