✿外伝~懐古録(前編)~

~序~

「あれれー? 菖蒲さん、何見てるのー??」


 お絵かきに夢中になっていたお雪は、首を子リスのように傾げると菖蒲の隣にちょこんと座った。

 菖蒲は微笑みながは自分が今見ていた物をお雪にも見せる。


「ほれ、これじゃよ」

「あ!! アルバムだー♪ あはは、真司お兄ちゃんもいるー♪」


 その言葉に部屋の隅で本に夢中になっていた星がピクリと反応する。そして、お雪とは反対方向に座り、覗き込むようにアルバムを見始めた。


「……僕も……見る」

「ふふふっ」


 小さな二人に挟まれて微笑ましくなる菖蒲。

 そんな菖蒲の前に、お雪は腕を伸ばし一枚の写真を指さした。


「星ちゃん、見て見てー! 真司お兄ちゃんが尻餅ついてるー♪ あははは!」

「……ほんとだ」


 あまり表情を表に見せない星の口元が少し上がる。

 菖蒲もお雪が指す写真を見ると「あぁ、これかえ? これはのぉ」と言い、菖蒲は、懐かしむ表情でこの出来事を二人に語り出したのだった。

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