ジャングルエリア_6

 後ろを振り向くと、2人のフレンズがアイスを食べながらトラの話を聞いていた。


「コノハちゃん博士とミミちゃん助手じゃない!いつからいたの?全然気づかなかったわ」

「どうも。アフリカオオコノハズクのコノハちゃん博士です。天才です。カラカルが転げまわるサーバルを幸せそうに眺めてるあたりからいたですよ」

「ワシミミズクのミミちゃん助手です。天才博士の天才助手をやってます。ミライに頼まれて応援に来てやったですよ」


 博士と助手が無表情で挨拶し、肩掛け鞄を降ろす。


「ミライさんが言ってたのは博士と助手のことだったんだ。ワクチン、持ってきてくれたの?」

「持ってきてはいないのです。前のガオガオ病と同じとは限らないので、これから作ります」

「作る!?そう言えば前はギンギツネが作ったワクチンを使ったけど、博士たちもできるの?」

「ギンギツネにできることが天才である我々にできない訳がないのです。楽勝です」

「とはいえ、いくら天才と言えど無から作ることは不可能です。サンプルが必要なのです」

「ということなので、サーバル、ちょっくらその辺のセルリアンを倒してくるです。治してやるのでガオガオ病に罹っても大丈夫ですよ」

「え!?やだよっ!というかなんでワタシなの!?」

「面倒ですが説明してやるです。今この辺りのセルリアンはほとんどがゾナを追いかけているので、倒そうにも見つからないのです」

「確かに」

「そこで、その辺を超絶ドジっ子のサーバルに走らせます。数分でサーバルが隠れているセルリアンを踏むので、それを倒してサンプルを回収します。ね?簡単でしょう?」

「うう…ワタシ、そこまでドジだと思われてるの…カラカル、その『なるほど!さすが天才ね!』って顔はやめてほしいなっ」


「ええと、コノハちゃん博士?ちょっといいかしら」


 アリサが手を挙げる。


「サンプルなら、これは使えない?」

「ちょっと見せてみるのです」


 アリサが取り出した粘液入りの小瓶を博士と助手はまじまじと見た。


「これは…出来てしまいますね、博士」

「そうですね、助手。残念ながら『サーバルのドジっ子解明計画』は延期になってしまいますね」

「そんな計画、無期限延期でいいよっ」

「ともあれ、でかしたのです。これでワクチンと治療薬を作ってやるです」


 博士が作業を始め、アリサは手伝いに行った。


「ところで、キョウという隊員はどこにいるですか?」

「オレがそうだが」

「ちょっとこっちに来るですよ」


 手招きしているミミちゃん助手のところに行く。


「その武器を見せるのです」

「これか?わかった。少し待ってくれ」


 マガジンを外し、チャンバーの弾を抜いてからライフルを渡す。


「ふむふむ…やはりこれなら大丈夫そうですね」

「どういうことだ?」

「お前にはこれをプレゼントです」


 そう言うと、助手は鞄からマガジンを1つ取り出した。


「これはサンドスターをアレな感じでなんとなく適当にやってできた弾薬の試作品です。弾薬は危ないからと直接弄らせてはもらえなかったので、我々が言った通りに研究員が作ったものですが」

「その説明、かなり不安なんだが」

「問題ないです。たぶん。5発しかないので、ここぞという時と、我々がじっくり観察できる時に使うですよ」

「了解。でもどうして隊長ではなくオレなんだ?」

「隊長の武器だと5発では少なすぎなのです。あれではじっくり観察できないのですよ。それにサバンナで大型セルリアンにトドメを刺したのはお前だと聞きました。我々、割と期待しているのですよ。何ならジャングルエリアにも大型セルリアンがいないかなーとか思っているのです」

「縁起でもないことを…まあ、期待に応えられるように頑張るよ」


 マガジンを受け取り、ポーチにしまう。

これを使わざるを得ないような事態にならないと良いが…

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