巨大セルリアン撃破_3

 一旦休憩室へ戻ると、まだルイスのいびきがマスクのボイスチェンジャーから出力されていた。


「ルイス、2時間くらい経ったぞ。そろそろ起きた方がいいんじゃないか?」

<<ん…そんなに寝ちまったか。あー、いててて!マスクとゴーグルは外すべきだった!>>


 ルイスはマスクを一旦外し、顔をさすりながら起き上がる。


「大丈夫か?すごい跡がついてるぞ」

「ああ…マスクで隠れるから大丈夫だろ」

 

 そう言ってルイスはまたマスクを付ける。


「早くセルリアンの様子を見るのです」

<<オッケー、モニターの電源を入れてみよう>>


 博士と助手に急かされ、ルイスがモニターの電源を入れると、かなり遠くに映っていた巨大セルリアンが、大きく映るようになっていた。


<<カメラの方に移動してきたようだな>>

「やっぱり気味が悪い見た目だな…」


 カメラに近づいたせいで、黒いセルリアンの塊が流動的に蠢いている様子がよく見える。


「体内にある石が光って見えますね。アレさえ破壊してしまえば倒せるはずです」


 モニターを眺めていると、船内のスピーカーからザザッという音の後、アナウンスが流れる。


<全てのチームの撤退が完了しました。これより、無人爆撃機の発進準備を行います>


<<お、ようやくか。第2モニターはこれにしよう>>


 ルイスがモニターにスタンバイ中の爆撃機を写す。


「これを待っていたのです!」

「もっとよく見えるところはないのですか?」


 博士と助手がモニターの目の前に陣取り、爆撃機が写るカメラを切り替えていく。


「サーバル、走ると転ぶわよ!」


 アナウンスを聞いたのか、サーバル達もドタドタと集まってきた。


「だいじょーぶだいじょーぶ!……うみゃあ!?」

「おっと」


 床に転がっていた工具に躓いたサーバルを受け止める。


「もう、だから言ったじゃない…」

「キョウ、ナイス」

 

 カラカルがやれやれという顔をし、セーバルは親指を立てる。


「キョウ、助かったよ!」

「ケガしなくて良かったよ。まだ準備中だから、慌てなくても大丈夫そうだぞ」


 皆でモニターの前に座り、爆撃機の様子を眺める。

隊長やバリー達も合流し、モニターの前はぎゅうぎゅうに詰まっていた。



<動作確認終了。カメラの接続、完了。60秒後に無人爆撃機が発進します。>


<<第3モニターも繋げるぞ>>

 ルイスがデバイスを操作し、3つ目のモニターに滑走路からの映像が出力される。


「これは…爆撃機のカメラの映像ですね?」

<<ああ、メインの指令室に送られた映像を各チームの揚陸艇に引っ張ってきているんだ。多少の遅延はあるが、良いものが見られると思うぞ>>


 モニターに映像が映ってすぐに、アナウンスがカウントダウンを始める。


<10…9…8…7…6…5…4…3…2…1…エンジン始動。無人爆撃機、発進します>


 第3モニターのカメラががくんと揺れ、第2モニターでは爆撃機がゆっくりと前進を始める。

爆撃機はどんどん加速していき、第3モニターには青い空が映った。


「「と、飛んだーっ!!」」

 

 サーバルとセーバルが歓声を上げる。

爆撃機が旋回し、カメラに島が写った。


「あの海に浮いてるの、もしかしてこの船じゃない?」

<<正解。第2モニターをこの船のカメラに変えるぞ>>


 滑走路しか映らなくなった第2モニターが船に取り付けられたカメラに切り替わる。丁度爆撃機が通り過ぎるところが見られた。


「おおお!かっこいい!」


 そして島のカメラの映像が映る第1モニターに、小さな黒い点が現れた。

第3モニターにも巨大セルリアンが写る。


<目標を確認。ウェポンベイ解放。ターゲット、ロックオン!ミサイル発射!>


 爆撃機から切り離されたミサイルが、巨大セルリアンに向かって一直線に突き進む。

そしてセルリアンの内部でぼんやり光る石へ正確に突き刺さり、炸裂。

ピカッと閃光が迸る。

衝撃波のせいか、第1モニターの映像が途切れてしまった。


 その直後、ドゴオオオンという爆発音が船内にまで響く。


「これは…凄まじい威力だ」

 

 バリーはおそらく想像を遥かに超えたであろうミサイルの威力に目を丸くしていた。


「倒せたんですよね…?」

 

 アードウルフは不安な様子で真っ暗になったモニターを見つめる。


 セルリアンの付近のカメラが故障したため、一度通り過ぎた爆撃機が旋回し、爆撃機のカメラが先ほど巨大セルリアンがいた場所を捉える。


<巨大セルリアンの消滅を確認。我々の勝利です>


 アナウンスの宣言通り、モニターには木が円形になぎ倒された場所に、セルリアンの石をパッカーンと砕いたときに出てくる、小さなサンドスターの結晶がキラキラと光る光景だけが映し出されていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る