第23話 こんな『〇〇警察』は嫌だ!

 昨今、自粛警察やマスク警察が出没していますが、エンタメ界にも『○○警察』はたくさんいます。


 『○○警察』のはしりと言えば、『弓道警察』でしょうか。弓道経験者による、弓の持ち方や立ち方などへのクレームです。まぁ、ここら辺は指摘していた方も遊びでやってたノリもあるかと思います。


 『○○警察』という言葉がメジャーとなるきっかけとなったのは、『彼方のアストラ』のアマゾンサイトでのバッシングレビューです。ひたすら作品をディスるレビューに怒ったファンが、こういう『SF警察』がいるからSFを書く作家が減ってSFが凋落したのだという(これはこれで論理の飛躍だと思いますが)、ネット上で『SF警察』を巡る(低レベル)論争が起きて、最後に、作者が大人のコメントを出して収束しています。


 今では、『SF警察』や『ミステリー警察』など、いろいろな警察が跋扈していますが、ちょっと捻った警察としては、『じゃがいも警察』があります。


 皆様、じゃがいものルーツはご存知でしょうか? 南米原産で、大航海時代にヨーロッパに伝わりました。なので、似非えせ中世ヨーロッパを舞台にした似非えせファンタジーでじゃがいもを出すと、『じゃがいも警察』に突っ込まれます。


 なお、指輪物語の作者で、言語から神話、種族まで一から作ったトールキンでさえ、作中にじゃがいもを出しているので、リアリティをとるか、それとも、じゃがいもをとるかは、ファンタジー作家の悩みどころです。


 余談ですが、トマトやトウガラシも南米原産です。トマトと言えばイタリアというイメージがありますが、大航海時代以前のイタリアには、トマトソースもペペロンチーノもなかったのです。


 今、私が懸念しているのは『お米警察』です。昔の日本の食生活の研究が進んでおり、戦国時代から江戸時代の日本人は、なんと、お米を一人一日5合食べていたそうです! しかも一日2食だったので、どんぶり飯どころか、大食い選手権に出てくるような、うずたかく盛られたご飯を食べていたと思われます。


 もし、シリアスなシーンで、スカイツリー天丼並みの高さのご飯が運ばれてきたら、雰囲気台無しです。


 また、昔は米俵を5表担いだ女性もいたようです。

https://yaginuma.jp/blog/


 個人的には、本当かなぁ?、と思うのですが、こういう人を時代劇に登場させてしまうと、絵的にもストーリー的にも主人公を食ってしまうので(主人公より強そう)、『お米警察』が現れないことを切に願います。


 もう一つ、現れないで欲しいのが『歯並び警察』です。


 ロード・オブ・ザ・リングのピーター・ジャクソン監督が、第一次世界大戦に出征したニュージーランド兵士の古い記録映像を、最新のデジタル技術によって修復したドキュメンタリー映画「彼らは生きていた」を公開しました。

http://kareraha.com/


 フルカラーで蘇った映像は素晴らしいの一言ですが、予告映像で気になったのは、兵士たちの歯並びの悪さ。現代でも、貧富の差が如実にあらわれるのが歯並びや口内衛生と言われますが、歯科治療が抜歯ぐらいしかなかった時代では、歯並びが悪くなるのは必然でしょう。


 つまり、最近の真っ白いきれいな歯並びの美男美女揃いの俳優が演じるような人物は、当時はほとんどいなかったはずです。かといって、サメと違って新しい歯が生えてくることもありませんので、役作りのために歯を抜くことも非現実的、かつ、非人道的です。


 なので、『歯並び警察』もまた、現れないでほしいと切に願います。


 他にも、『外来語警察』とか、『オリジナリティ警察』、『句読点警察』とか、いろいろな警察が考えられますが、警察国家の行きつく先は独裁やファシズムであることを、警察官を目指す人たちには自覚していただきたいと思います。

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