第27話 短編の裏側にある世界

 短編でありながら、血肉の通った登場人物や、裏側に作りこまれた設定があるのだろうなと思わせる作品があります。


 例えば、こちらの作品は絶滅危惧種のアフリカドラゴンの出産というユニークなシーンを題材にしているのですが、ドラゴンを絶滅から守るドラゴンズキーパーたちが、他にも様々な幻獣たちを守っているのだろうという作品の広がりを感じさせます。


◇ドラコ=アフリカヌス( 作者 :ももも )

https://kakuyomu.jp/works/1177354054917529666



 また、こちらの作品は、『盗人たちの灯』とうマジックアイテムをめぐるホラーファンタジーなのですが、作品に出てくる登場人物はきっと他にも様々な事件に関わっているのだろう、この街には古くから不思議なことが起きているのだろうと読者に想像させる世界観が構築されています。


◇盗人たちの灯(作者:久元)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054893835146




 いったいこういう作品を書ける作者はどういう人なのだろうと思ってプロフィールを覗くと、これらの作品には共通して、『短編の元となる別の作品が存在している』ことがわかりました。


 つまり、単体の作品としては、文字数的には数千字から2万字程度ですが、その背景に何倍、もしくは何十倍もの設定が存在している。それらが、意図的か、それとも無意識なのかわかりませんが、作者が選択する言葉の中に紛れ込み、読者には実際に書かれた文字数以上の物語となって伝わってくる。


 映画で例えれば、撮影した映像は何十時間分もあるが、それを編集して2時間に収めたような、凝縮されていながらも広がりがある作品となっている。


 短編というと短時間で簡単に書けるというイメージがあり、実際にそういう軽い作品にも魅力があるわけですが、オリジナルの長編や世界観を構築し、それを元に執筆することで、登場人物に血肉が通い、確固たる世界観を持った作品が作れるのだなと、とても勉強になりました。


 KACのような企画で、このような書き方をするのは非現実的だと思いますが、それなりのコンテストに通るような短編を書くためには、その前に一本の長編を書くぐらいのことをしないと、きっと通らないのだろうなと思います。なかなか道は険しいです。


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