第29話 リアリティ問題
小説やドラマや映画、アニメなどが世に出ると、必ずリアリティについてケチをつける人が出てきます。
医療ドラマが始まると、現役の医者や元看護士などが、あれは違う、これは違うと指摘します。
刑事ドラマや弁護士ドラマが始まると、現役の法律家が、実際の弁護士はあんなことはしない、あんな裁判官はいないなどと指摘します。
歴史ドラマや歴史小説では、歴史家や研究者、歴史マニアなどが、事実と違う、年齢設定がおかしいなどと指摘します。
いったい、どこまでリアリティを求める必要があるのでしょうか?
そもそも、なぜ、架空の話にリアリティが必要なのでしょうか?
一つ目の理由は、法律や公衆道徳に反しないことです。明らかに違法な行為や、間違った医療行為を描写することは、場合によっては作品を観た人や読んだ人の人生を狂わせてしまうかもしれません。また、実在の人物や団体、センシティブな歴史問題にかかわる事柄に関しては、相手を傷つけたり炎上する可能性もあります。
二つ目の理由は、作品の面白さを高めるためです。あまりにも手抜きな描写をしてしまうと、視聴者や読者が作品世界に入り込めません。緻密な描写をすることで、いかにも本当らしくみせることができます。
しかしながら、視聴者や読者が求めるリアリティには大きな個人差があり、医療関係者だったら、医療モノのリアリティにはこだわるでしょうが、そうでない人には多少実際とは違っていても気にならないでしょう。同様に、法律家であれば、弁護士モノのリアリティが低いと気になるでしょうが、そうでない人には多少実際とは違っていても気にならないでしょう。
つまり、たいていの場合、ある特定の分野の専門家というのは全体のごく少数であり、その他大勢の人にとっては描かれた内容が本当かどうかわかりません。
よって、一つ目の「法律や公衆道徳に反しない」程度のリアリティは必要ですが、それ以上のリアリティは所詮は面白いかどうかの判断基準でしかなく、ある一定水準以上のリアリティがあれば、その分野の専門家は不満に思っても、たいていの人は満足し、仮に多少その筋の人からケチが付けられても実害はないと思います。
問題は一定水準をどの程度まで要求するかですが、普段の投稿作であれば、あまり気にする必要はないと個人的には思います。執筆のエネルギーを、調査に費やすよりも、面白いストーリーを考えることに費やした方が効率的です。完成してもイマイチだった場合、調査した時間が無駄になるからです。
しかし、公募用の作品(商用化を目指す作品)であれば、最低でも一冊ぐらいは参考文献を読んでおくべきかとも思いますので、すでに書いた作品を公募に出す際は、そのままではなく、多少は見直した方が良いと思います。応募しようと思うレベルの作品であれば、そこそこの面白さは自信があるということなので、調査をしても無駄にならず、リアリティが上がることで更にクオリティが高くなると思います。
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