山_4

 ハンヴィーのライトを頼りに、山への道を走る。


「キョウ!セルリアンがいっぱいいるよ!」

「ああ、わかってる。しっかり掴まってろよ?」


 ハンドリングで大きめのセルリアンは躱し、小型のセルリアンはそのまま突っ込み粉砕する。


「すごいすごい!キョウ、運転も上手かったんだね!」

「ルイスほどじゃないがな。おっと、道がガタついてきた。舌を噛まないように口を閉じていた方が良いぞ」

「んむっ」


 山から戻って少し時間が経ったとはいえ、かなりの量のセルリアンに遭遇する。

新しく発生したのか、ジャングルなどで倒していなかったものが移動してきたのか…

徒歩で来ていたら、山に辿り着くことすらできないだろう。


「追ってきてるな…まあ、当然か」


 セルリアンの黒い体は夜の闇に紛れて見えないが、ぼんやりと光る石とハンターセルの不気味な目玉は見える。

サイドミラーにはその目玉がいくつか迫ってきている様子が写っていた。


「サーバル、レースゲームはやったことあるか?」


 サーバルはギュッと口を閉じたまま、コクコクと頷いた。


「よし、ちょっとハンドルを頼む。まっすぐ走らせるだけでいい」


 サーバルにハンドルを任せ、ピストルを持って窓から身を乗り出す。

1、2、3、4…車に追いつきそうなハンターセルは4体。

近い順に撃つ。やはり悪路を走行中の車両から無理な姿勢で撃つのは難しい。

10発を使い、何とか倒した。


「よし、もういいぞ。よくやった」


 サーバルは助手席に戻り、いい顔でサムズアップした。

山に近づくにつれ、セルリアンの数が減ってきていた。

山頂付近は神々しい光に包まれている。あれの影響なのか…?


「ここらが限界だな」


 前回バスを止めた広場に、ハンヴィーをUターンさせた状態で停める。


「サーバル、先に行け!」

「えっ、キョウは!?」

「オレはここで奴らを止める」


 ハンヴィーの屋根に登り、銃座に着く。

ライトに照らされ、こちらに向かうセルリアンの大群が姿を現した。


「大丈夫なの!?」

「ああ、このマシンガンがある。いいか、なるべくセルリアンは避けて進むんだぞ?セーバルを見つけたら、すぐに戻ってくるんだ」

「…わかった!待ってて、すぐセーバルを連れて戻ってくるからね!」

「ああ、任せたぞ」


 サーバルは山頂に向かって駆けだした。

その後ろ姿を見送った後、マシンガンのグリップを握り、セルリアンに照準を合わせる。


「ここから先には行かせねえぞ!」


 マシンガンが先頭のアカガウに似たセルリアンを砕く。

無駄撃ちをしないよう、慎重に狙い、バースト射撃で押し寄せるセルリアンの波を止める。

ここが正念場だ。ここで止めなければ、サーバルや、その先にいる四神が危ない。

雄叫びを上げて自信を鼓舞し、1人でセルリアンに立ち向かう。

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