ジャングルエリア_7

「さて、そろそろ博士がワクチンを完成させたはずです。さっさと行くですよ」


 助手に手をぐいぐいと引っ張られていくと、博士が机に試験管を並べていた。


「さあ、完成したですよ。感染した3人はこれを、その他はこっちを飲むのです」


 セーバル達がそれぞれ試験管を手に取り、グイッと飲み干す。


「おおお…」

「これは…」

「「「マッズイ!!」」」


 セーバル達のしっぽがブワッと太くなり、『苦虫を噛み潰したような顔』の模範解答のような表情で叫ぶ。


「セーバル!治ったんだね!よかったー」

「うん…それより何か飲み物ちょうだい…」

<<ほれ、スポーツドリンクだ。ジャパまんもあるぞ>>


 3人はルイスから渡されたスポーツドリンクをごくごくと飲み、ジャパまんにかぶりつく。


「姉さん、大丈夫?」

「ああ、だいぶマシになった。ルイス、ありがとう。オレはブラックジャガー。よろしく頼む」

「我はホワイトタイガーだ。共に戦おう」

「みんな治ってよかったね!めでたしめでたし!」

「何を言っているのです。サーバル達も早く飲むのです」

「うっ…」

「先にあんなの見せられたら、ね」

「私もセーバルさんたちと同時に飲んでおけばよかったです…」

「全く、バリーを見習うのですよ。もう飲み終わっているのです」

「セルリアンを倒すためなら喜んで飲むさ。というか、全然マズくなかったぞ?」

「うーん、バリーが言ってもあんまり説得力ないなあ…」

「仕方ないですね。助手、プランBです」

「よしきたです」


 そう言うと、ミミちゃん助手が素早くサーバルの背後に回り込み、羽交い締めにして浮き上がる。


「えええ!?まさかの実力行使!?やだあああ!!」

「じっとするのです!」

「うわあああん!博士の鬼!助手の悪魔ぁーっ!誰か助けてえええ!!」

「もう遅いです。つべこべ言わずに飲みやがれ、です」

 

 博士がサーバルの口に試験管を押し込んだ。


「もがあああ!苦あああ…い?あれ?全然苦くない?むしろ程よく甘くてさっぱり?」


 サーバルがきょとんとした顔で降りてくる。


「治療薬とは成分が違うのです。そもそも我々も飲むのですから、飲みやすく作りました」

「そういう訳なので、お前たちも安心して飲むのですよ」


 2人は相変わらずの無表情でワクチンを飲み干し、他のフレンズ達も続く。


「だから言ったではないか、サーバル」

「だってバリー、『どんなものでも食べる修行』とかしてそうだし」

「無論だ。どんなものとまでは言わないが、自然の食べ物で生き延びる修行はしているぞ」

「むしろバリーがしてない修行はあるの…?」


「ハイ、おしゃべりは一旦おしまい!」


 トラがパンパンと手を叩き、注目させる。


「博士、これでもう安心してセルリアンと戦えるのよね?」

「当然です。存分に腕を振るうと良いのです」

「じゃあこれからゾナを呼び戻して、追ってくるセルリアンと戦う。隊長、それでいい?」

「うむ、問題ない。だが、この辺りで戦うには視界が悪いし、少し狭いな」

「なら、この先にちょっとした広場があるわ。そこでゾナと合流しましょう」

「うむ。では総員、バスに乗ってくれ。ルイス、3分後に出発だ。行けるな?」

<<了解!>>

「それと今回は多数の小型セルリアンとの戦闘が予想される。キョウ、お前のライフルでは相性が悪いだろう。ピストルの使用も想定して準備しておけ」

「つまりはアレをやれと?」

「そうだ。任せたぞ」

「了解」


 予備のピストル用マガジンをオオイヌから回収し、バスに乗り込む。


<<全員乗ったな?忘れ物はないか?>>

「大丈夫。ラッキービーストも連れてきたし、いつでもいけるよ」

<<了解。トラ、案内頼む>>

「わかった」


 トラが助手席に移り、バスが走り出す。

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