第5話 文学はカレーの香りがする
文学はカレーの香りがする?
カレーは文学の香りがするの間違いじゃないの? タイトルミスってない?
と思うかもしれませんが、ミスってません。『文学はカレーの香りがする』で正しいのです。
それは、なぜか? それをこれから説明します。
カレーにはたくさんの種類があります。チキンカレー、ビーフカレー、シーフードカレー、グリーンカレー、等々。
それは、なぜか? 人によって好みが違うからです。
文学にはいろいろな種類があります。純文学、SF、ミステリー、詩、ファンタジー、転生モノ、ラブコメ、等々。
それは、なぜか? 人によって好みが違うからです。
ある人にとって好きなカレーが、他の人も好きだとは限りません。甘口が好きな人は、激辛のカレーは食べられないでしょう。逆に、激辛が好きな人は、甘口なんか美味しくない。シーフードが嫌いなら、シーフードカレーなんて食べられない。
ある人にとって好きな作品が、他の人も好きだとは限りません。ハッピーエンドじゃなきゃ嫌だという人もいれば、バッドエンドを好む人もいる。純文学を面白いと思う人もいれば、どこが面白いのかさっぱりわからない人もいる。
カレー好きが高じると、自分で作り出す人がいます。もちろん、最初はうまく作れないわけですが、だんだんうまくなると、自分で作ったカレーが一番美味しいと思うようになる人がいます。それは、人によって味覚が違うので、自分の味覚にマッチしたものを作っているからです。
文学好きが高じると、自分で書き出す人がいます。もちろん、最初はうまく書けないわけですが、だんだんうまくなると、自分で書いた作品が一番面白いと思うようになる人がいます。それは、人によって感性が違うので、自分の感性にマッチしたものを書いているからです。
自分でカレーを作る人はだんだん調子にのってきます。最初は自分のために作っていたのに、人に食べさせるようとします。『そこらへんの店より俺のカレーの方がうまいぜ』と。
自分で文学を書き出す人はだんだん調子にのってきます。最初は自分のために書いていたのに、フォロワーに読ませようとします。『そこらへんの作品より俺の作品の方が面白いぜ』と。
自作カレーを振る舞われた友人はこう言います。『美味い! 店、出せんじゃない』と。
自作の作品を読まされたフォロワーはこうコメントします。『面白い! これを評価しないなんて運営クソだな』と。
しかし、カレーを食べた友人は心の中ではこう思ってます。『誰が食べてもうまいカレーを作るのって難しいんだな。なんだかんだでプロは凄いんだな』と。
しかし、作品を読まされたフォロワーは心の中ではこう思ってます。『誰が読んでも面白い作品を書くのって難しいんだな。なんだかんだでプロは凄いんだな』と。
文学はカレーの香りがする。
カレーとおんなじで、ひとりひとり好みが違う。
カレーとおんなじで、つい自分で作りたくなる。
カレーとおんなじで、作ると人に食べさせたくなる。
カレーとおんなじで、美味しいって言われると嬉しくなる。
本当は、みんな、気を遣ってくれてるって、わかってる。
自分でも、名店のカレーのほうが美味しいって、わかってる。
でも、やっぱり、自分で作りたくなるんだ。
文学はカレーの香りがする。
自分で作ると美味しいよ。
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