山_3
とにかくテントから出る。
四神が何かしているのか、山の山頂付近が淡く光っているのが見えた。
「本当にどこにもいないのか?」
「うん…今カラカルと手分けして探してるんだけど……」
丁度カラカルもこちらに来た。
「カラカル!いた!?」
「ダメ、向こうにはいなかったわ。チーターや隊員さん達も見てないって」
「どうしよう!?どうしよう、キョウ!?」
サーバルが焦りや不安が混じったような声で言う。
「とにかく隊長に相談しよう。捜索チームを組んでくれるはずだ」
「わ、わかった」
隊長はキャンプの中央で、ルイスと山の様子を見ているようだった。
「隊長!!」
「ん?どうした?サーバル」
「セーバルが!セーバルがいなくなっちゃったの!」
「なに!?」
「キャンプのどこにもいないの!早く、早く見つけないと!」
「わかった、少し落ち着くんだ」
「う、うん…セーバルは、キャンプの外に行ったんだと思う」
「どうして…目的は分かるか?」
「わかんない…なんとなく山の方へ行ったような気がする。すごく嫌な予感がするの!隊長、探すのを手伝って!」
「…今はダメだ。正確な位置もわからない状態での深夜の捜索は危険すぎる。夜が明けたらすぐに捜索を開始しよう」
「そんなに待てないよ!すぐに探さなきゃ!」
「ダメだ!下手をすればセーバルを探すために、もっと多くの仲間を失うことになるかもしれないんだ。わかってくれ、サーバル。明るくなったら全員ですぐに探しに行く。それでいいな?」
「でも…」
「とにかく、そういうことだ。間違っても勝手に捜索に出たりするなよ?これは命令だ」
サーバルは泣き出しそうな声で食い下がったが、隊長の判断は正しい。
降り注ぐセルリウムから新たなセルリアンが発生している可能性もある中で動き回るのは危険だ。
「サーバル、隊長の言うことを聞きましょう。セーバルならきっと大丈夫よ」
「………」
サーバルはカラカルに説得され、テントの方へ戻った。
「セーバル…」
隊長は握りこぶしを震わせていた。
オレは一旦テントへ戻り、最低限の装備を整えた。
ライフルとピストル、ポケットに入るだけの弾薬、手榴弾。
目立つ上に重いボディーアーマーはなし。
テントを出て、山側の物陰に行く。
案の定、サーバルがこそこそとキャンプの外へ向かっていくのが見えた。
「サーバル」
小声でサーバルを呼ぶ。
「みゃ!?キョウ?」
「静かに。一人で行くつもりか?」
「キョウ、止めても無駄だよ!」
「止めないさ。それより、セーバルの居場所は分かるのか?」
「たぶん山頂に向かってる…と思う。なんとなくわかるの。ワタシにもなんでかわかんないし、信じられないかもしれないけど…」
「信じるよ。セーバルと一番長く一緒にいたのはサーバルだろ?」
「キョウ…!」
「一緒に探そう。ついてきてくれ。見つからないようにな」
「わかった」
見つからないように、こそこそと停車中のハンヴィーに近づく。
「どうするの?」
「アレを借りる。勝手にな」
「いいの?」
「良くはない。最悪、軍法会議ものってやつだな」
「ぐんぽー?」
「あとで滅茶苦茶怒られるってことだ。まあ気にするな」
命令不服従の上に軍用車両の強奪。懲戒免職ものの重罪だな。
しかし、取返しのつかない事態になるよりはマシだ。
サーバルの様子を見る限り、今すぐ動かなければきっとそうなってしまう。そんな気がするのだ。
オレもセーバルを失いたくないし、何よりサーバルにセーバルを失わせたくない。
コヨミを失った時のような思いをさせる訳にはいかない。
「隊長がいるな…少し待つぞ」
「うん」
何ともタイミングが悪いことに、隊長がハンヴィーの傍でブラボーチームの隊長と話し始めてしまった。
しかしそこにルイスが現れ、隊長を呼んで離れていった。ラッキーだ。
「よし、今だ。サーバルは助手席に乗れ。静かにな」
「オッケー」
素早くハンヴィーに近づき、音を立てないように乗り込む。
ハンドルには小さなメモが張り付けられていた。
『燃料もマシンガンの弾も満タン、ばっちり整備しておいたぜ。さっさとセーバル見つけて戻って来いよな!』
「ルイス…」
すっかり見透かされていたか…
さっきのも偶然ではなく、ルイスが手を貸してくれたのだった。
「サーバル、行くぞ!」
「うん!」
エンジンをかけ、アクセルを踏み込む。
「おい!待て!」
サイドミラーには慌てる隊長2人と、サムズアップするルイスの姿が写った。
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