第35話 ピノの秘策
ピノ「頭が…無い……!?」
首無しメイドはテーブルに刺さった槍を引き抜くと、セクシーな脚を挙げ挑発するかの様に槍を構える。ピノはすかさず高速で三本の矢を放った。しかし、矢はメイドの体をすり抜けて背後の柱に刺さる。
「フフフ…外れですね、私には当たりませんよ」
どこからともなく女の声が聞こえてくる。ピノは辺りを見渡すがそれらしき人は居ない。
ピノ「誰だ!?……まさか…喋っているのはお前か…?」
首無しメイドは構えを解いて手の平を見せる。メイドの手には人間の口が付いており、ペラペラと舌を出している。
ピノ「そんな所に口が……って今はそんな事はどうでもいい!セラフィーをどこにやった?」
しかし、メイドはピノの問いには答えなかった。
ピノ「悪いけど、力ずくでも教えてもらうぞ」
メイド「どこからでもどうぞ。私に勝てたらセラフィー様の居場所を教えますわ……」
メイドは軽い身のこなしで、槍を頭や心臓と言った急所へ的確に攻撃する。ピノは何とか攻撃を避けながら矢を放つが、放たれた矢は全てメイドの体を透けていった。
ピノ「くそぉ、どうすりゃ当たるんだよ…」
メイド「死は近いようですね。そろそろ疲れてきたのでは?」
ピノ「何言ってんだ!まだまだ勝負はこれからだ」
とは言ったものの、ピノの体力は限界に近づいていた。しかし、メイドの攻撃は手を緩めるどころか、自慢の美脚を使った鋭い蹴りも加わり、更にその激しさを増していた。
ピノ「(マズいぞ…攻撃が当たらないんじゃどうしようもない。仕方ない、姉御の所まで逃げよっと)」
ピノはゆっくりと後ずさりをすると、逃げるタイミングを計る。すると、足に何かがぶつかった。見ると、さっきメイドが持っていた箱だった。
ピノ「ん?この箱は……」
メイド「待って!その箱には触らないで!」
メイドは慌てた様子で槍を突くが、ピノは素早く箱を抱えると後方に飛んで距離を取った。
ピノ「その反応……この箱、何かあるな?」
箱を開けると中には白い布に包まれた物が入っている。布を外すとそこには若い女の生首があった。
ピノ「く…首……まさか、お前のか?」
メイド「ッ!…違う、私のじゃないわ」
ピノが試しに箱に入っている生首の頬を引っ張ると、メイドは痛がる。どうやら生首とメイドは繋がっているようだ。
ピノ「フッフッフッ、これでお前を倒せる!」
メイド「ま…待った!降参よ!」
メイドは槍を地面に置き、両手を挙げた。ピノは矢を生首に突きつけメイドに近づくと、地面に置いてある槍を手の届かない所へ蹴った。その瞬間、ピノの顔に強烈なハイキックが打ち込まれた。蹴りをもろに受け、壁に叩きつけられるピノを横目に、箱を回収するメイド。
メイド「危なかった……」
メイドは箱の中から、慎重に女の生首を拾い自分の首に着けた。ピノは床に這いつくばりながらその様子を眺めていた。
メイド「残念でしたね……これで、あなたの勝つ可能性は消えましたよ」
ピノ「諦めるもんか!これでも喰らえ!」
ピノは服の埃を払いながら立ち上がると、先端に爆薬の付いた矢を取り出し、メイドの足元に放った。だが、やはりメイドは避けていて攻撃が通っていない。そして、槍を拾うと、立ち尽くしているピノを押し倒し、動けない様に長い脚で踏みつけた。そして、首に槍を突きつけるとニッコリと笑った。
メイド「あのまま私の首を矢で刺していれば勝っていたのに、惜しかったね?」
ピノ「フフ、惜しかった?……なに勝った気でいるんだ?」
メイド「どう言う事ですか?」
ピノ「俺には秘策があるぞ」
メイド「嘘ですね、そんな事言って助けてもらえるとでも?」
首に槍を突きつけられた状態だと言うのに余裕があるピノを見て、メイドは少し不安になったが、槍を一気にピノの首に突き刺した。
メイド「フフ、私の勝ちね」
ピノは呆気なく死んだ。だが、メイドは死体を見て違和感を覚えた。よく見ると、死体から血が流れていないのだ。死体を調べるため、死体に顔を近づける。その瞬間、突然視界が歪み、頭に激痛が走る。振り向くとそこには弓を構えたピノが立っていた。
メイド「な…なんで……生き…て…」
メイドの頭には、ピノが放った矢がしっかりと突き刺さっていた。ピノはすかさず追撃の矢を放ち、メイドの頭をもう一度貫いた。メイドは断末魔をあげる間も無く生き絶えた。
ピノ「分身…俺の秘策だ!この前ギアノア図書館で、姉御に勧められて読んだ魔法書に書いてあったのを練習しておいて良かった。姉御ありがとう!」
ピノはメイドからセラフィーの居る場所を訊くつもりだったが、それも出来なくなったので、大人しく探索を再開するのであった……
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