山_2

 被害状況の確認も終わり、山への進行を再開する。

幸い被害はほとんどなく、むしろ全速力で走行したため予定より早く進んでいた。

山岳チームの活躍で、セルリアンもほとんどいない。

麓を越え、緩やかな斜面を蛇行して登り始める。

砂利道にゴロゴロとした岩などが見え始め、地面の所々にある小さなクレーターのような跡が、激しい戦闘があったことを匂わせていた。


<<もうすぐ山の3合目だ。バスはここまでだな>>

「うむ。皆、ここまでご苦労であったぞ!後は我ら守護けものに任せるがよい!」

「我々は麓で山へ向かうセルリアンを食い止めれば良いのだな?」

「うむ。奴らは神出鬼没、山の方からもセルリアンが現れる可能性があるからの、後ろもしっかり見るのじゃぞ?」

「了解した」


 スザクがバスから降り、山へ向かってふわりと飛ぶ。

ひとまず任務の大目標は達成いったところだ。あとは四神がフィルターを貼り直し、無事に帰るだけ。


「もうすぐ日が傾いてくる。麓まで移動しよう」

<<了解>>


 バスを平地まで移動させ、キャンプを張る。

チームから交代で見張りを立て、休憩をすることにした。


 最初の見張りはオレだ。サーバル達と一緒に、周囲を警戒する。

もうすっかり暗くなり、月明かりも黒い粒子が遮っているため、ヘルメットの暗視機能を使わないとよく見えない。


「あっ!あそこにいるよ!ちっちゃいやつ!」

「わかった。よく見つけたな」

「夜行性だからね!……ふみゃーあ…」

「あくびしながら言ったら説得力ゼロよ」

「だって、今日はいっぱい頑張ったんだもん…」

「そうだな。もう少しで交代の時間だ。あとちょっとだけ頑張ろうな」

「ふぁーい」


 ぐきゅうううーというお腹の音。


「サーバル、あくびしたりお腹鳴らしたり、緊張感が足りないわよ?」

「えへへ、ごめん。セーバル、ジャパまん持ってたりしない?」


「…セーバル?」

「ん?なに?」

「いや、ジャパまん…もしかして寝てた?」

「寝てないよ?」

「なんかセーバル、ボーっとしてない?ちょっとおでこ出しなさい」

「ん…」

「うーん、熱はない…のかしら?まあ熱くはないわね。調子悪かったら我慢しないで言いなさいよ?」

「うん、大丈夫」

「セーバルも疲れてるんじゃない?交代したら寝よ?」

「うん」


 そうして少し経つと、リョウとアリサ、バリーとアードウルフがやってきた。


「みんな、お疲れ様。交代の時間よ」

「お腹空いてないですか?差し入れのジャパまんです」

「やったー!」

「良かったわね、お腹鳴らすほど食べたがってたものね」

「ちょっとカラカル!?」

「ははは、サーバルらしいな」

「サーバルちゃん、テントに寝袋は運んであるから、ゆっくり休んでね」

「ありがとう!もうくたくただよー…」

「じゃあ、後は頼むぞ。小さいのがちらほら出てきただけだったから、まあ大丈夫だと思うが。とにかく暗くて視認しにくい。気を付けてくれ」

「了解!」


 テントに戻り、すぐに横になる。オレも結構疲れたな。

目を閉じると、すぐに眠りの中に吸い込まれてしまった。




「キョウ!キョウ!大変なの!キョウ!」


 不意にオレを呼ぶ声に起こされる。サーバルか?焦っているようだが…


「どうした?何かあったのか?」

「セーバルが…セーバルがいないの!」

「なんだって!?」


 サーバルの言葉に悪寒が走る。

セーバルの様子がおかしいとは思っていた。嫌な予感がする。

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